29 / 32
第4章:アルブ戦争
29, お礼
しおりを挟む
サリーナ・マハリン郊外にある林の近くの小さな家。
ぎぃ、と木の軋む音で扉が開く。
「……この家。」
「お礼、だと言っていましたよ。」
クシスがそう言った。
「……いつから、作ってたんだ?」
「憶えてないけど、多分2年くらい前だったと思います。」
「フェレスが?」
「設計は。」
「そっか。」
見上げる。それは可愛らしい家だった。彼が遺した、『お礼』だった。
「ありがとう。」
「……兄様に言ってください。」
「そうだな。」
クシスを見る。彼はまだ複雑そうな表情をしてる。
「スザンナがいつも邸宅に泊まれっていうのを頑なに拒んでいたから造ったんでしょうね。」
「そうだな。」
ははっと笑った。
「……あれ。」
暖炉の所にあるレリーフに光る物を見つける。近寄って見る。
「兄様は。」
クシスが切り出す。
「ん?」
「兄様は、婚礼の話、片っ端から断ってました。」
「……へぇ。」
「それ以外は全て父上や母上の言う通りにしてたんですけどね。」
「そっか。」
笑った。レリーフに入っていたフェレスの成人の証、指輪をつっと指でなでる。
「ねぇ、クシス。」
「ん?」
「私、ここにずっと住んでもいいかな。」
「……もちろん。これはスザンナのものだよ。」
「うん。ありがとう。」
指輪を握りしめ、目を閉じた。
ぎぃ、と木の軋む音で扉が開く。
「……この家。」
「お礼、だと言っていましたよ。」
クシスがそう言った。
「……いつから、作ってたんだ?」
「憶えてないけど、多分2年くらい前だったと思います。」
「フェレスが?」
「設計は。」
「そっか。」
見上げる。それは可愛らしい家だった。彼が遺した、『お礼』だった。
「ありがとう。」
「……兄様に言ってください。」
「そうだな。」
クシスを見る。彼はまだ複雑そうな表情をしてる。
「スザンナがいつも邸宅に泊まれっていうのを頑なに拒んでいたから造ったんでしょうね。」
「そうだな。」
ははっと笑った。
「……あれ。」
暖炉の所にあるレリーフに光る物を見つける。近寄って見る。
「兄様は。」
クシスが切り出す。
「ん?」
「兄様は、婚礼の話、片っ端から断ってました。」
「……へぇ。」
「それ以外は全て父上や母上の言う通りにしてたんですけどね。」
「そっか。」
笑った。レリーフに入っていたフェレスの成人の証、指輪をつっと指でなでる。
「ねぇ、クシス。」
「ん?」
「私、ここにずっと住んでもいいかな。」
「……もちろん。これはスザンナのものだよ。」
「うん。ありがとう。」
指輪を握りしめ、目を閉じた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる