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第48章:俺は誤解を受けやすいタイプなのだろうか?(不服)②
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「……ごめんなさい、馬鹿なことを言ったわ。今更自己弁護はみっともないわね。どう取り繕っても、あなた達をだまして危険な目に合わせてしまったことに変わりはないのだから。自分でも、卑劣な真似だったと思うわ」
奥杜の殊勝な声が、俺の頭に昇った血を幾分か下げる作用を果たした。
ここで激しても仕方がない、と自分に言い聞かせる。何も奥杜の責任を追求するために、電話をかけたわけではないのだ。
「今聞いたことは、俺の胸にしまっておく。だからお前も、光琉 には黙っておいてくれ。あのアホが知ったら面倒なことになるだろうからな」
俺の申し出は、奥杜にとって相当意外なものだったらしい。
「わ、私を許すというの!? だって、私のせいで光琉さんは……」
「せっかく妹に一緒にレトロゲームをしてくれる友人ができたのに、それを失わせてしまうのは兄として忍びないんだよ。あのアホは生意気なことばかり言ってるけど、奥杜とゲーム仲間になれて内心では相当喜んでるはずだからな」
これは俺の本心である。もっとも、もし光琉が近くでこの発言を聞いていたら、顔を真っ赤にして否定するだろうが。
「ただし、二度と今日みたいな真似はしないでくれ。もしまた俺に黙って光琉を危険な目に合わせるようなことをしたら、例え前世で相棒だったお前でも許さない。いいな?」
「肝に銘じておくわ……ありがとう、天代くん」
奥杜の声の間に、鼻をすするような音が混ざった。ひょっとしたら涙ぐんでいるのかもしれない。冷徹な風紀委員としての一面しかしらないクラスの連中がこれほど感傷的な彼女を見たら、さぞ驚くことだろう。
「さて、その上で相談なんだが……昼間話していた"退魔"の組織、だったか。そこに俺と光琉を紹介してくれないか」
「え、いいの!?」
奥杜にしてみれば、企みが露見したにもかかわらず当初の目的を達成できるわけだ。俺としても掌の上で踊らされているようで面白くない気持ちはあるが、今日1日の体験を振り返ればそうせざるを得ないだろう。
「"光の聖女"として覚醒した今、光琉の魔力が魔物たちを引きつけてしまうのは間違いないようだ。であれば、これからもいつ今日のような襲撃を受けるかわからない。そうだろ?」
「そうね……特に今朝の"瞬燐"がいけなかったわね。覚醒してすぐ、あんな禁術まがいの魔法を無造作に使ってしまうんだもの。あれで光琉さんの魔力の波動が拡散されて、極上の獲物がいることを周囲の魔物たちに喧伝してしまったようなものよ。実際、私もあの波動を感じ取ってあなた達の存在に気づいたわけだしね」
「や、やっぱりそうか」
たった一度の遅刻を回避するために随分高いツケを払っちまったもんだな、クソ!
「……ともかく、どの道今後魔物との戦いが避けられないとしたら、俺と光琉の2人で対処するより専門の組織に援助してもらった方が安心だ。もちろんこちらも、見返りとして組織の活動にできる限り協力させてもらう。正式に所属する、とまではまだ断言できないけどな。光琉には後で俺から伝えておく。あいつにはまだ組織のことも何も話してないが、多分この考えに反対はしないはずだ」
むしろ「魔物退治? 面白そう!」と遊び半分で乗り気になる姿が目に見えるようだ。それはそれで、喜んでいいのか疑問だが……
「そういうことであれば、もちろん私に異存はないわ。私たちの組織のリーダーにも伝えておく。近いうちに、一度直接会ってリーダーと話をしてもらえるかしら?」
「わかった。会う日時は先方の都合にまかせる。俺の予定は大体空いてるから」
現世の俺は部活にも入っていないし付き合っている彼女もいない、至って暇な陰キャ野郎である。休みの日も妹と◯ーファミで遊ぶくらいしかやることがない……何か問題があるか?(震え声)
話がとんとん拍子に進み、俺の目的も達することができた。”退魔”組織の全貌が見えない以上多少の不安は残るが、奥杜が所属しているというのだからそういかがわしい団体でもあるまい。その程度には、前世の相棒を信用している。
夜も遅いしそろそろ通話を終えようかと考えていると、電話の向こうから「ふふっ」と風紀委員の笑い声が聞こえてきた。
「ん、どうした?」
「いえ、あなたが私に対して怒ったのも、それにもかかわらず私の頼みを聞いてくれたのも、全部光琉さんのためなんだと思ったら何だかおかしくなってしまったのよ。本当に大事にされてるのね、光琉さん。うらやましいわ」
「……まあ、あんなアホでも俺にとってはたったひとりの妹だからな」
「はいはい、そういうことにしといてあげます」
「おい、どういう意味だそれは」
俺の非難の声を、奥杜は意に介さなかった。
「今日はもう遅いから、そろそろ切るわ。おやすみなさい、また明日学校でね。あ、寝る前にちゃんと宿題終わらせなきゃダメよ」
一方的にそう告げると、さっさと電話を切ってしまうのだった。
……何だか奥杜は思い違いをしている気がする。それも俺にとって、大変不名誉な思い違いだ。一体なぜ、そんな風に考えてしまうのだろう。俺は誤解されやすい体質なのかなあ、云々。
まあ、誤解は明日にでも解けばいいだろう。今日の所は、俺ももう寝ることとしようか。本日最後の要件を終えて肩の荷が下りたせいか、急激に睡魔がおそってきた。奥杜からは宿題をするように釘を刺されていたが、どうも履行できそうにない。
長い1日だった。色々あったことは確かだが、それにしても異様に長く感じた。まるで朝から1年以上も経ってしまったような気さえする。まったく、作者の遅筆にも困ったもので……いや、なんでもない。
意識が混沌としてゆく。俺はシャワーも浴びず着の身着のままでベッドの上に倒れこむと、枕に顔を突っ伏して瞬く間に眠りの沼へと沈んでいった。
せめて夢の中でくらいは、妹に大人しくしていてほしいものだ。そんなことを考えながら。
奥杜の殊勝な声が、俺の頭に昇った血を幾分か下げる作用を果たした。
ここで激しても仕方がない、と自分に言い聞かせる。何も奥杜の責任を追求するために、電話をかけたわけではないのだ。
「今聞いたことは、俺の胸にしまっておく。だからお前も、光琉 には黙っておいてくれ。あのアホが知ったら面倒なことになるだろうからな」
俺の申し出は、奥杜にとって相当意外なものだったらしい。
「わ、私を許すというの!? だって、私のせいで光琉さんは……」
「せっかく妹に一緒にレトロゲームをしてくれる友人ができたのに、それを失わせてしまうのは兄として忍びないんだよ。あのアホは生意気なことばかり言ってるけど、奥杜とゲーム仲間になれて内心では相当喜んでるはずだからな」
これは俺の本心である。もっとも、もし光琉が近くでこの発言を聞いていたら、顔を真っ赤にして否定するだろうが。
「ただし、二度と今日みたいな真似はしないでくれ。もしまた俺に黙って光琉を危険な目に合わせるようなことをしたら、例え前世で相棒だったお前でも許さない。いいな?」
「肝に銘じておくわ……ありがとう、天代くん」
奥杜の声の間に、鼻をすするような音が混ざった。ひょっとしたら涙ぐんでいるのかもしれない。冷徹な風紀委員としての一面しかしらないクラスの連中がこれほど感傷的な彼女を見たら、さぞ驚くことだろう。
「さて、その上で相談なんだが……昼間話していた"退魔"の組織、だったか。そこに俺と光琉を紹介してくれないか」
「え、いいの!?」
奥杜にしてみれば、企みが露見したにもかかわらず当初の目的を達成できるわけだ。俺としても掌の上で踊らされているようで面白くない気持ちはあるが、今日1日の体験を振り返ればそうせざるを得ないだろう。
「"光の聖女"として覚醒した今、光琉の魔力が魔物たちを引きつけてしまうのは間違いないようだ。であれば、これからもいつ今日のような襲撃を受けるかわからない。そうだろ?」
「そうね……特に今朝の"瞬燐"がいけなかったわね。覚醒してすぐ、あんな禁術まがいの魔法を無造作に使ってしまうんだもの。あれで光琉さんの魔力の波動が拡散されて、極上の獲物がいることを周囲の魔物たちに喧伝してしまったようなものよ。実際、私もあの波動を感じ取ってあなた達の存在に気づいたわけだしね」
「や、やっぱりそうか」
たった一度の遅刻を回避するために随分高いツケを払っちまったもんだな、クソ!
