褐色の旅人、白の国へとたどり着く

可哀そうなトゥフタ

交わい

　ゆっくりとした動きで腹の上に跨ってくると、タシュの手を取り、トゥフタの胸元へと導いた。手のひらから、トクトクトクと心の臓が駆け足のように動いているのが伝わってきた。
　指先だけを動かすと、薄布の上からトゥフタの胸の突起を弾いてみると、ぴくりと体を硬くするのが分かった。
「――悦びというのを、私が知りたいと言ったらタシュはどうする？」
「気を付けろ、そんな言い方されて、止まれる男はいないぞ」
「止まれと言っていないだろう」
「な……っ！体は辛くないのか……？」
「これくらいの事慣れている。何より焦っているお前を見るのが楽しい。手を出すなら未だと思うが？」
「色々聞きたいことがつもり積もってるんだぞこっちは……！しかし、しかし…！」
　己の中の何かと葛藤するように拳を握りしめる。
「どうした、口だけか？」
「煽るんじゃないっ――。はあ、分かったよ。……すまないが男相手は初めてだが、優しくする。痛みがあれば言ってくれ」
　冷静にそう告げると、腹の上にトゥフタを乗せたまま、上半身を起した。トゥフタの顔にかかった金糸の髪を耳にかけてやり、その耳を撫でた。
「――ああ、分かった」
　耳から頬へと撫でるところを下ろしていく。タシュの褐色の指が白い肌へとコントラストを描くように浸食していく。
　指は、トゥフタの唇を撫で始めた。
「くすぐったいぞ、タシュ……」
　口を開いたトゥフタの顎を持ち上げると、唇を合わせた。トゥフタの体が緊張しているのが伝わってきた。触れるだけの優しい口づけを何度か交わし、頭や背中を落ち着けるように撫で続けると、次第に硬くなった体が解れていった。
　緩い胸元をずらし、肩を露わにする。髪を片方へ流すと、唇をゆっくりと首筋へ這わせる。
「ここは、元々硬いのか？」
「――そんな事考えたこともない」
　はだけた胸元には、小さな突起が隆起している。柔らかな唇を、突起目指して下ろしていく。
「まだるっこしいのだな」
　ゆるやかすぎる動きに、少々飽きの来たようなトゥフタの声に、タシュは少しむっとして返す。
「前戯は受け入れてくれる相手への敬意だよ」
「そういう……ものか」
「俺はそう思ってる」
　胸の突起の周囲に舌を這わせ、円を描く。その円が徐々に小さくなっていくにつれ、トゥフタの体にも熱が篭っていく。じれったいような、もどかしさで奥歯を噛み締める。
「……っは――」
　やっと硬くなった突起を舌で弾けば、トゥフタの体がピクリと跳ねた。反らす腰に手を回し、引き寄せる。
「こらこら、離れるな。舐めにくくなるだろう」
「そんな風にされたら、に、逃げたくもなっ、あ……っ体が、痺れるようだっ」
「良い反応じゃないか、そそるな」
「ば、馬鹿を……っ！ん、ぁっ、ま、待って」
「どうした？激しい方が気持ち良いか？」
「ち、ちがっ――あぁっ！」
　タシュが歯を立てて甘く噛むと、トゥフタの声のトーンが上がり、全身をタシュに預けてきた。
「すごいな、ここだけでそんなになるとは」
「ち、違う……いつもはこんなんじゃ……」
「いつもはどんな風になるんだ？」
　なるたけ優しく問うたつもりだったが、トゥフタの顔が不安げに歪むのが見えて少し慌てて抱きしめた。
「言いたくないのなら良いんだ」