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静かな家

黒髪の男

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「あ、お前たちの髪が綺麗な金色なのは、蜂蜜を髪に塗っているからか?」
「――本気で言っているのか?」
「……いや、冷たい目で見るなよ。ちょっと空気を変えようかなって思っただけだよ」
  ため息を深く吐いたスドゥルに少し肩を落としたタシュだったが、歩みを進める度にきゃあきゃあと女たちから歓声があがる事でメンタルを持ち直した。気分があがると、元来の女たらしの一面からか、一人一人に手を振ったりキスを投げたりとサービス三昧だ。それを受けた女性たちは頬を赤らめたり、俯いたりとの反応を返してくれて、至極気分が良かった。
「さっきの続きだが、前にここに流れ着いた黒髪の男は幸せに暮らしたのか?」
「数年で病には倒れたが、最後は愛した人に抱かれながら亡くなったと聞いている」
「それはこの国の人と結ばれたという事か?」
「ああ、珍しいが子も成した」
「そりゃあ良いな。愛した人に愛されてって幸せじゃないか。理想の一つの死に方だよなあ。……って何だよその目」
 立ち留まったスドゥルが首を傾けながらじとりと見てきたので、肩を小突いてみる。
「いや、お前が意外とロマンチストだなと驚いていた」
 小突いた辺りを静かに払うと、すぐ元の無表情に戻ってしまった。
「なんだよそりゃ。男はロマンチストだろうが。そういえばその男の親はどうしたんだろうな?俺も家を出てかなり立つがそろそろ連絡の一つでも――」
「お前、本気で言ってるのか?」
「当たり前だろう?家を出た身とはいえ、たまには連絡くらいするのが子の務めだ」
 どん、と胸を叩くとスドゥルの眉間の皺が深くなった。
「この国への入国はかなり難しい事は分かっているな?この国へは入るのも出るのも制限されているって事だ」
「ああ、分かってる。だから俺みたいなのはイレギュラーで珍しい……ん?と言う事は、つまり、もしかして……?」
「もしかしても何も、その男はこの国に入ったら最後、死んでも出る事は出来なかったんだよ」
「冗談だよな?」
「冗談は好かん」
「げ……いやでも交易してるんなら外に出るルートあるんだろ?」
「あるんだろうが、選ばれた一部にしか知らされていない」
「え、旅行とかしないの?ちょっと他の国に行ってみたいなーとか思ったりさあ」
「国民は平和で飢えの無い安全な巣から出たがらない」
「……なあ、俺ってどうなるの?」
 ここに来てコトの重大さに気付いたらしい。大きなため息をつく為にスドゥルが息を吸い込んだ。その時だった
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