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第三話 信じてもいいのかしら?
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「私、今あなた方を試しておりました」
ティアナの突然の告白に騎士達は同時に固まった。固い氷に強い衝撃でヒビが入ったみたいな顔をしている。
このような状況で腹の探り合いが起きるのは当然だ。
だがそれをわざわざこうして口にする人間は少ない。
それでもティアナは胸に片手を当てて一から十まで全てとはいかずとも出来得る限りのことを一気に打ち明けた。
「公爵様に嫁ぐにあたり、帝国の礼儀作法は少しではありますが調べさせていただきました。それでも敢えて逆らったのは騎士様達の反応を見たかったからです」
ツラツラと躊躇いなく語り出すティアナ。
騎士達はあまりの衝撃に声も出ない。
「ですがアルト様は私に誠実な対応をしてくださいました。誠実さには誠実さで応えねばなりません。
ですから心からの謝罪と………もし許していただけるのであれば、一つ質問させていただいでよろしいでしょうか?」
ティアナは再び頭を下げてからゆっくり目線を上げる。
丁寧な言葉と誠意を感じる素直な謝罪に騎士達は試された事実など些細なことにしか思えなかった。
敵対していた族の姫がここまで真っ直ぐ自分達に向き合ってくれるとは想像もしていなかったのだろう。
「一つなんて!百個でも千個でも質問してください!」
「カロンうるさいぞ」
「すいませんキーケ先輩!」
(カロンってば可愛いわね)
短い耳とブンブン揺れる尻尾が見える。
騎士らしくはないがティアナは型にハマらない子が好きなので一気にカロンを気に入った。
「あの、姫様。カロンは少し大袈裟ですが質問くらいいつでもしてくださって構いません。勿論謝罪も必要ありません。知らない者に探りを入れるのは当然のことですので」
「まあ。騎士様の広いお心に感謝申し上げます。では早速一つ質問を」
リューが後ろでどんな顔をしているか想像出来る。騎士達に同情していることだろう。
ティアナは楽しいことが好きだ。
そして楽しくない時は意地でも楽しい方へ持っていこうとする。その時に起こるとんでもない引力を持った強風は図らずも周囲を巻き込んでしまうのだ。
(ここから公爵領まではまだ長い。それなのに探り合いながらの旅なんて勿体ないわ。折角なら楽しい道中にしたいもの)
「ここから公爵家までの道中に限り、私はあなた方を信じてもよろしいのでしょうか?」
出会ってからこの数分の間で彼等は一体何度『予想外』に直面しただろう。
少なくとも三度、ティアナは彼等の驚いた表情を見た。
それでもまだ満足出来ない。
長い間敵対していた国から迎えに来た騎士がノコノコ嫁ぎに来た姫を軽視するなんてよくある話だ。
そんなありがちな物語はつまらない。
そんなありがちな物語しか紡げない人間に興味はない。
(貴方達は私を楽しませてくれる?)
「先程申し上げた通り、我々は公爵様の命でここに来ました」
アルトは再び地面に膝をついた。それに続いて三人も同じ姿勢を取る。
「『ティアナ姫を安全に公爵家までお連れしろ』と」
ウズ、
ティアナの胸が騒ぎ出す。
「私達四人、この命を賭けて姫様を公爵家までお連れいたします」
その一言を聞いた瞬間ティアナの瞳に星が落ちて来る。
「主!!」
リューの手が腕を掴むより先にティアナは動き出した。
「面白いわ!」
「え、あ、ちょ…」
ティアナは結局また地面に膝を付いてアルトに近づいた。その勢いといったら騎士もリューも反応できないほどで、アルトも急に目の前に現れたティアナの笑顔に大慌てだ。
「公爵様、なんて面白い人なの!だってそうでしょう?対立していた部族の姫に優秀な騎士を四人も派遣するなんて!その上安全にも配慮してくださったのよ!?」
「主落ち着いて。一回アルトさんから離れて。悪い癖出てます」
「これが落ち着いていられる!?だってリュー、こんなの想像してた?してなかったでしょ?」
「あーはいはいそうですね。びっくりですねー。楽しいですねー。
アルトさん、姫は放っておいてどうぞ後ろに下がってください」
「あ、は、はい!」
アルトはまるで野獣から距離を取るように後退り、他の三人はそんなアルトを守るように寄り添った。恐らくアルトのお尻は土だらけである。
「あ、ねぇ待って!もっと貴方達の主人のことを聞かせて!」
「主ストップ。ほんとにストップ。騎士さんたち怯えてます」
「えー、いいじゃない!
だって公爵様、きっととっても素敵な人よ!」
(こんなに楽しませてくれる人だもの。私の勘はよく当たる!)
