天使が下界に堕ちたとき。

yuuki

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7話目 ※ラジエル視点

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 祭りに必要な道具を運び終えて、家に帰る。少し前に実家を出たため今は一人暮らしだ。寝室に入ると、ベットに腰を掛けた。



 明日は生誕祭だ。ルシフェルを誘ったとき、了承してもらえたが、祭りに誘われる意味が分かっているのだろうか。いや、あいつはいつも能天気だ。知っているはずがない。



 明日の生誕祭はウラノス様を讃えるためにあるが、もう1つ特別な意味を持つ。それは、天使が番になることができる日ということだ。10年に一度のその日、番にしたい人を祭りに誘う。了承してもらったあと、祭り当日に告白する。それが成功して初めて番として認められる。生誕祭の日じゃないとウラノス様に祝福されないそうだ。番いたい人がいない場合は家族と行くのが普通だ。



 ベットから立ち上がると、そばにある棚に寄った。1番上の引き出しを開ける。中に入っている青い箱を取り出して、蓋を開けた。そこには、シルバーの指輪が入っていた。2本の輪が複雑に絡み合い、1番上には紅玉が輝いていた。指輪を持ち上げて月の明かりに照らす。淡い光にきらきらと控え目に輝き、透き通っていた。



 ──まるで、ルシーみたいだな。



 少し前、人間の国に寄ったとき、商人に声をかけられた。あまりにしつこかったので、勧められた装飾品を見ると、1つだけ気を引くものがあった。それがこの指輪だ。リングの部分は至ってシンプルだが、指輪にのった紅玉は一際綺麗だった。その紅玉は小さいながらもきらきら光り、ルシーの瞳を連想させた。彼ならきっと、この指輪が映えるだろうな。聞くと、この紅玉の言葉は「純愛」だそうだ。なんて彼にピッタリなのだろう。告白するときはこの指輪を渡そう。思わず運命を感じた。





 



 俺が初めてルシーと出会ったのは、天界に降りてきて1週間程経ったあとだった。俺は一族の中でも魔力の保有量が多く、周りから期待されていた。早く一人前になろうと、毎日練習を頑張った。



 その日もいつも通り魔法の練習をしていると、親父が慌てた様子で帰ってきた。



 「おい! 愛し子様が生まれたらしいぞ! アダムのとこだ!」

 「あらまあ、愛し子様ですって! 後で挨拶に行かなくっちゃ!」



 そう言うと、あたふた準備をしだした。滅多に着ない正装に着替えるものだから、疑問に思って聞いてみた。



 「ねえ、愛し子ってなに?」

 「そうか、ラジエルは知らないのか。愛し子って言うのはな、ウラノス様に特別に愛されているお方だ。力も圧倒的に強いし、姿も美しい。我々の中で1番ウラノス様に近いお方だ。ああ、前にいた愛し子様もたいそう美しかった。そうか、とうとうお生まれになったのか……」



 そう言うと、何やら光悦とした表情で宙を見つめていた。



 愛し子さま? なんだそれ。



 正直あまり気に食わなかった。



 ぱっと出のくせに、注目集めやがって。しかもまだ降りてきたばかりだろう? ひと目見に行ってやる。気がつけば、「俺も行く!」と言っていた。



 正装に着替えると、愛し子が生まれた家に行った。その家には人がたくさん集まっていた。きっとみんなも挨拶しに来たのだろう。順番が回ってくると、奥の部屋に通された。



 そこで見た光景は一生忘れることはないだろう。



 ドアのそばでは、一組の天使たちが立っていた。美しいが、他の者たちと変わらない。そしてその奥に、ベットに腰掛けている少年がいた。彼を見て、思わず息を飲む。透き通るような白い肌。少し握っただけで折れてしまいそうな四肢に、細い腰。なめらかな細い首の上に、ひどく整った顔がのっていた。卵型の頭には、透き通った真っ白の髪がさらさらと揺られ、その下には同じ色の長いまつ毛がふさふさと生えている。小ぶりの鼻に、小さいながらも艶めかしい唇。それだけを見ると、今にも溶けてしまいそうな、儚い、美しい人形を連想させる。しかし、その紅玉の瞳が、とても艶麗で、人を惹いて離さなかった。その、なんとも言えない力強さに惹かれ、じっと見つめていると、彼は困ったように目尻を下げ、へらっと笑った。その笑顔でさえ、ひどく美しかった。



 その後、どうやって家に帰ったかは覚えていない。あまりに衝撃的で刺激的だった。その日から、彼の視界に入ろうと努力した。立場など、何も知らない無知の子を装い、たくさん声をかけた。初めはよそよそしかったが、すぐに打ち解けて仲良くなることができた。会えば会うほど、彼に惹かれていく。その美しい容姿も、穏やかで優しくて努力家な性格も何もかもが好きだった。



 もし、ルシーが普通の愛し子だったのなら、番になんてなれないだろう。幸か不幸か、彼は魔法が使えなかった。愛し子だが、天使としては出来損ない。そんな立場に彼はいる。











 手にした指輪をしまい、窓から月を見上げた。



 告白されたらどんな反応をするのだろう。少なからず、俺のことを嫌っていないはずだ。



 不安にざわめく気持ちを落ち着かせて、ベットに寝転ぶ。色々な考えが頭を巡ったが、それを振り払い、静かに瞳を閉じた。

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