ネトラレクラスメイト

八ツ花千代

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41話

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 武を極めるために村を出発した狛勝人空手バカ曽木八重乃巨乳
 二人は仲良くしているようだ。

 なぜわかるのか。
 それは、【恋愛対象】に指名した彼女の名前がネトラレ中を意味する赤色だからだ。
 恐竜のような筋肉男とカモシカのような女性。きっと捕食シーンのようなプレイが繰り広げられているのだろう。
 脳筋バカは性行為に関心ないと思っていたが、いったい、何を極めるために出発したのやら……。



 改めて【恋愛対象】を見直してみる。
 内訳はこうだ。

 一、幼馴染詩織
 ドラゴンから助け出すまで対象からはずせない。
 ネトラレ状態になったことはないので、おそらく、ドラゴンは女に興味がないのだろう。

 二、出水涼音令嬢
 はずさない約束なので固定だ。
 ずっと性行為をしていない。
 才原優斗イケメンとは別れたのかもしれない。

 三、二見朱里歴女
 彼氏の千坂隆久モヤシとは別れたのだろうか。それとも遠恋?
 クラス会議ではやけにアッサリしていた。

 四、食堂の両津朱莉ママ
 俺の前で瀧田賢インテリメガネに告白した。
 あれから進展しているようすはない。
 なにか理由があるかもしれないな。

 五、水泳部の片倉澄夏OL
 嘉門剛平ソムリエとSMプレイをつづけている。
 ウン、タノシソウダネ。

 六、自転車部の菊池潤奈サイクラー
 ひとり暮らしを始めてから毎晩経験値を増やしてくれる。
 俺との約束を律儀に守っているのか、それともたんなる性欲か、それはわからない。
 サドルがすり減ってないか心配だ。

 七、弓道部の由良麻美ファン
 指名したのは狩猟部隊で危険な任務についていたからだ。
 才原優斗イケメンが好きなはずなのに告白する素振りを見せない。
 彼女になりたいのではなく、推し活がしたいだけなのか?

 八、茶道部の才賀小夜腐女子
 遠征部隊への参加は危険なので【恋愛対象】に指名した。
 薄い本の愛好家なのだから、性に興味があるはずだ。
 それなのに男子と会話しているところを見たことがない。

 九、水使いの三門志寿漫画家
 筒井卯月歌姫と仲よく銭湯でデートしている。
 いつも経験値をありがとう。

 十、農業の乃木坂羽衣義妹
 新垣沙弥香ギャルから肉体的イジメをされる恐れがあったので指名した。
 もうイジメられているようすはない。
 指名からはずしても問題ないけれど、枠は余っているのでこのままとしよう。

 十一、紙使いの亀ケ谷暁子エセ京都
 連城敏昭野球バカとの関係は停滞中。
 早くヤッてしまえばいいのに。

 十二、服屋の新垣沙弥香ギャル
 まだ牢屋にいる。
 指名したのは、もとの世界に帰るときに声をかけるためのマーキングだ。

 十三、上別府衿花ロリっ子
 気仙修司パンダの建てた家が毎晩揺れているとうわさだ。
 ちいさい体なのに運動部の彼に負けないくらいタフ。
 今、もっとも経験値を稼いでくれる二人だ。

 十四、陸上部の曽木八重乃巨乳
 狛勝人空手バカ青姦あおかんの修業中だ。
 アイツがいれば、プレイ中に魔物に襲われても平気だろう。


 そうだ、石亀永江委員長を復活させておこう。過労死しそうだからな。
 あと誰を指名しよう……。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 もとの世界に帰る方法を探すべく、村から出発するクラスメイトたち。
 探求部隊と命名された。

「必ずもとの世界に帰るほうほうを探し出して戻ってくる」

 才原優斗イケメンの目は輝き、やる気に満ちあふれている。

「吉報を待っているよ」

 石亀永江委員長と固い握手を交わした。

 出水涼音令嬢が俺を睨んでいる。
 じつは、いっしょにいこうと誘われたが、丁重にお断りした。
 鬼頭日香莉アイドルのいる村から離れたくないと言うと、意外なほどあっさりとあきらめてくれた。


