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マリアナ沖海戦
第52話 天山、零戦 連携
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(四隻の巡洋艦とその後方に二隻の戦艦の合わせて六隻からなる単縦陣。その左右にそれぞれ八隻の駆逐艦からなる単縦陣か)
第三艦隊と第四艦隊、それに第五艦隊の連合攻撃隊を指揮する「飛龍」飛行隊長の友永少佐は米水上打撃部隊、米軍で言うところの第七機動群をその視野に入れると同時にその戦力構成を確認する。
連合攻撃隊は零戦が一三九機に天山が一一五機の合わせて二五四機からなる。
零戦は増槽を装備しない替わりに両翼にそれぞれ二五番を一発、天山のほうはイ号一型丙無線誘導弾を搭載していた。
「攻撃目標ならびに、攻撃順を指示する。天山隊については『蒼龍』隊は左翼の駆逐艦、『雲龍』隊は右翼の駆逐艦をその目標とする。『天城』隊ならびに『葛城』隊は巡洋艦を叩け。『笠置』隊ならびに『赤城』隊は前方の戦艦、『金剛』隊ならびに『比叡』隊は後方の戦艦を狙え。『飛龍』隊については追って指示する。
零戦隊については、第三艦隊は左翼の駆逐艦、第四艦隊は右翼の駆逐艦、そして第五艦隊は中央の巡洋艦を攻撃せよ」
今回は指示が多岐にわたる。
そのことから、少し間を置きつつ友永少佐は命令を重ねる。
「攻撃順についてだが、第一に左翼の単縦陣、第二に右翼の単縦陣、第三に敵巡洋艦、最後に敵戦艦とする。左翼の単縦陣については『蒼龍』艦攻隊、次に第三艦隊の零戦隊、右翼の単縦陣については『雲龍』艦攻隊、それに第四艦隊の零戦隊がこれに続くものとする。
両翼の単縦陣への攻撃が終了した時点で、『天城』艦攻隊とその次に『葛城』艦攻隊が敵巡洋艦を攻撃、さらに第五艦隊の零戦隊がこれに追撃を加える。
敵の補助艦艇の排除が済むのと同時に本命である敵戦艦を叩く。こちらは『笠置』『赤城』『金剛』『比叡』の順でこれを攻撃せよ。攻撃法については各隊指揮官にこれを委ねる」
友永少佐の命令一下、真っ先に「蒼龍」艦攻隊が編隊を解き、小隊ごとに左翼の単縦陣の左斜め前方から突撃を開始する。
三機乃至四機に分かれた「蒼龍」艦攻隊が自分たちを狙っていると悟ったのだろう。
左翼の単縦陣を形成する八隻の米駆逐艦が「蒼龍」艦攻隊に向けて両用砲を指向していく。
そして、天山が射程内に入るのと同時に射撃を開始する。
八隻合わせて四〇門。
それは四隻乃至五隻の新型戦艦が片舷に指向できるそれに匹敵する。
たちまちのうちに天山の周囲に高角砲弾爆発に伴う黒雲がわき立っていく。
VT信管を内包する一二・七センチ砲弾は飛行機にとっては剣呑極まりない存在だ。
しかし、それもVT信管の作動範囲内に相手を捉えてこそ意味が有る。
そして、いかに優秀な射撃指揮装置を持つ米駆逐艦とはいえども、あまりにも遠くにある小さな目標に対して命中させることは至難だった。
一方、米駆逐艦との距離が一〇〇〇〇メートルを切るまでに踏み込んだ一三機の天山は、次々にイ号一型丙無線誘導弾を放っていく。
しかし、米駆逐艦はイ号一型丙無線誘導弾を無視し、もっぱら天山のみを狙ってきた。
イ号一型丙無線誘導弾がどのような性格を持った兵器であるのかを米駆逐艦の将兵らはすでに理解している。
おそらくはイ号一型丙無線誘導弾の洗礼を受けた米機動部隊からフィードバックを受けたのだろう。
恐るべき対応の速さだった。
その八隻の米駆逐艦だが、それらは天山との距離が一〇〇〇〇メートルを切り、それが九〇〇〇、八〇〇〇と近づくにつれて照準が正確になっていった。
そのことで、高角砲弾炸裂に伴う危害半径に捉えられる機体が相次ぐ。
爆風に煽られ断片に切り裂かれながらも、しかし天山は飛行を続ける。
充実した防弾装備の賜物だった。
もしこれが、旧来の九七艦攻であったとしたら、たちまちのうちに撃墜されていたことだろう。
一三発のイ号一型丙無線誘導弾は、しかし新兵器につきものの初期不良によって四発が脱落する。
しかし、脱落したイ号一型丙無線誘導弾を発射した機体もまた前進を続ける。
いまだイ号一型丙無線誘導弾のコントロールを維持している天山、それに指向される敵の対空砲火を自らに引き寄せることで僚機の安全を図るのだ。
ただ、それでも被害無しでは済まなかった。
あと少しでイ号一型丙無線誘導弾が敵駆逐艦に着弾するというタイミングで「蒼龍」第三小隊二番機が直撃に近い高角砲弾の至近爆発を食らって爆砕される。
七発となったイ号一型丙無線誘導弾だが、このうちの六発が四隻の米駆逐艦に命中する。
五〇〇キロ爆弾を内包する一トン近いイ号一型丙無線誘導弾を突きこまれては、装甲が皆無の駆逐艦はたまったものではない。
被弾した四隻の米駆逐艦はそのいずれもが被弾個所から猛煙を上げ、洋上停止するかあるいは這い進むだけとなった。
半数の駆逐艦が撃破され、左翼の単縦陣は隊列が大幅に乱れる。
被弾した僚艦を避けるため、後続艦は転舵を余儀なくされる。
そして、そのことで速力がガタ落ちとなる。
そこに第三艦隊の四五機の零戦が襲いかかる。
これらは母艦単位に分かれ、緩降下爆撃を仕掛けた。
緩降下の途中で三機が、さらに投弾後の離脱途中で二機が機関砲弾や機銃弾を浴びて墜とされた。
それでも八四発の二五番を投下することに成功した。
一方、米駆逐艦のほうは必死の回避運動でこれを躱そうとする。
しかし、一隻あたり三〇発近い爆弾を、しかも矢継ぎ早に投弾されてはそのすべてを回避するのは至難だ。
三隻の駆逐艦のうちで、最も被弾が僅少で済んだものでも二発、多いものは四発を被弾していた。
左翼の単縦陣で天山それに零戦の攻撃から逃れることができたのはわずかに一隻のみだった。
左翼の単縦陣への攻撃が終わった時点で「雲龍」隊が、次に第四艦隊の零戦隊がこちらは右翼の単縦陣を攻撃する。
こちらは攻撃配分を工夫したことで、八隻の米駆逐艦のそのすべてに最低でも一発のイ号一型丙無線誘導弾かあるいは二五番を命中させていた。
第三艦隊と第四艦隊、それに第五艦隊の連合攻撃隊を指揮する「飛龍」飛行隊長の友永少佐は米水上打撃部隊、米軍で言うところの第七機動群をその視野に入れると同時にその戦力構成を確認する。
連合攻撃隊は零戦が一三九機に天山が一一五機の合わせて二五四機からなる。
零戦は増槽を装備しない替わりに両翼にそれぞれ二五番を一発、天山のほうはイ号一型丙無線誘導弾を搭載していた。
「攻撃目標ならびに、攻撃順を指示する。天山隊については『蒼龍』隊は左翼の駆逐艦、『雲龍』隊は右翼の駆逐艦をその目標とする。『天城』隊ならびに『葛城』隊は巡洋艦を叩け。『笠置』隊ならびに『赤城』隊は前方の戦艦、『金剛』隊ならびに『比叡』隊は後方の戦艦を狙え。『飛龍』隊については追って指示する。
零戦隊については、第三艦隊は左翼の駆逐艦、第四艦隊は右翼の駆逐艦、そして第五艦隊は中央の巡洋艦を攻撃せよ」
今回は指示が多岐にわたる。
そのことから、少し間を置きつつ友永少佐は命令を重ねる。
「攻撃順についてだが、第一に左翼の単縦陣、第二に右翼の単縦陣、第三に敵巡洋艦、最後に敵戦艦とする。左翼の単縦陣については『蒼龍』艦攻隊、次に第三艦隊の零戦隊、右翼の単縦陣については『雲龍』艦攻隊、それに第四艦隊の零戦隊がこれに続くものとする。
両翼の単縦陣への攻撃が終了した時点で、『天城』艦攻隊とその次に『葛城』艦攻隊が敵巡洋艦を攻撃、さらに第五艦隊の零戦隊がこれに追撃を加える。
敵の補助艦艇の排除が済むのと同時に本命である敵戦艦を叩く。こちらは『笠置』『赤城』『金剛』『比叡』の順でこれを攻撃せよ。攻撃法については各隊指揮官にこれを委ねる」
