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鬼頭先生まで……?!

どうする?!俺!?

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 片づけがもうすぐ終わろうかという頃になっても、俺は頭を悩ませていた。答えはNOで決まっているのだが、それを紀藤さんにどう伝えようかと思うと難しすぎる。
「渚くん、断るんだよね?」
 期待と不安を帯びた瞳で、穂高に覗き込まれる。
「う、うん。そんな、恥ずかしい事さすがに上司には無理だよ」
「だよね、だよね」
 ふいっと顔をあちらに向けて、穂高くんが再び片づけに手をつけ始めた。
「本当は間宮さんやりたいんですよ」
 逆側の耳元で囁かれて、思わず体を竦めた。
「自分だって、最近原稿で忙しいからって渚さんと出来てないですし……」
「そ、そんな目で見られると……」
「そんな目とは?」
 イケメンが熱を孕んだ瞳で、情欲をぶつけてくるような目。思わずここで抱いてって言ってしまいそうな目。だなんて言えるはずがない。
「そんな目とはそんな目です!イケメンなんだから、言う事聞いちゃいそうになります!」
 俺は玲央さんから目を逸らした。
 と、目の前に紀藤さんが立っていた。
「迎えに来たよ、楢本くん」
 ラフな出で立ちなのに洗練されたイケオジのオーラが眩しかった。
「あ、あの……そのお話しなんですが……」
「おやおや、金額が決まらなかったかな?じゃあちょっと話そうか。少し借りるね、終わったら連絡して」
 穂高くんにそう指示すると、紀藤さんは俺の腰に手を回し、歩き出した。
「間宮さん……鬼頭さんってお子さんいるんですよね?」
 自然なエスコートを目の当たりにした、素直な問いかけだ。
「ああ、育休取ってたからね」
「……結婚してるんですよね?」
「育休取るって事はしてるだろ……?指輪してるし」
「結婚の相手ってどんな方なんですか?」
「そういうプライベートな事は知らないけど……」
 二人の会話を、作業しながら聞いていたうずら先生が近づいてきた。
「そういえば鬼頭さんって、しばらくパートナーさんとお子さんで実家帰ってるって言ってましたよ。あとこれは噂なんですけど……」
 うずら先生は声を落として言葉を続けた。
「パートナーさんとお互い浮気はオッケーという協定があるとかないとか……」
 言葉を聞いた間宮はすぐに紀藤へと連絡を入れたが、既読にならなかった。
「そんな、いや、まさか上司が……」
「でも憧れの神作家であり、尊敬する上司に頼み込まれたら……」
 二人の顔はどんどん青くなっていく。
「しかも、紀藤さんイケオジだしな」
「渚さん、イケメンに弱いですもんね」
 二人は急いで片づけを済ませると、渚達を探しはじめたのだった。
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