ティアナはリューに向かって満面の笑みで言い切った。
その無邪気な様子はティアナの言葉が本心であることを騎士達に伝えるには十分で、四人はそんなティアナを見て同じことを思う。
「姫様!よく言ってくださいました!」
「カロン!教えてくれるのね!」
「はいいくらでも!俺公爵様を褒めてくれる人大好きです!」
「あの、私も。この中では公爵様と一番付き合いが長いので教えられることも多いと思います」
「まあアルトも!?それは心強いわ!」
「あの、自分も。協力できることならいくらでも」
「キーケ!ありがとう!勿論騎士として話せる範囲でいいからね!」
「ぼ、ぼ、僕も。話すの、下手だけど」
「いいのよフィン!一生懸命話そうとしてくれてるの、伝わってるわ。それってすごく大事なことよ」
こうしてティアナは騎士達四人と一瞬で打ち解けてみせた。
「結局素の部分で落とすんだから、うちの主怖いわー」
一人外れたところで溢れたリューの呟きは勿論誰の耳にも届いていない。
ティアナの突然の告白に騎士達は同時に固まった。固い氷に強い衝撃でヒビが入ったみたいな顔をしている。
このような状況で腹の探り合いが起きるのは当然だ。
だがそれをわざわざこうして口にする人間は少ない。
それでもティアナは胸に片手を当てて一から十まで全てとはいかずとも出来得る限りのことを一気に打ち明けた。
「公爵様に嫁ぐにあたり、帝国の礼儀作法は少しではありますが調べさせていただきました。それでも敢えて逆らったのは騎士様達の反応を見たかったからです」
ツラツラと躊躇いなく語り出すティアナ。
騎士達はあまりの衝撃に声も出ない。
「ですがアルト様は私に誠実な対応をしてくださいました。誠実さには誠実さで応えねばなりません。
ですから心からの謝罪と………もし許していただけるのであれば、一つ質問させていただいでよろしいでしょうか?」
ティアナは再び頭を下げてからゆっくり目線を上げる。
丁寧な言葉と誠意を感じる素直な謝罪に騎士達は試された事実など些細なことにしか思えなかった。
敵対していた族の姫がここまで真っ直ぐ自分達に向き合ってくれるとは想像もしていなかったのだろう。
「一つなんて!百個でも千個でも質問してください!」
「カロンうるさいぞ」
「すいませんキーケ先輩!」
(カロンってば可愛いわね)
短い耳とブンブン揺れる尻尾が見える。
騎士らしくはないがティアナは型にハマらない子が好きなので一気にカロンを気に入った。
「あの、姫様。カロンは少し大袈裟ですが質問くらいいつでもしてくださって構いません。勿論謝罪も必要ありません。知らない者に探りを入れるのは当然のことですので」
「まあ。騎士様の広いお心に感謝申し上げます。では早速一つ質問を」
リューが後ろでどんな顔をしているか想像出来る。騎士達に同情していることだろう。
ティアナは楽しいことが好きだ。
そして楽しくない時は意地でも楽しい方へ持っていこうとする。その時に起こるとんでもない引力を持った強風は図らずも周囲を巻き込んでしまうのだ。
(ここから公爵領まではまだ長い。それなのに探り合いながらの旅なんて勿体ないわ。折角なら楽しい道中にしたいもの)
「ここから公爵家までの道中に限り、私はあなた方を信じてもよろしいのでしょうか?」
出会ってからこの数分の間で彼等は一体何度『予想外』に直面しただろう。
少なくとも三度、ティアナは彼等の驚いた表情を見た。
それでもまだ満足出来ない。
長い間敵対していた国から迎えに来た騎士がノコノコ嫁ぎに来た姫を軽視するなんてよくある話だ。
そんなありがちな物語はつまらない。
そんなありがちな物語しか紡げない人間に興味はない。
(貴方達は私を楽しませてくれる?)
「先程申し上げた通り、我々は公爵様の命でここに来ました」
アルトは再び地面に膝をついた。それに続いて三人も同じ姿勢を取る。
「『ティアナ姫を安全に公爵家までお連れしろ』と」
ウズ、
ティアナの胸が騒ぎ出す。
「私達四人、この命を賭けて姫様を公爵家までお連れいたします」
その一言を聞いた瞬間ティアナの瞳に星が落ちて来る。
「主!!」
リューの手が腕を掴むより先にティアナは動き出した。
「面白いわ!」
「え、あ、ちょ…」
ティアナは結局また地面に膝を付いてアルトに近づいた。その勢いといったら騎士もリューも反応できないほどで、アルトも急に目の前に現れたティアナの笑顔に大慌てだ。
「公爵様、なんて面白い人なの!だってそうでしょう?対立していた部族の姫に優秀な騎士を四人も派遣するなんて!その上安全にも配慮してくださったのよ!?」
「主落ち着いて。一回アルトさんから離れて。悪い癖出てます」
「これが落ち着いていられる!?だってリュー、こんなの想像してた?してなかったでしょ?」
「あーはいはいそうですね。びっくりですねー。楽しいですねー。
アルトさん、姫は放っておいてどうぞ後ろに下がってください」
「あ、は、はい!」
アルトはまるで野獣から距離を取るように後退り、他の三人はそんなアルトを守るように寄り添った。恐らくアルトのお尻は土だらけである。
「あ、ねぇ待って!もっと貴方達の主人のことを聞かせて!」
「主ストップ。ほんとにストップ。騎士さんたち怯えてます」
「えー、いいじゃない!
だって公爵様、きっととっても素敵な人よ!」
(こんなに楽しませてくれる人だもの。私の勘はよく当たる!)
ティアナはリューに向かって満面の笑みで言い切った。
その無邪気な様子はティアナの言葉が本心であることを騎士達に伝えるには十分で、四人はそんなティアナを見て同じことを思う。
「姫様!よく言ってくださいました!」
「カロン!教えてくれるのね!」
「はいいくらでも!俺公爵様を褒めてくれる人大好きです!」
「あの、私も。この中では公爵様と一番付き合いが長いので教えられることも多いと思います」
「まあアルトも!?それは心強いわ!」
「あの、自分も。協力できることならいくらでも」
「キーケ!ありがとう!勿論騎士として話せる範囲でいいからね!」
「ぼ、ぼ、僕も。話すの、下手だけど」
「いいのよフィン!一生懸命話そうとしてくれてるの、伝わってるわ。それってすごく大事なことよ」
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