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8話目
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気が付くと、暗い空間にいた。
…ここはどこ? こういうの、前にも経験したな。また死んだのか? それとも夢?
試しに頬を抓ってみる。
──痛くない。じゃあ夢か。
恐ろしく冷静に判断する。これが噂に聞く白昼夢というやつなのだろうか。夢なのに意識が保てるって不思議だな。
辺りには黒い霧がかかっていて、視界がとても悪い。何か灯りでもないのか? 埒が明かないので歩いてみることにした。ひたすら前に進む。しかし、視界が悪すぎて、どこへ向かっているのか、どの道を歩いているのか分からなくなってきた。随分気味の悪い夢だ。
どれくらい歩いた頃だろう、どこからか子供のすすり泣く声が聞こえた。他にも人がいるのか? 声のする方に向かう。
だんだん声が大きくなっている。近づいているはずなのに、景色は何も変わらない。探すのを止めたほうがいいのかな。
すると突然、目の前に真っ黒な扉が現れた。黒い霧の中でもはっきりと色が見て取れた。夢だとなんでもありなんだな。よく観察すると、数枚古い御札が貼ってあった。なぜか禍々しい雰囲気を感じる。しかし、泣き声は扉の向こうから聞こえてきた。
これはあれだ、何か封印されてるやつだ。ホラー映画の序盤で、馬鹿そうな学生が肝試し気分で開けて呪われる系の何かだ。いくら中から声が聞こえるからって絶対開けちゃいけない。
急いで引き返そうとしたとき、突然勢いよく開いた。
「え、どういうこと……うわっ!!」
背中を何・か・に押され、部屋に入ってしまった。後ろでバンッ!と扉が閉まる音がする。顔からサッと血の気が引く。
これホラーゲームじゃん! 怖いのは無理なんだよ……。
思わず泣きそうになるのを耐えて、ゆっくり周りを見渡した。すると、左の方に白いローブを着た小さな子供が蹲ってた。きっと泣いていたのはあの子だろう。慰めなくてはいけないのだろうか。
いや、無理無理無理。絶対あの子霊的なやつじゃん。呪われるじゃん。死ぬよ??
帰ろうにも扉がどこにもない。しばらく迷ったが、話さなければこの夢から覚めない気がした。幽霊じゃないことを祈る。震える脚を叱咤して、そろりと近づき声をかけた。
「ねえ、君大丈夫?」
顔を上げたのは、黒い髪に赤い瞳の少年だった。少年特有の可愛い顔をしている。ちらりと体を見るとちゃんと脚が生えていた。良かった、幽霊じゃないみたい。少年は目を潤ませながらこちらを見た。
[だれ?」
「僕はルシフェル。君はどうしたの?」
「ぼ、ぼく、おにいちゃんに、とじこめられちゃったの。ここから、でれなくて、それで、それで、、うぅ」
「そ、そうか」
また泣き始めてしまった。困ったな。というかまさかの脱出ゲーム? ほんとどうしろってんだ。
僕が頭を抱えていると、少年は首を傾げながら僕を見てきた。もう涙は止まっている。
「おねえさんはだれ?」
「ん? お姉さんじゃないよ、僕はラシフェル」
「ううん、ちがうでしょ。おねえさんはだれ?」
……どういうこと? まさか前世のことを言っているのか?
「…どういうことかな? 僕はラシフェルで、それ以外の何者でもないよ」
できるだけ穏やかに言った。すると、少年はにやりと笑って立ち上がった。赤い目は爛々と燃え、食い入るように見つめてくる。あどけない雰囲気が嘘のように消え、得体のしれない何かが笑っていた。禍々しい気配を漂わせている。一瞬にして全身に鳥肌が立つ。少年は思わず後ずさる僕の手を掴み、話しかけてきた。
「あははっ、お姉さんどうしたの? 怖くなっちゃった? 僕が怖くなっちゃったの? 可愛いねえ。怖がらなくて平気だよ、だって僕たち同類でしょ?」
そう言って掴んでいる手に力を込めてきた。少年の気配が体を取り巻き、金縛りにあったように体が硬直する。やばい。冷や汗がだらだら垂れる。
「やだなあ、お姉さん焦っちゃって。あ、もしかして僕のこと知らない? 僕たち家族みたいなものじゃん、忘れないでよぉ」
そう言ってケラケラ笑う。僕はなんとか声を絞り出した。
「し、しらないっ……手、離してっ」
すると、少年は突然真顔になった。殺気が発せられ、脚の力が抜けて床に崩れ落ちた。ガタガタ震えながら少年を見る。目を反らしたら殺される。
「僕のこと、知らないはずないよね? だってお姉さんの魂紛い物じゃん。そんな汚い魂僕の同族でしかありえない。ねえ、人を殴ること好きでしょ? 殺すこと好きでしょ? 僕の同族だよ。やっと会えたのに、ずっとずっと待ってたのに! まだ! まだ僕のこと知らないふりをするの?!」
怒鳴りつけられて、一切反応ができない。少年は目をギラギラさせ、僕を睨みつけた。ひと言も発せずにいると、少年軽くため息をついた。
「……そうか、そうなんだ。よおく分かったよ。お姉さんはそうやって知らないふりをするんだ。魂の本質がどっちなのかも分からないくせに、僕に逆らうんだ。そーかそーか。じゃあ、これから分からせてあげるよ。お姉さんの魂はどうしようもなく汚れてるんだって。どうなるんだろうねえ、どこにも居場所なくなっちゃうよ?? あ、そろそろ時間だ! あと少しだから楽しみにしててね。じゃあね、ばいばい!」
全身に重くのしかかっていた殺気が一気に消え、ばっと身を起こした。ドッドッドと心臓が痛いくらい鼓動している。寝間着が汗でぐっしょりしていた。ようやく目を覚ますことができた。
今のはなに? 夢?
落ち着かせるように、ゆっくり深呼吸をする。ようやく心臓の鼓動が元通りになった。今のは何だったのだろうか。夢なのか、夢じゃないのか。ただの夢言うには、あまりにリアル過ぎて。しかし、現実だとは思いたくない。
外を見ると、朝日が昇りかけていた。今日は祭りなのにあんな夢を見るなんて最悪だ。ベットから出て、椅子に腰をかけた。またゆっくりと深呼吸をする。
あれは、夢だったんだ。今日はたまたま夢見が悪かったんだ。
自分に言い聞かせる。乱れている髪を整えようと、左手を上げた。はらりと袖が捲くれ、白い腕が視界に入る。
そこには、掴まれたような黒い痣が残っていた。
…ここはどこ? こういうの、前にも経験したな。また死んだのか? それとも夢?
試しに頬を抓ってみる。
──痛くない。じゃあ夢か。
恐ろしく冷静に判断する。これが噂に聞く白昼夢というやつなのだろうか。夢なのに意識が保てるって不思議だな。
辺りには黒い霧がかかっていて、視界がとても悪い。何か灯りでもないのか? 埒が明かないので歩いてみることにした。ひたすら前に進む。しかし、視界が悪すぎて、どこへ向かっているのか、どの道を歩いているのか分からなくなってきた。随分気味の悪い夢だ。
どれくらい歩いた頃だろう、どこからか子供のすすり泣く声が聞こえた。他にも人がいるのか? 声のする方に向かう。
だんだん声が大きくなっている。近づいているはずなのに、景色は何も変わらない。探すのを止めたほうがいいのかな。
すると突然、目の前に真っ黒な扉が現れた。黒い霧の中でもはっきりと色が見て取れた。夢だとなんでもありなんだな。よく観察すると、数枚古い御札が貼ってあった。なぜか禍々しい雰囲気を感じる。しかし、泣き声は扉の向こうから聞こえてきた。
これはあれだ、何か封印されてるやつだ。ホラー映画の序盤で、馬鹿そうな学生が肝試し気分で開けて呪われる系の何かだ。いくら中から声が聞こえるからって絶対開けちゃいけない。
急いで引き返そうとしたとき、突然勢いよく開いた。
「え、どういうこと……うわっ!!」
背中を何・か・に押され、部屋に入ってしまった。後ろでバンッ!と扉が閉まる音がする。顔からサッと血の気が引く。
これホラーゲームじゃん! 怖いのは無理なんだよ……。
思わず泣きそうになるのを耐えて、ゆっくり周りを見渡した。すると、左の方に白いローブを着た小さな子供が蹲ってた。きっと泣いていたのはあの子だろう。慰めなくてはいけないのだろうか。
いや、無理無理無理。絶対あの子霊的なやつじゃん。呪われるじゃん。死ぬよ??
帰ろうにも扉がどこにもない。しばらく迷ったが、話さなければこの夢から覚めない気がした。幽霊じゃないことを祈る。震える脚を叱咤して、そろりと近づき声をかけた。
「ねえ、君大丈夫?」
顔を上げたのは、黒い髪に赤い瞳の少年だった。少年特有の可愛い顔をしている。ちらりと体を見るとちゃんと脚が生えていた。良かった、幽霊じゃないみたい。少年は目を潤ませながらこちらを見た。
[だれ?」
「僕はルシフェル。君はどうしたの?」
「ぼ、ぼく、おにいちゃんに、とじこめられちゃったの。ここから、でれなくて、それで、それで、、うぅ」
「そ、そうか」
また泣き始めてしまった。困ったな。というかまさかの脱出ゲーム? ほんとどうしろってんだ。
僕が頭を抱えていると、少年は首を傾げながら僕を見てきた。もう涙は止まっている。
「おねえさんはだれ?」
「ん? お姉さんじゃないよ、僕はラシフェル」
「ううん、ちがうでしょ。おねえさんはだれ?」
……どういうこと? まさか前世のことを言っているのか?
「…どういうことかな? 僕はラシフェルで、それ以外の何者でもないよ」
できるだけ穏やかに言った。すると、少年はにやりと笑って立ち上がった。赤い目は爛々と燃え、食い入るように見つめてくる。あどけない雰囲気が嘘のように消え、得体のしれない何かが笑っていた。禍々しい気配を漂わせている。一瞬にして全身に鳥肌が立つ。少年は思わず後ずさる僕の手を掴み、話しかけてきた。
「あははっ、お姉さんどうしたの? 怖くなっちゃった? 僕が怖くなっちゃったの? 可愛いねえ。怖がらなくて平気だよ、だって僕たち同類でしょ?」
そう言って掴んでいる手に力を込めてきた。少年の気配が体を取り巻き、金縛りにあったように体が硬直する。やばい。冷や汗がだらだら垂れる。
「やだなあ、お姉さん焦っちゃって。あ、もしかして僕のこと知らない? 僕たち家族みたいなものじゃん、忘れないでよぉ」
そう言ってケラケラ笑う。僕はなんとか声を絞り出した。
「し、しらないっ……手、離してっ」
すると、少年は突然真顔になった。殺気が発せられ、脚の力が抜けて床に崩れ落ちた。ガタガタ震えながら少年を見る。目を反らしたら殺される。
「僕のこと、知らないはずないよね? だってお姉さんの魂紛い物じゃん。そんな汚い魂僕の同族でしかありえない。ねえ、人を殴ること好きでしょ? 殺すこと好きでしょ? 僕の同族だよ。やっと会えたのに、ずっとずっと待ってたのに! まだ! まだ僕のこと知らないふりをするの?!」
怒鳴りつけられて、一切反応ができない。少年は目をギラギラさせ、僕を睨みつけた。ひと言も発せずにいると、少年軽くため息をついた。
「……そうか、そうなんだ。よおく分かったよ。お姉さんはそうやって知らないふりをするんだ。魂の本質がどっちなのかも分からないくせに、僕に逆らうんだ。そーかそーか。じゃあ、これから分からせてあげるよ。お姉さんの魂はどうしようもなく汚れてるんだって。どうなるんだろうねえ、どこにも居場所なくなっちゃうよ?? あ、そろそろ時間だ! あと少しだから楽しみにしててね。じゃあね、ばいばい!」
全身に重くのしかかっていた殺気が一気に消え、ばっと身を起こした。ドッドッドと心臓が痛いくらい鼓動している。寝間着が汗でぐっしょりしていた。ようやく目を覚ますことができた。
今のはなに? 夢?
落ち着かせるように、ゆっくり深呼吸をする。ようやく心臓の鼓動が元通りになった。今のは何だったのだろうか。夢なのか、夢じゃないのか。ただの夢言うには、あまりにリアル過ぎて。しかし、現実だとは思いたくない。
外を見ると、朝日が昇りかけていた。今日は祭りなのにあんな夢を見るなんて最悪だ。ベットから出て、椅子に腰をかけた。またゆっくりと深呼吸をする。
あれは、夢だったんだ。今日はたまたま夢見が悪かったんだ。
自分に言い聞かせる。乱れている髪を整えようと、左手を上げた。はらりと袖が捲くれ、白い腕が視界に入る。
そこには、掴まれたような黒い痣が残っていた。
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