3 / 11
3話
しおりを挟む
「誰が子供やねん、アホぬかすな」
とろんとした半開きの目が俺を見ている。
出るところは出てないし、引っ込むべきところは引っ込んでいない。
ようするに寸胴の幼児体形だ。
公園で声をかけたら通報案件だろう。
短い三つ編みがよけいに幼さを引き立てていた。
「お客さ~ん、飲みすぎだよ、それくらいにしたら?」と、看板娘が困り顔で声をかける。
「やかましいねん、姉ちゃんこれと同じの持って来てや」
「しょうがないねぇ、最後の一杯だよ。相席のお客さんに絡んだら出て行ってもらうよ」
「そないなことせぇへんわ、早う持ってきてや~」
看板娘は溜息をつくと俺たちに注文を聞き厨房へ酒を取りに行く。
俺とティルダは椅子に座ると自然と目が合った。
『やれやれ』と、口には出さないがお互い同じ気持ちなのだと気がついた。
「兄ちゃんデートか~、うらやましいな~」
泥酔ロリッ子、絡んでくるの早っ!
「ええ、まあね」
「まあねって。恥ずかしくもなく惚気とるで~この兄ちゃん」
きゃっきゃと笑うロリっ子。
俺は酔っ払いが嫌いだ。
酔えば周囲に迷惑をかけると自覚しているのに、それでも酒を飲むのは罪だ。
このロリっ子が男なら別の店に移動しただろう。
「ミズキ殿、無視だ無視」
俺は無言で頷いた。
「そないな寂しいこと言わんとって~な~。こう見えてな~凄い落ち込んどるねん」
ティルダの助言もあり俺は黙っていた。
「うわぁ~兄ちゃんもう尻に敷かれとるで~。情けないの~。ここは『どうしました?』って聴くとこじゃろがい」
これは延々と絡んでくるヤツだ。
しかたない、言いたいことを吐き出せば大人しくなるだろう。
「どうしました?」
「おっ優しいな~。あんなぁ、ウチ商売やっとんねん。こう見えて従業員を十人雇う店のオーナーなんよ。でもな~その店から追い出されてしもうたんよ」
「それはお気の毒様」
「ノリが悪いの~、『なぜですか?』って聞かんかい」
めんどくさっ!!
「なぜですか?」
「あんなぁ、新商品を仕入れたんよ、でもな~、それが粗悪品やったん。商品は売れず店に損害を出してしもうたんや」
「商売していれば失敗の一度や二度はあたりまえだろ」
「そうだよね。でもな~マネージャーがえらい怒って『店は任せられません』って、従業員と一緒になってウチを追い出したんよ」
「それは違法じゃないか?」
「まあな~。訴えて店を取り戻したとしても、マネージャーと従業員が全員辞めてしもうたら、どのみち店は潰れてしまうねん」
「それ、マネージャーが仕組んだ罠だろ。アンタは騙されたんだよ」
なんだろう、ティルダが凄く不機嫌だ、眉間にシワを寄せてロリっ子を睨んでいる。
もしかすると彼女も酔っ払いが嫌いなのか?
「それはない~。粗悪品と指摘して仕入れを止めさせようとしたのはマネージャーやねん。ウチはその助言を無視して強行してしもうたんや」
「部下の諫言を無視したのならオマエが悪い。素直に謝って許してもらえ」と、容赦のないティルダだった。
まさかとは思うが、このロリっ子も殊寵者なのだろうか。
「その失敗はいつ頃したんだ?」
「三日前やけど、それが何や」
あの無責任な神がいなくなったのは、七日ほど前だ、この子は違うな。
「いや、俺の勘違いだった」
「うぅ~~~~」
テーブルに突っ伏して小さなうめき声を上げている。
「ミズキ殿、もう放っておこう」
「ティルダは容赦ないな」
「これからミズキ殿を誘惑するところなのに邪魔するからだ」
「はっきり言うね」
「私を美人と言って口説いたのはアナタが初めてなのだ、希少な存在、逃がさないよ」
「野獣と呼ばれてた話か……、それは性格だと思うぞ」
美女と野獣は有名だが、美女の野獣は珍しいな。
「力こそ全て! と、思って生きて来たから仕方ないじゃないか。こんな男女は嫌いか?」
「いや、話しやすくていいよ」
「そうか! なら猫を被る必要はないな!」
笑顔が眩しい。
俺の言葉で喜んでくれるのは素直に嬉しいな。
「俺が生きてきた中でも一二を争うほどティルダの外見はとても素敵だ。でもそれは外見の話で性格まで知っているわけじゃない、だからティルダの好意にすぐ応えられないよ」
「うむ! ミズキ殿は誠実だな。私としても全て知ったうえで好いてもらうほうが嬉しい」
「だからティルダの家に泊まる件は保留な」
「なぜだ、二人の間には何の障害もないんだぞ。一緒にいればお互いを知る時間が増えるだろ」
「いや、その勢いだよ。いきなり押し倒されそうだし」
「残念なことに鍋の蓋は無いからね。今の力ではミズキ殿を押し倒すのはムリだ。安心して来るといいよ」
「神に誓う?」
「力の裸神モルガーノンに誓って!」
「なら厄介になろう」
「よし! 誘惑成功だ!」
「ハッハッハ、誘惑じゃなくて篭絡だろ」
「結果が同じならどちらでも構わないさ」
俺とティルダは楽しく会話しながら運ばれた料理を食べたのだった。
いつの間にかロリっ子は泣き疲れて寝てしまったようだが会話に夢中で気づかなかった。
翌朝、俺はティルダの家で目覚めた。
ベッドの上にはパジャマ姿のティルダが寝息を立てている。
約束は守られ、彼女とは一線を越えていない。
好かれているとはいえ、易々と女性に手を出すような男ではないのだ、俺は。
まあ、本音を言うとチキンなだけなんだが。
ちなみに、スーツを脱いでいるので変身アバターは解除されている。
本当の姿を見せてもティルダは『ふぅ~ん』と言うだけだった。
教会で姿を変えていることは明かしているが、驚いてくれないのも少し寂しい。
どうやら俺の容姿を好きになったわけではないらしい。
まあアバターはモブ顔なので魅力など皆無なのだが。
「う、ん……」
ティルダが目を覚ました。
「おはよう」
「ミズキ殿、おはようの口づけを」
「ないよ」
「ケチ……」
この世界の女性は殆ど化粧をしない。
唇に紅をさすくらいだ。
それなのにティルダは美しかった。
朝日を浴びて赤い髪が輝いている。
俺は抱きしめてキスをしたい衝動を必死に抑えるのに出精一杯だった。
冷蔵庫がないので食料は保存のきく物しか家に置いていない。
なのでどの家庭も外食が基本だ。
外出の支度を済ませ昨夜の居酒屋へ出かける。
居酒屋の前にロリっ子が寝ていた。
ここで一晩あかしたのか?
誘拐されていないところを見ると案外治安は良いのかもしれない。
「ミズキ殿、無視だ」
「わ、わかってるって」
ロリっ子の横を通り過ぎようとすると、唐突に足を掴まれた。
「み、水を、く、れ……」
ティルダがその腕を蹴り飛ばそうと足を上げる。
「待った待った! 幼女を蹴るのは俺の良心が痛む」
「コイツは見た目ほど若くはないぞ」
「それでも、だ」
ティルダは溜息をつくと、
「ミズキ殿は奥手なのに女好きなんだな」と呟いた。
ロリっ子に肩を貸して居酒屋に入る。
「いらっしゃ――。お客さんもの好きだねぇ、放っときゃいいのに」
「水をくれるか」
「はいよ。空いてる席に座っとくれ」
俺は看板娘に朝食セットを三人分注文した。
夜は酒を飲みながらゆっくりと食事をするのが普通で、朝は飲み込むように食事をして店を出て行く者が大半だ。
俺とティルダはバイトを休むので急ぐ必要はない。
水を飲んで一息ついたロリっ子。
「どこの誰だか知らんけれど、おおきにやで」
「昨夜ここで相席したの覚えてないのか」
「そうなん? 酔って記憶にないわ~」
看板娘が料理を運んで来た。
「はい、お待ちどうさま~」
パン、目玉焼き、ベーコンサラダ、ホットミルクのオーソドックスな朝食セットだ。
俺は三人分の代金を看板娘に渡す。
「これ、兄ちゃんの奢りやろ?」
「気にせず食べてくれ」
「あたりまえや、出されたものは残さず食うで」
少しは元気が出たようだ。
「ミズキ殿の好意、有難く頂け」
「へぇ、兄さんミズキ言うんか。ウチはアラニスや、よろしゅうな。姉さんは?」
「オマエに教える名はない」
「えらい冷たいのう、ウチ何かした?」
「酒で記憶を無くすとは、都合の良い奴だ」
「あ~、それはごっつうすんまへん」
「ふんっ!」
ティルダは不機嫌なままだ。
根に持つタイプらしい、覚えておこう。
「お店を取り戻す案は浮かんだのか?」
「あらぁ、ウチそこまで話たん? 恥ずかしいわぁ。……恥をしのんでお願いや、兄さんも考えてくれへんかなぁ」
「原因は粗悪品を良品と勘違いしたことだろ、ならそこを改善すればいいんじゃないか?」
「勘違いやあらへん、あれは良品やった」
「実際、売れ残ったんだろ?」
「そうやけど……」
「なぜそこまで自信満々に良品と断言するんだ?」
「ウチは今までこの目を頼りに商売してきた。間違えたことなんて一度もないんや」
「へぇ~、なら確かめてみるか。俺たちはこれから鍛冶屋へ行くんだけど、そこで品定めしないか?」
「ええやろ、その挑戦うけてたつ」
「ミズキ殿?!」
「ごめん、なんだか放っておけなくて」
またティルダは溜息をこぼした。
「そうだった、私もこうやって助けられたんだ。おせっかい焼きめ……」
ゲームの世界でしか見たことのない鍛冶屋へ来た。
剣や盾が壁にかけられ、マネキンに鎧が着せられている。
鉄さびと油の独特の臭さが嗅覚を刺激した。
ティルダは手頃な大きさのバックラーと短剣を購入した。
小型の盾で腕に固定するタイプだ。
裏側には短剣の鞘が固定できるフックが付いている。
背負うための革ベルト付きだ。
パイスラと呼ばれる装着方法だが、ティルダの慎ましやかな胸では双丘が強調されず残念だ。
おもわず修道服のエリノが装着した姿を想像してしまった。
革のベルトで体を拘束される美しい修道女。
体の起伏が強調され、身じろぐたびにベルトが体へ食い込んでいく。
その姿は煽情的かつ背徳的で、鼻の下が伸びてしまうのは仕方がない。
ティルダはどの盾が良いか俺に聞いてこなかった。
俺が素人なのを把握しているからだろうか。
まあ聞かれても答えられないので助かるのだが、すこし寂しい気もする。
店主に事情を話し協力してもらう。
「ほぅ、面白そうだな、盾も買ってくれたし、他に客もいないからいいぜ」
店主がカウンターに二本の剣を乗せた。
「片方は親方が打った剣、もう片方は見習いが打った剣だ。さあ親方のほうを当ててみろ」
店主もノリノリで、顔が笑っている。
どちらの剣もデザインは同じだ。
違いがあるとすれば刃の加工だろうが素人の俺では判断できない。
「こないな簡単な問題、余裕やで」
アラニスが指をさすと、
「はっはっは、残念ハズレだ」
ティルダと店主が大笑いする。
「嘘や! どっちを選んでもハズレ言うつもりやったやろ」
「疑り深い子だなぁ、仕方ないもう一問出してやるよ」
店主は剣をしまうと、次に兜をカウンターに乗せた。
「これも親方と見習いの作だ。兄ちゃん耳貸しな、正解を先に教えてやるよ」
俺は店主から右が親方の作だと教えてもらう。
右はシンプルなデザインで玄人が好みそうだ。
対して左は装飾が見事で金持ちが家に飾りそうだった。
「こっちや!」
アラニスが選んだのは左だった。
「ハズレだよ」
「嘘やぁぁぁぁ!!」
アラニスは頭を抱えて絶叫した。
「はっはっはっは、嬢ちゃん、大きくなったら商人にだけはなるんじゃないぞ、店が潰れるからな」
子供と間違えられ、さらにダメ出しされる。
不機嫌だったティルダに笑顔が戻っていた。
「ミズキ殿、きっとコイツは武具の鑑定は不得手なんだ、近くに服屋があるから行かないか? そこでも試してみよう」
追い打ちをかける気だ、容赦ないなあ。
でも確かに得手不得手はある。
「アラニス、行ってみよう」
「力になってくれるんか?」
「もちろんだとも」と、声をかけたのはティルダだった。
美人のS属性はシャレにならん、女王様プレイを要求されたらどうしよう……。
俺たちはすぐ近くの服屋へやってきた。
こちらも専門店ではなく、服以外の小物も扱う複合店だった。
「ミズキ殿、服を買うから選んでくれないか。私に似合う服じゃなくて、ミズキ殿の好きな服だぞ。憧れだったのだ、男の選んだ服を着るのがな」
「ティルダは男らしいのに、思考は乙女だよな」
「いいだろっ、さあ早く!」
作業用のワンピースから、ちょっとしたパーティーにも着ていけそうな服まで扱っている。
俺が選んでいる間にティルダは店員に事情を説明していた。
盾を背負っても肌が傷つかないように丈夫な生地のショート丈ジャケット。
動きやすそうな膝丈のキュロットスカート。
この2点を選んでティルダに見せる。
「なるほど。美しさじゃなくて機能性で選んだのか。優しいミズキ殿らしいな」
「納得いかないかな?」
「いいや、その気遣いは嬉しいよ」
「俺に買わせてくれ」
「えへへ~おねだり成功だ」
「これで所持金がゼロになったけどな」
「なら今晩も家に泊まるがいい!」
「まさか計画的?!」
「どうだろうね~」
悪戯っ子のような微笑みで、思わず俺も笑ってしまう。
「なぁ~、イチャつくのはええけど、ウチのことも忘れんといてや」
「わかってる、店には話はつけた。店員さんお願いします」
俺が服の代金を支払っていると勝負が始まった。
店員は二着のワンピースを持っている。
「金額の高い方を選んでね」
色はベージュと薄水色。
どちらもデザインは似たようなものだ。
違うとすれば素材だろう。
光沢がある薄水色のほうが高そうだ。
「こっちや!」とアラニスは迷わずにベージュを選んだ。
「残念、反対よ」
「嘘やぁ……」
ティルダが腹を抱えて笑っている。
次にスカートを二着持ってきた。
「さあ、選んで~」
店員もノリノリだ。
膝丈のスカートと、ロングスカート。
どちらもデザインはシンプルで、装飾での甲乙はつけ難い。
労働者にロングスカートは邪魔だろう、となると購買層は金持ち。
ならば高いのはロングスカートだろうな。
「今度こそ~。こっちやぁ!!!」と、アラニスは膝丈のスカートを選んだ。
「はい残念」
「嘘やぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アラニスは膝から崩れ落ち、その場で四つん這いになる。
「娘さんに商売の才能はないみたいですよ」
どうやら店員はアラニスを俺たちの子供だと誤解しているようだ。
「ですよね~」
ティルダが否定せず話にのっている。
もしかすると娘だと紹介したのは彼女なのか?
しかしおかしい、無知な俺でも正解したぞ。
こうも外すものなのか?
この技量で店のオーナーが務まるとは思えない。
やはり殊寵者じゃないだろうか。
「なあアラニス。粗悪品を見たのは四日前なんだよな」
「そうや~」
「その前はいつ頃商品を見た?」
「十日くらい前やで」
なるほど、神が逃亡してから数日間は商品を見てないんだな。
「たぶんアラニスは殊寵者なんだ。今は神が休憩しているから加護が失われているんだよ」
「なんやて? ウチが殊寵者? そんなことあらへん、神へ祈ったことなんてないで」
「ティルダも同じ症状だったんだ。でも今は別の神に祈りを捧げて力を取り戻した」
「そうだ、ミズキ殿は凄いんだぞ」
「ほんまか~? ウチをたぶらかそうとしてるんとちがう?」
「疑うならいいさ。ミズキ殿、用事は済んだしもう帰ろう」
「ちょっと待ちいな。ほんまにウチは殊寵者なんか?」
「可能性ってだけだ。試してみないと何とも言えないな」
「ミズキはん、どうすればええ? どうすれば試せるんや?」
たぶん信仰心を糧にしても失敗する。
ティルダと同じでアラニスは信者ではない。
信仰心の代用となる強い思いが必要だ。
「アラニスはどうして商売を始めようとしたんだ?」
「そないなこと金が好きやからに決まっとる」
俗物め。
「お金絡みで家族が苦労したとか?」
「ない」
「お金で命が救われたとか?」
「あるわけない。ウチは金色に輝く金貨が好きなんや」
俗物め!!
助けなくていいんじゃないかな?
「なぁなぁどうしたらええ? 今の質問でなにかわかるんか?」
見た目がロリっ子じゃなければ帰っていたな。
俺は商品のメガネを手に取る。
服を選んでいるときに見つけたのだ。
なぜメガネを選んだかと言うと俺はメガネっ子が大好きだからだ。
メガネは女性の可愛さを倍にする。
メガネでご飯三杯は食べられる。
メガネの良さは一晩では語りつくせないぐらい好きなのだ。
まあ、性癖の話はおいておいて。
メガネを対象に【プログラミング】を開始。
APIの入力パラメータは2つ。
装備者の金欲と、神名ジャクリーヌ。
出力は先見の加護。
コンパイル成功、エラーなし!
メガネをアラニスに渡す。
「祈るんだ、商売の神ジャクリーヌに、良品を見極める瞳が欲しいと」
「祈りはタダや、いくらでも祈ったる。ジャクリーヌ様、ウチ金儲けがしたいんや、世界一の金持ちになりたいんや!」
アラニスの体が一瞬だが眩しく金色に輝いた。
どうやら輝きの強さは対価としたエネルギーの強さに比例するらしい。
エリノとティルダは同じくらい。
それに対しアラニスは眩しく感じるほどに光り輝いた。
どんだけ金が好きなんだ、このロリっ子は!
「お客さん! どうしました?」
謎の発光現象に驚いた店員が店の奥から飛んで来た。
「姉ちゃん、もう一度試してくれへんか?」
「えっ、いいですけど……光が……。」
店員は二着の上着を持って来る。
「見える、ウチには見えるで、こっちや!」
「正解よ」
「もっと見せてみい!」
次の問題も正解した。
「ははっ、はははっ……」
アラニスは笑いながら泣き出した。
「どうした?」
「ウチ、自分の実力で商売しとると思うとった。でも神の加護やったんや……。こんなのズルや……。ありえへん……」
アラニスはメガネを店員に渡すと泣きながら走って店を飛び出した。
「予想外の反応だ。私は神の加護だろうと力があれば嬉しいのに」
「プライドだろうな。部下の意見が聞けなかったのも、高いプライドが邪魔をしたんだろう」
「そんなもの生きていくうえで不要なのに。まあいいさ、これでミズキ殿とデートの続きができる」
アラニスへの厳しい態度は嫉妬からだと思うが、ちょっと怖かったぞティルダ。
しかし……。
加護を取り戻すと不幸になる人もいるのか。
安易に手を貸すのは自重したほうが良いのかもしれない。
とろんとした半開きの目が俺を見ている。
出るところは出てないし、引っ込むべきところは引っ込んでいない。
ようするに寸胴の幼児体形だ。
公園で声をかけたら通報案件だろう。
短い三つ編みがよけいに幼さを引き立てていた。
「お客さ~ん、飲みすぎだよ、それくらいにしたら?」と、看板娘が困り顔で声をかける。
「やかましいねん、姉ちゃんこれと同じの持って来てや」
「しょうがないねぇ、最後の一杯だよ。相席のお客さんに絡んだら出て行ってもらうよ」
「そないなことせぇへんわ、早う持ってきてや~」
看板娘は溜息をつくと俺たちに注文を聞き厨房へ酒を取りに行く。
俺とティルダは椅子に座ると自然と目が合った。
『やれやれ』と、口には出さないがお互い同じ気持ちなのだと気がついた。
「兄ちゃんデートか~、うらやましいな~」
泥酔ロリッ子、絡んでくるの早っ!