「……ともかく、どの道今後魔物との戦いが避けられないとしたら、俺と光琉の2人で対処するより専門の組織に援助してもらった方が安心だ。もちろんこちらも、見返りとして組織の活動にできる限り協力させてもらう。正式に所属する、とまではまだ断言できないけどな。光琉には後で俺から伝えておく。あいつにはまだ組織のことも何も話してないが、多分この考えに反対はしないはずだ」
むしろ「魔物退治? 面白そう!」と遊び半分で乗り気になる姿が目に見えるようだ。それはそれで、喜んでいいのか疑問だが……
「そういうことであれば、もちろん私に異存はないわ。私たちの組織のリーダーにも伝えておく。近いうちに、一度直接会ってリーダーと話をしてもらえるかしら?」
「わかった。会う日時は先方の都合にまかせる。俺の予定は大体空いてるから」
現世の俺は部活にも入っていないし付き合っている彼女もいない、至って暇な陰キャ野郎である。休みの日も妹と◯ーファミで遊ぶくらいしかやることがない……何か問題があるか?(震え声)
話がとんとん拍子に進み、俺の目的も達することができた。”退魔”組織の全貌が見えない以上多少の不安は残るが、奥杜が所属しているというのだからそういかがわしい団体でもあるまい。その程度には、前世の相棒を信用している。
夜も遅いしそろそろ通話を終えようかと考えていると、電話の向こうから「ふふっ」と風紀委員の笑い声が聞こえてきた。
「ん、どうした?」
「いえ、あなたが私に対して怒ったのも、それにもかかわらず私の頼みを聞いてくれたのも、全部光琉さんのためなんだと思ったら何だかおかしくなってしまったのよ。本当に大事にされてるのね、光琉さん。うらやましいわ」
「……まあ、あんなアホでも俺にとってはたったひとりの妹だからな」
「はいはい、そういうことにしといてあげます」
「おい、どういう意味だそれは」
俺の非難の声を、奥杜は意に介さなかった。
「今日はもう遅いから、そろそろ切るわ。おやすみなさい、また明日学校でね。あ、寝る前にちゃんと宿題終わらせなきゃダメよ」
一方的にそう告げると、さっさと電話を切ってしまうのだった。
……何だか奥杜は思い違いをしている気がする。それも俺にとって、大変不名誉な思い違いだ。一体なぜ、そんな風に考えてしまうのだろう。俺は誤解されやすい体質なのかなあ、云々。
まあ、誤解は明日にでも解けばいいだろう。今日の所は、俺ももう寝ることとしようか。本日最後の要件を終えて肩の荷が下りたせいか、急激に睡魔がおそってきた。奥杜からは宿題をするように釘を刺されていたが、どうも履行できそうにない。
長い1日だった。色々あったことは確かだが、それにしても異様に長く感じた。まるで朝から1年以上も経ってしまったような気さえする。まったく、作者の遅筆にも困ったもので……いや、なんでもない。
意識が混沌としてゆく。俺はシャワーも浴びず着の身着のままでベッドの上に倒れこむと、枕に顔を突っ伏して瞬く間に眠りの沼へと沈んでいった。
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