 二見朱里歴女が寂しそうに千坂隆久モヤシをみている。
 やはり別れが辛いのかもしれない。
 けれど彼女は頑固者だ。ヤメタとは言えないだろう。


 投獄していた新垣沙弥香ギャルが連行される。
 俺たちに背を向けているのでどんな表情をしているかわからない。

 途中の集落で解放するのだが、殺した犯人と殺された被害者。
 いっしょに旅をして大丈夫なのだろうか。
 とりあえず手首にロープを巻いてあるが……。


 アイツらは狩りに出かけるような気軽さで出発していった。
 危機感が薄いのは相変わらずだ。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



「第九回、クラス会議を始める。議題は永住について」

 議事堂にクラスメイトが集合している。
 石亀永江委員長はいつものように前で司会進行だ。

「ここに残った人たちは、もとの世界に帰る方法が見つかれば良いが、なかばあきらめている連中だな。それはわたしも同じ。しかし希望を失ったからといって生きねばならない。そこで、この森での永住について議論する」

 嫌ないいかたをすれば、ここに残ったのは個性を表に出さない連中だ。
 イケメン、令嬢、歴女、のぞき魔。村から出たのは濃い連中ばかり。
 なので、自発的に発言する人が少ない。
 もちろんそこには俺も含まれている。

「問題点その一。加護に頼り過ぎている。まずは農業。乃木坂のぎざかさんが倒れると作物が食べられなくなる。これは危うい。なので手の空いている人は農作業を手伝うのはどうだろうか」

 誰も反対意見を言わない。議事堂は静まり返っていた。

「みんな賛成でいいのか?」

 無言でうなずくクラスメイト。
 手ごたえのない反応に、彼女は表情を曇らせた。

「次、飲料水。キレイな水は三門みかどさん任せだ。なので浄水場や雨水の保存について検討が必要だ」
「それはボクが考えるよ」
「頼む」

 建設の加護をもつ気仙修司パンダ
 彼がいなければ村の発展はありえない。
 問題点のトップだと思うのだが、石亀永江委員長はあえてスルーしているっぽいな。

「次、川魚の漁は筒井つついさんに任せきりだ」
「可動式のやなを検討してみるよ」

 これも気仙修司パンダが担当か。
 上別府衿花ロリっ子と同棲を始めてから、彼は生き生きしている。
 恋愛が充実していると仕事に精が出るといううわさは本当かもしれない。

「問題点その二。狩猟部隊が事実上の解散だ。そこで畜産を検討したい」
「鶏や牛を育てるというのか? 誰も知識をもっていないだろ」

 瀧田賢インテリメガネが指摘する。
 自発的に発言するのは彼くらいだ。

「卵や牛乳があればお菓子が作れるんだけどな」

 ボソッと誰かが呟いた。
 その声に女子たちが反応する。

「お菓子?!」
「あ、うん。ボクの加護は菓子なんだ」

 卓球部の柿原健博かきはらたけひろ
 勉強そこそこ、運動まあまあ、容姿まずまず。
 【没個性】としかいいようのない男子だ。
 教室では気仙修司パンダといっしょにいた。

「材料がないし、とくに作りたいとは思わなかったから加護なんて放置してたよ」

 牧瀬遙ミーハーが、そっと挙手する。

「あのぉ~、わたしの加護、畜産なんだけど」

 なぜ今まで黙っていた。
 まさか、家畜の世話をしたくなくて黙ってたのか?
 お菓子が食べたくて白状するとか、食い意地張ってんなあ。
 フルーツかじっていればいいだろ。

 儀保裕之悪友が残念そうな顔してる。
 彼女の性格を知ってるから愛想をつかしているんだな。

「飼育方法なら、なんとな~くわかるかもしれない」
「それは頼もしい。あとは家畜をどうやって手に入れるか……」

 石亀永江委員長が目を閉じ困った表情で考え込んでいる。

 俺はドラゴンとの約束を思いだした。

「委員長いいかな」
「どうした? 苦瓜にがうり君」
「前にドラゴンが来たときに被害が出ただろ、あの件で貸ひとつになっている。その貸で家畜を運んでもらおう」

 クラスメイトが驚いた。
 あれ? 俺話してなかったかな……、ああ、石亀永江委員長にしか知らせてないわ。

「けれど、ドラゴンがいつ来るか不明だし、貸を払うかもさだかじゃない。代案にしておいてくれ」
「わかった」

「あのぉ~、ドラゴンの貸についてなんだけどぉ~、前にクロムが欲しいって話してたよねぇ、ドラゴンさんそこま運んでもらえるかなぁ?」

 採掘の加護をもつ才賀小夜腐女子。いつもオドオドしている。

「交渉の余地はあると思う。ついでに聞いてみるよ」
「うひっ、おねがぁい」
「この件は保留としよう。各自、考えておいてくれ」

 クラスメイトが無言でうなづく。

「問題点その三。衣服について。新垣あらがきさんがいなくなったことで新しい服が作れなくなった」
「委員長、俺に任せてくれ。新垣あらがきさんがいたから遠慮していたが俺も服が作れるんだぜ」
「そうなのか?」
「レザーシャツ、レザージャケット、レザーパンツ、レザースカート。まぁオールレザーだけどな」

 嘉門剛平ソムリエはSM用のボディースーツとか作っていたな。
 趣味がちょっとアレだけど、ないよりはマシ。
 クラス全員がレザーの服を着ると、世紀末っぽくなりそうだ。

「今まで店には出していなかったけど、これからは陳列しとくよ。気に入ったら着てくれ」

「問題点その四。ばん君がいなくなったことでお風呂のお湯が使えない」
「ボクがお湯を沸かす装置を作るよ。けど薪で火をおこすから重労働になるんだ」
「力仕事は俺がやろう」

 挙手しながら連城敏昭野球バカが発言した。

「ウン、ボクも手伝うから」

 柔道部と野球部なら体力的に問題ないだろう。

「問題点その五。戦闘系の加護をもっているのは鬼頭きとうさんだけになってしまった。対策が必要だとおもうのだけど良い案が浮かばない」
「そうですね、わたしができるのは単体の迎撃だけです。大量の魔物が侵入してきたケースを考えてシェルターを作ってみたらどうでしょう」
「ふむ……、気仙けせん君どうかな?」
「はい、シェルターも作れますよ。貯蔵庫もそちらに移して籠城できるようにしましょう」
「任せるよ。わたしの思いつく問題点は以上だ。意見がなければ会議を終了する」

 とくに意見はないようだ。
 クラスメイトの反応の薄さに石亀永江委員長が困った顔をした。

「それでは解散」


 戦闘できるのは鬼頭日香莉アイドルだけになってしまった。
 これからは彼女に負担がいくだろう。

 【恋愛対象】に鬼頭日香莉アイドルを指名する。
 これで彼女が死ぬことはない……。

 あえて今まで避けてきた。
 ほんとうは指名なんてしたくない。
 【恋愛対象】に指名した女子のほとんどが性行為をした。
 指名したから性行為をしたのか、それとも偶然なのか、まだ判断できない。

 たとえ偶然だったとしても、好きな子が誰かと性行為しているなんて知ったら、俺は脳が破壊され絶対に発狂する。
 知りたくない。
 けれど死んでほしくない。

 もし、誰かの彼女だとして、守る必要があるだろうか。
 愛しているのなら、誰の彼女だろうと守りたくなるのだろうか。
 それは愛? 偽善? 俺にはわからない……。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 建設の加護をもつ気仙修司パンダは仕事が山積みだ。
 村の施設は、彼がすべて造っている。

 今は銭湯に湯沸かし装置を追加中だ。
 渦巻きポンプにより湯船の水を引き込み、薪を燃焼させた熱で湯を沸かし、湯船にお湯を戻す。
 家庭のお風呂にある追い炊き機能と同じ仕組みだ。

 問題はガスと違い、それほど高温にならないため湯を沸かす時間が長い。
 そのあいだ渦巻きポンプを回転させつづけなければならない。
 連城敏昭野球バカと交代しながら作業してもかなりの重労働だろう。



 俺たちは油断していた。

 村での暮らしになれ、高い堤防に守られ、衣食住が安定。
 ここが異世界で、俺たちは逃亡者だという現実を忘れていたのだ。

 薪で湯を沸かしたことにより煙が出る。
 それが、俺たちの位置を敵に教えてしまったのだ。

 戦いの足音が近づいてくる――。
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