楽に生きたい平民なのに一癖ある伯爵どころかその他大勢にも気に入られてしまい困っています

花田トギ

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秘密の関係

扉の先は

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「これだけは仕方ないよねぇ」
 よいしょ、とアデリアが運ぶのは洗濯婦から受け取った洗濯物だ。スチュアートと伯爵、そしてアデリアの洗濯物が3つの袋に分けて入れられている。
 アデリアが伯爵の相手をしている間、他の人がアデリアが行っていた業務をこなしてくれるらしいが、自分の汚れ物を運ばせるのは心苦しかった。時にスチュアートがその業務をこなす事もあるなんて言われると余計に。
 アデリアだって一応羞恥心というか、乙女心はあるのである。
「重そうだな、手伝おうかアディ」
「ーーザックス!」
「あでっ?!」
 荷物を持ってくれたザックスを、アデリアはいきなり殴った。予想だにしていない攻撃に、ザックスが目を丸くした。
「なにすんだ!?急に?!」
「あのねえザックス!手癖が悪いのは知ってるけど!バレちゃダメでしょバレちゃ?!」
「え?バレたのか?」
 何やら考えこみながら、ザックスは屋敷の中へと荷物を運んでくれた。
 屋敷の中にはいくつかの区画がある。アデリアが最初に通された大広間からはラスール伯爵の部屋がある区画へはいけない作りになっている。変身した伯爵はなるべく自室からは出ないが、もしもの事故を防ぐためらしい。
 そことは違う、通路がある。
 伯爵の部屋、アデリアの自室、書斎、あとはいくつかの入ったことの無い部屋のある区画だ。そこに入れるのは伯爵本人と、スチュアート、そしてアデリアのみとされていた。そのため、その扉には鍵が掛かっていたのだけれど……。
「お、こっちまで運んじゃうからな」
「ちょ、ちょっとそっち入れたってバレたらダメなんだってば!」
「運んだら出てやるからさ」
 ものぐさなアデリアが毎回鍵をかけている訳が無い。実家は鍵を掛ける文化すらまともになかったのだから仕方がないのかもしれないし、何よりこの扉を出入りするのは三人のみ。その他の使用人たちはそもそも近づきもしないのだ。
「こらこらこら!」
 と、ザックスの手を掴んだ時、二人の耳に足音が聞こえてきた。瞬時にアデリアの表情が変わる。
「――こっちだ!」
 耳元でそう告げ、ザックスは近くにあったドアの扉をあける。静かに閉め、アデリアを胸に抱いて息を顰めた。頬にザックスの胸筋があたり、その奥に力強い鼓動が聞こえる。喧嘩にあけくれ、鍛えられた筋肉に抱きしめられるのは安心感があった。ここのところ、小さなシュエットに慣れていたせいで、男性的な体にドキドキしてしまう。
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