「ええ、まあね」
「まあねって。恥ずかしくもなく惚気とるで~この兄ちゃん」
きゃっきゃと笑うロリっ子。
俺は酔っ払いが嫌いだ。
酔えば周囲に迷惑をかけると自覚しているのに、それでも酒を飲むのは罪だ。
このロリっ子が男なら別の店に移動しただろう。
「ミズキ殿、無視だ無視」
俺は無言で頷いた。
「そないな寂しいこと言わんとって~な~。こう見えてな~凄い落ち込んどるねん」
ティルダの助言もあり俺は黙っていた。
「うわぁ~兄ちゃんもう尻に敷かれとるで~。情けないの~。ここは『どうしました?』って聴くとこじゃろがい」
これは延々と絡んでくるヤツだ。
しかたない、言いたいことを吐き出せば大人しくなるだろう。
「どうしました?」
「おっ優しいな~。あんなぁ、ウチ商売やっとんねん。こう見えて従業員を十人雇う店のオーナーなんよ。でもな~その店から追い出されてしもうたんよ」
「それはお気の毒様」
「ノリが悪いの~、『なぜですか?』って聞かんかい」
めんどくさっ!!
「なぜですか?」
「あんなぁ、新商品を仕入れたんよ、でもな~、それが粗悪品やったん。商品は売れず店に損害を出してしもうたんや」
「商売していれば失敗の一度や二度はあたりまえだろ」
「そうだよね。でもな~マネージャーがえらい怒って『店は任せられません』って、従業員と一緒になってウチを追い出したんよ」
「それは違法じゃないか?」
「まあな~。訴えて店を取り戻したとしても、マネージャーと従業員が全員辞めてしもうたら、どのみち店は潰れてしまうねん」
「それ、マネージャーが仕組んだ罠だろ。アンタは騙されたんだよ」
なんだろう、ティルダが凄く不機嫌だ、眉間にシワを寄せてロリっ子を睨んでいる。
もしかすると彼女も酔っ払いが嫌いなのか?
「それはない~。粗悪品と指摘して仕入れを止めさせようとしたのはマネージャーやねん。ウチはその助言を無視して強行してしもうたんや」
「部下の諫言を無視したのならオマエが悪い。素直に謝って許してもらえ」と、容赦のないティルダだった。
まさかとは思うが、このロリっ子も殊寵者なのだろうか。
「その失敗はいつ頃したんだ?」
「三日前やけど、それが何や」
あの無責任な神がいなくなったのは、七日ほど前だ、この子は違うな。
「いや、俺の勘違いだった」
「うぅ~~~~」
テーブルに突っ伏して小さなうめき声を上げている。
「ミズキ殿、もう放っておこう」
「ティルダは容赦ないな」
「これからミズキ殿を誘惑するところなのに邪魔するからだ」
「はっきり言うね」
「私を美人と言って口説いたのはアナタが初めてなのだ、希少な存在、逃がさないよ」
「野獣と呼ばれてた話か……、それは性格だと思うぞ」
美女と野獣は有名だが、美女の野獣は珍しいな。
「力こそ全て! と、思って生きて来たから仕方ないじゃないか。こんな男女は嫌いか?」
「いや、話しやすくていいよ」
「そうか! なら猫を被る必要はないな!」
笑顔が眩しい。
俺の言葉で喜んでくれるのは素直に嬉しいな。
「俺が生きてきた中でも一二を争うほどティルダの外見はとても素敵だ。でもそれは外見の話で性格まで知っているわけじゃない、だからティルダの好意にすぐ応えられないよ」
「うむ! ミズキ殿は誠実だな。私としても全て知ったうえで好いてもらうほうが嬉しい」
「だからティルダの家に泊まる件は保留な」
「なぜだ、二人の間には何の障害もないんだぞ。一緒にいればお互いを知る時間が増えるだろ」
「いや、その勢いだよ。いきなり押し倒されそうだし」
「残念なことに鍋の蓋は無いからね。今の力ではミズキ殿を押し倒すのはムリだ。安心して来るといいよ」
「神に誓う?」
「力の裸神モルガーノンに誓って!」
「なら厄介になろう」
「よし! 誘惑成功だ!」
「ハッハッハ、誘惑じゃなくて篭絡だろ」
「結果が同じならどちらでも構わないさ」
俺とティルダは楽しく会話しながら運ばれた料理を食べたのだった。
いつの間にかロリっ子は泣き疲れて寝てしまったようだが会話に夢中で気づかなかった。
翌朝、俺はティルダの家で目覚めた。
ベッドの上にはパジャマ姿のティルダが寝息を立てている。
約束は守られ、彼女とは一線を越えていない。
好かれているとはいえ、易々と女性に手を出すような男ではないのだ、俺は。
まあ、本音を言うとチキンなだけなんだが。
ちなみに、スーツを脱いでいるので変身アバターは解除されている。