友永少佐の命令一下、真っ先に「蒼龍」艦攻隊が編隊を解き、小隊ごとに左翼の単縦陣の左斜め前方から突撃を開始する。
三機乃至四機に分かれた「蒼龍」艦攻隊が自分たちを狙っていると悟ったのだろう。
左翼の単縦陣を形成する八隻の米駆逐艦が「蒼龍」艦攻隊に向けて両用砲を指向していく。
そして、天山が射程内に入るのと同時に射撃を開始する。
八隻合わせて四〇門。
それは四隻乃至五隻の新型戦艦が片舷に指向できるそれに匹敵する。
たちまちのうちに天山の周囲に高角砲弾爆発に伴う黒雲がわき立っていく。
VT信管を内包する一二・七センチ砲弾は飛行機にとっては剣呑極まりない存在だ。
しかし、それもVT信管の作動範囲内に相手を捉えてこそ意味が有る。
そして、いかに優秀な射撃指揮装置を持つ米駆逐艦とはいえども、あまりにも遠くにある小さな目標に対して命中させることは至難だった。
一方、米駆逐艦との距離が一〇〇〇〇メートルを切るまでに踏み込んだ一三機の天山は、次々にイ号一型丙無線誘導弾を放っていく。
しかし、米駆逐艦はイ号一型丙無線誘導弾を無視し、もっぱら天山のみを狙ってきた。
イ号一型丙無線誘導弾がどのような性格を持った兵器であるのかを米駆逐艦の将兵らはすでに理解している。
おそらくはイ号一型丙無線誘導弾の洗礼を受けた米機動部隊からフィードバックを受けたのだろう。
恐るべき対応の速さだった。
その八隻の米駆逐艦だが、それらは天山との距離が一〇〇〇〇メートルを切り、それが九〇〇〇、八〇〇〇と近づくにつれて照準が正確になっていった。
そのことで、高角砲弾炸裂に伴う危害半径に捉えられる機体が相次ぐ。
爆風に煽られ断片に切り裂かれながらも、しかし天山は飛行を続ける。
充実した防弾装備の賜物だった。
もしこれが、旧来の九七艦攻であったとしたら、たちまちのうちに撃墜されていたことだろう。
一三発のイ号一型丙無線誘導弾は、しかし新兵器につきものの初期不良によって四発が脱落する。
しかし、脱落したイ号一型丙無線誘導弾を発射した機体もまた前進を続ける。
いまだイ号一型丙無線誘導弾のコントロールを維持している天山、それに指向される敵の対空砲火を自らに引き寄せることで僚機の安全を図るのだ。
ただ、それでも被害無しでは済まなかった。
あと少しでイ号一型丙無線誘導弾が敵駆逐艦に着弾するというタイミングで「蒼龍」第三小隊二番機が直撃に近い高角砲弾の至近爆発を食らって爆砕される。
七発となったイ号一型丙無線誘導弾だが、このうちの六発が四隻の米駆逐艦に命中する。
五〇〇キロ爆弾を内包する一トン近いイ号一型丙無線誘導弾を突きこまれては、装甲が皆無の駆逐艦はたまったものではない。
被弾した四隻の米駆逐艦はそのいずれもが被弾個所から猛煙を上げ、洋上停止するかあるいは這い進むだけとなった。
半数の駆逐艦が撃破され、左翼の単縦陣は隊列が大幅に乱れる。
被弾した僚艦を避けるため、後続艦は転舵を余儀なくされる。
そして、そのことで速力がガタ落ちとなる。
そこに第三艦隊の四五機の零戦が襲いかかる。
これらは母艦単位に分かれ、緩降下爆撃を仕掛けた。
緩降下の途中で三機が、さらに投弾後の離脱途中で二機が機関砲弾や機銃弾を浴びて墜とされた。
それでも八四発の二五番を投下することに成功した。
一方、米駆逐艦のほうは必死の回避運動でこれを躱そうとする。
しかし、一隻あたり三〇発近い爆弾を、しかも矢継ぎ早に投弾されてはそのすべてを回避するのは至難だ。
三隻の駆逐艦のうちで、最も被弾が僅少で済んだものでも二発、多いものは四発を被弾していた。
左翼の単縦陣で天山それに零戦の攻撃から逃れることができたのはわずかに一隻のみだった。
左翼の単縦陣への攻撃が終わった時点で「雲龍」隊が、次に第四艦隊の零戦隊がこちらは右翼の単縦陣を攻撃する。
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