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極彩色
母と娘
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「クロレバ様?!」
後ろから兵の戸惑う声が聞こえる。
嬉しそうなウユチュ。しかしクロレバはかたい表情のまま手を引き、体を引き上げる。
「きゃっ?!」
腰に巻かれた布が引かれ、体を上下に引っ張られてしまう。
「私は女王クロレバ。この国を守れるのは私だけ。私は私欲の為に生きる事はない。あなたとは違う」
ウユチュの顔を見据え、兵に聞こえるように落ちついた響きで決別を告げた。
「そう、そうよね……。あなたがそれを選ぶのなら、私はあなたを尊重したい。どうか元気でいてね。私の娘、クロレバ。あなたには届かなくとも、私はあなたを愛し続ける」
クロレバは両手でウユチュの手を引っ張りあげ、その形の良い耳に顔を近づけた。
「どうか長く生きてください……母上」
「クロレバっ」
目を見開いた母の体を思いっきり穴の中へと押し込んだ。スドゥルも向こうから引っ張っていたのだろう、すぐにウユチュの姿は見えなくなった。
戸惑う兵の方を向くと、クロレバは姿勢を正した。
「案ずるな。元女王とその息子が出たのみ。我の真の目的は、夫であるトゥフタだ。それさえ手に入ればよい。あやつさえおれば、子を紡ぎ続けられるのだから」
冷徹に言い放つ女王に、兵は膝を付き頭を垂れた。
後ろから兵の戸惑う声が聞こえる。
嬉しそうなウユチュ。しかしクロレバはかたい表情のまま手を引き、体を引き上げる。
「きゃっ?!」
腰に巻かれた布が引かれ、体を上下に引っ張られてしまう。
「私は女王クロレバ。この国を守れるのは私だけ。私は私欲の為に生きる事はない。あなたとは違う」
ウユチュの顔を見据え、兵に聞こえるように落ちついた響きで決別を告げた。
「そう、そうよね……。あなたがそれを選ぶのなら、私はあなたを尊重したい。どうか元気でいてね。私の娘、クロレバ。あなたには届かなくとも、私はあなたを愛し続ける」
クロレバは両手でウユチュの手を引っ張りあげ、その形の良い耳に顔を近づけた。
「どうか長く生きてください……母上」
「クロレバっ」
目を見開いた母の体を思いっきり穴の中へと押し込んだ。スドゥルも向こうから引っ張っていたのだろう、すぐにウユチュの姿は見えなくなった。
戸惑う兵の方を向くと、クロレバは姿勢を正した。
「案ずるな。元女王とその息子が出たのみ。我の真の目的は、夫であるトゥフタだ。それさえ手に入ればよい。あやつさえおれば、子を紡ぎ続けられるのだから」
冷徹に言い放つ女王に、兵は膝を付き頭を垂れた。
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