本当の姿を見せてもティルダは『ふぅ~ん』と言うだけだった。
教会で姿を変えていることは明かしているが、驚いてくれないのも少し寂しい。
どうやら俺の容姿を好きになったわけではないらしい。
まあアバターはモブ顔なので魅力など皆無なのだが。
「う、ん……」
ティルダが目を覚ました。
「おはよう」
「ミズキ殿、おはようの口づけを」
「ないよ」
「ケチ……」
この世界の女性は殆ど化粧をしない。
唇に紅をさすくらいだ。
それなのにティルダは美しかった。
朝日を浴びて赤い髪が輝いている。
俺は抱きしめてキスをしたい衝動を必死に抑えるのに出精一杯だった。
冷蔵庫がないので食料は保存のきく物しか家に置いていない。
なのでどの家庭も外食が基本だ。
外出の支度を済ませ昨夜の居酒屋へ出かける。
居酒屋の前にロリっ子が寝ていた。
ここで一晩あかしたのか?
誘拐されていないところを見ると案外治安は良いのかもしれない。
「ミズキ殿、無視だ」
「わ、わかってるって」
ロリっ子の横を通り過ぎようとすると、唐突に足を掴まれた。
「み、水を、く、れ……」
ティルダがその腕を蹴り飛ばそうと足を上げる。
「待った待った! 幼女を蹴るのは俺の良心が痛む」
「コイツは見た目ほど若くはないぞ」
「それでも、だ」
ティルダは溜息をつくと、
「ミズキ殿は奥手なのに女好きなんだな」と呟いた。
ロリっ子に肩を貸して居酒屋に入る。
「いらっしゃ――。お客さんもの好きだねぇ、放っときゃいいのに」
「水をくれるか」
「はいよ。空いてる席に座っとくれ」
俺は看板娘に朝食セットを三人分注文した。
夜は酒を飲みながらゆっくりと食事をするのが普通で、朝は飲み込むように食事をして店を出て行く者が大半だ。
俺とティルダはバイトを休むので急ぐ必要はない。
水を飲んで一息ついたロリっ子。
「どこの誰だか知らんけれど、おおきにやで」
「昨夜ここで相席したの覚えてないのか」
「そうなん? 酔って記憶にないわ~」
看板娘が料理を運んで来た。
「はい、お待ちどうさま~」
パン、目玉焼き、ベーコンサラダ、ホットミルクのオーソドックスな朝食セットだ。
俺は三人分の代金を看板娘に渡す。
「これ、兄ちゃんの奢りやろ?」
「気にせず食べてくれ」
「あたりまえや、出されたものは残さず食うで」
少しは元気が出たようだ。
「ミズキ殿の好意、有難く頂け」
「へぇ、兄さんミズキ言うんか。ウチはアラニスや、よろしゅうな。姉さんは?」
「オマエに教える名はない」
「えらい冷たいのう、ウチ何かした?」
「酒で記憶を無くすとは、都合の良い奴だ」
「あ~、それはごっつうすんまへん」
「ふんっ!」
ティルダは不機嫌なままだ。
根に持つタイプらしい、覚えておこう。
「お店を取り戻す案は浮かんだのか?」
「あらぁ、ウチそこまで話たん? 恥ずかしいわぁ。……恥をしのんでお願いや、兄さんも考えてくれへんかなぁ」
「原因は粗悪品を良品と勘違いしたことだろ、ならそこを改善すればいいんじゃないか?」
「勘違いやあらへん、あれは良品やった」
「実際、売れ残ったんだろ?」
「そうやけど……」
「なぜそこまで自信満々に良品と断言するんだ?」
「ウチは今までこの目を頼りに商売してきた。間違えたことなんて一度もないんや」
「へぇ~、なら確かめてみるか。俺たちはこれから鍛冶屋へ行くんだけど、そこで品定めしないか?」
「ええやろ、その挑戦うけてたつ」
「ミズキ殿?!」
「ごめん、なんだか放っておけなくて」
またティルダは溜息をこぼした。
「そうだった、私もこうやって助けられたんだ。おせっかい焼きめ……」
ゲームの世界でしか見たことのない鍛冶屋へ来た。
剣や盾が壁にかけられ、マネキンに鎧が着せられている。
鉄さびと油の独特の臭さが嗅覚を刺激した。
ティルダは手頃な大きさのバックラーと短剣を購入した。
小型の盾で腕に固定するタイプだ。
裏側には短剣の鞘が固定できるフックが付いている。
背負うための革ベルト付きだ。
パイスラと呼ばれる装着方法だが、ティルダの慎ましやかな胸では双丘が強調されず残念だ。
おもわず修道服のエリノが装着した姿を想像してしまった。
革のベルトで体を拘束される美しい修道女。
体の起伏が強調され、身じろぐたびにベルトが体へ食い込んでいく。
その姿は煽情的かつ背徳的で、鼻の下が伸びてしまうのは仕方がない。
ティルダはどの盾が良いか俺に聞いてこなかった。
俺が素人なのを把握しているからだろうか。
まあ聞かれても答えられないので助かるのだが、すこし寂しい気もする。
店主に事情を話し協力してもらう。
「ほぅ、面白そうだな、盾も買ってくれたし、他に客もいないからいいぜ」
店主がカウンターに二本の剣を乗せた。
「片方は親方が打った剣、もう片方は見習いが打った剣だ。さあ親方のほうを当ててみろ」
店主もノリノリで、顔が笑っている。
どちらの剣もデザインは同じだ。
違いがあるとすれば刃の加工だろうが素人の俺では判断できない。
「こないな簡単な問題、余裕やで」
アラニスが指をさすと、
「はっはっは、残念ハズレだ」
ティルダと店主が大笑いする。
「嘘や! どっちを選んでもハズレ言うつもりやったやろ」
「疑り深い子だなぁ、仕方ないもう一問出してやるよ」
店主は剣をしまうと、次に兜をカウンターに乗せた。
「これも親方と見習いの作だ。兄ちゃん耳貸しな、正解を先に教えてやるよ」
俺は店主から右が親方の作だと教えてもらう。
右はシンプルなデザインで玄人が好みそうだ。
対して左は装飾が見事で金持ちが家に飾りそうだった。
「こっちや!」
アラニスが選んだのは左だった。
「ハズレだよ」
「嘘やぁぁぁぁ!!」
アラニスは頭を抱えて絶叫した。
「はっはっはっは、嬢ちゃん、大きくなったら商人にだけはなるんじゃないぞ、店が潰れるからな」
子供と間違えられ、さらにダメ出しされる。
不機嫌だったティルダに笑顔が戻っていた。
「ミズキ殿、きっとコイツは武具の鑑定は不得手なんだ、近くに服屋があるから行かないか? そこでも試してみよう」
追い打ちをかける気だ、容赦ないなあ。
でも確かに得手不得手はある。
「アラニス、行ってみよう」
「力になってくれるんか?」
「もちろんだとも」と、声をかけたのはティルダだった。
美人のS属性はシャレにならん、女王様プレイを要求されたらどうしよう……。
俺たちはすぐ近くの服屋へやってきた。
こちらも専門店ではなく、服以外の小物も扱う複合店だった。
「ミズキ殿、服を買うから選んでくれないか。私に似合う服じゃなくて、ミズキ殿の好きな服だぞ。憧れだったのだ、男の選んだ服を着るのがな」
「ティルダは男らしいのに、思考は乙女だよな」
「いいだろっ、さあ早く!」
作業用のワンピースから、ちょっとしたパーティーにも着ていけそうな服まで扱っている。
俺が選んでいる間にティルダは店員に事情を説明していた。
盾を背負っても肌が傷つかないように丈夫な生地のショート丈ジャケット。
動きやすそうな膝丈のキュロットスカート。
この2点を選んでティルダに見せる。
「なるほど。美しさじゃなくて機能性で選んだのか。優しいミズキ殿らしいな」
「納得いかないかな?」
「いいや、その気遣いは嬉しいよ」
「俺に買わせてくれ」
「えへへ~おねだり成功だ」
「これで所持金がゼロになったけどな」
「なら今晩も家に泊まるがいい!」
「まさか計画的?!」
「どうだろうね~」
悪戯っ子のような微笑みで、思わず俺も笑ってしまう。
「なぁ~、イチャつくのはええけど、ウチのことも忘れんといてや」
「わかってる、店には話はつけた。店員さんお願いします」
俺が服の代金を支払っていると勝負が始まった。
店員は二着のワンピースを持っている。
「金額の高い方を選んでね」
色はベージュと薄水色。
どちらもデザインは似たようなものだ。
違うとすれば素材だろう。
光沢がある薄水色のほうが高そうだ。
「こっちや!」とアラニスは迷わずにベージュを選んだ。
「残念、反対よ」
「嘘やぁ……」
ティルダが腹を抱えて笑っている。
次にスカートを二着持ってきた。
「さあ、選んで~」
店員もノリノリだ。
膝丈のスカートと、ロングスカート。
どちらもデザインはシンプルで、装飾での甲乙はつけ難い。
労働者にロングスカートは邪魔だろう、となると購買層は金持ち。
ならば高いのはロングスカートだろうな。
「今度こそ~。こっちやぁ!!!」と、アラニスは膝丈のスカートを選んだ。
「はい残念」
「嘘やぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アラニスは膝から崩れ落ち、その場で四つん這いになる。
「娘さんに商売の才能はないみたいですよ」
どうやら店員はアラニスを俺たちの子供だと誤解しているようだ。
「ですよね~」
ティルダが否定せず話にのっている。
もしかすると娘だと紹介したのは彼女なのか?
しかしおかしい、無知な俺でも正解したぞ。
こうも外すものなのか?
この技量で店のオーナーが務まるとは思えない。
やはり殊寵者じゃないだろうか。
「なあアラニス。粗悪品を見たのは四日前なんだよな」
「そうや~」
「その前はいつ頃商品を見た?」
「十日くらい前やで」
なるほど、神が逃亡してから数日間は商品を見てないんだな。
「たぶんアラニスは殊寵者なんだ。今は神が休憩しているから加護が失われているんだよ」
「なんやて? ウチが殊寵者? そんなことあらへん、神へ祈ったことなんてないで」
「ティルダも同じ症状だったんだ。でも今は別の神に祈りを捧げて力を取り戻した」
「そうだ、ミズキ殿は凄いんだぞ」
「ほんまか~? ウチをたぶらかそうとしてるんとちがう?」
「疑うならいいさ。ミズキ殿、用事は済んだしもう帰ろう」
「ちょっと待ちいな。ほんまにウチは殊寵者なんか?」
「可能性ってだけだ。試してみないと何とも言えないな」
「ミズキはん、どうすればええ? どうすれば試せるんや?」
たぶん信仰心を糧にしても失敗する。
ティルダと同じでアラニスは信者ではない。
信仰心の代用となる強い思いが必要だ。
「アラニスはどうして商売を始めようとしたんだ?」
「そないなこと金が好きやからに決まっとる」
俗物め。
「お金絡みで家族が苦労したとか?」
「ない」
「お金で命が救われたとか?」
「あるわけない。ウチは金色に輝く金貨が好きなんや」
俗物め!!
助けなくていいんじゃないかな?
「なぁなぁどうしたらええ? 今の質問でなにかわかるんか?」
見た目がロリっ子じゃなければ帰っていたな。
俺は商品のメガネを手に取る。
服を選んでいるときに見つけたのだ。
なぜメガネを選んだかと言うと俺はメガネっ子が大好きだからだ。
メガネは女性の可愛さを倍にする。
メガネでご飯三杯は食べられる。
メガネの良さは一晩では語りつくせないぐらい好きなのだ。
まあ、性癖の話はおいておいて。
メガネを対象に【プログラミング】を開始。
APIの入力パラメータは2つ。
装備者の金欲と、神名ジャクリーヌ。
出力は先見の加護。
コンパイル成功、エラーなし!
メガネをアラニスに渡す。
「祈るんだ、商売の神ジャクリーヌに、良品を見極める瞳が欲しいと」
「祈りはタダや、いくらでも祈ったる。ジャクリーヌ様、ウチ金儲けがしたいんや、世界一の金持ちになりたいんや!」
アラニスの体が一瞬だが眩しく金色に輝いた。
どうやら輝きの強さは対価としたエネルギーの強さに比例するらしい。
エリノとティルダは同じくらい。
それに対しアラニスは眩しく感じるほどに光り輝いた。
どんだけ金が好きなんだ、このロリっ子は!
「お客さん! どうしました?」
謎の発光現象に驚いた店員が店の奥から飛んで来た。
「姉ちゃん、もう一度試してくれへんか?」
「えっ、いいですけど……光が……。」
店員は二着の上着を持って来る。
「見える、ウチには見えるで、こっちや!」
「正解よ」
「もっと見せてみい!」
次の問題も正解した。
「ははっ、はははっ……」
アラニスは笑いながら泣き出した。
「どうした?」
「ウチ、自分の実力で商売しとると思うとった。でも神の加護やったんや……。こんなのズルや……。ありえへん……」
アラニスはメガネを店員に渡すと泣きながら走って店を飛び出した。
「予想外の反応だ。私は神の加護だろうと力があれば嬉しいのに」
「プライドだろうな。部下の意見が聞けなかったのも、高いプライドが邪魔をしたんだろう」
「そんなもの生きていくうえで不要なのに。まあいいさ、これでミズキ殿とデートの続きができる」
アラニスへの厳しい態度は嫉妬からだと思うが、ちょっと怖かったぞティルダ。
しかし……。
加護を取り戻すと不幸になる人もいるのか。
安易に手を貸すのは自重したほうが良いのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる