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初陣編
#7尼子兄弟
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月山富田城 尼子義久
私と弟の九郎、産まれたばかりの末弟の八郎と共に毛利から来た人質と聞いている男に会った。その男は元服はしているようだが酷く若そうで私よりもずいぶん若いだろう。
「三郎、この者が毛利からの人質だ。明日からはお主や九郎の学問相手にいたすゆえ仲良く致すように。では。」と父上が言うとその男はその父上の言葉の意味を悟ったのか
「お初にお目にかかります。毛利元就が四男皆生家虎と申します。」と挨拶してくれた。
だが、毛利元就の四男なのにのあの男は苗字を皆生と名乗った。
とそこに次弟の九郎が家虎にこう質問した。
「皆生殿は九郎と対して年齢が変わらぬように感じます。齢幾つなのですか?」と言うと父上は九郎を止めようとしたが家虎は何一つとして躊躇うことが無いと言わんばかりに
「私は九郎さまとなんら変わらぬ同い年の齢9つで御座います。」と言うと同い年の余り居ない九郎は目を輝かせた。
「本当ですか!?だったら殿付けなんてしないで普通に九郎と呼んでください。」と頼んだ。
すると家虎は一瞬躊躇う素振りを見せたが直ぐに満面の笑みを見せると
「九郎さまがそう言うのならば。ですが、私にそうさせるのならば私のことも呼び捨てなさるのが礼儀ですよ。」と言うと九郎が余程家虎の事が気に入ったのか
「父上、九郎が元服したら家虎を家臣に下さい。勿論、その時には人質と言う釘を外した状態で。」と爆弾発言を投げ入れた。
父上はその爆弾発言にも冷静に
「お前が家虎を扱える者になれたらな…。」と言った。
と言うと九郎は疑問が浮かんだのか父上に
「家虎はそれ程優れた才を持っているのですか?」と尋ねると父上の口からとんでもない言葉が飛び出した。
「今の九郎では家虎に瞬殺されるぞ。…余裕で家虎に勝てるのは今は無き国久ぐらいかもな。私とやったって少なくとも互角には渡り合えるだろう。」と父上が口走ると私と九郎は背筋が凍った。
だが、九郎は直ぐに立ち直ると
「だったら九郎ももっと強くなる!そして家虎を手に入れる!こうしちゃあ居られない!家虎、鍛錬の相手して!」と言うと九郎は駆け出し家虎は困り果てて居たが父上と私、八郎に一礼すると去って行った。
だが、その時家虎の背後には誰も居なかったのが後まで気になった。
月山富田城 皆生家虎
私は鉢屋衆の並々ならぬ視線を感じながら九郎を追い掛けた。その感覚に私は毛利家での弟四郎や活発に動いて居た私を追い掛ける貞俊や兄上たちなど毛利家での思い出が胸を占めて泣きかけてしまった。だが、今は違うとその思考を捨てると速度を上げて九郎を捕まえた。
「九郎!」と言うと九郎はパッと顔を明るくして
「着いてきてくれたんだね、家虎!」と無邪気に笑う九郎を見て私の子供らしい心が呼び戻された。
もう二度と毛利家へは帰れないかも知れない。でも、もし今一度毛利家に帰れる日が来るならその日まで今の仲間を大切にし毛利家と尼子家の橋渡しに徹しよう。それが私がここに来た使命なのかも知れない。本来、結ばれるはずのないであろう両家。この両家が力強い仲間で居られるよう努めよう。それが叶わぬ夢であっても…。
「あぁ!」と私は満面の笑みを見せて九郎の方に飛び出した。
私の10歳の時の日の決意だった。
第7話は家虎君と尼子三兄弟の出会いの話になりました。尼子三兄弟は家虎君の人生に何をもたらすことになるのかお楽しみに。
私と弟の九郎、産まれたばかりの末弟の八郎と共に毛利から来た人質と聞いている男に会った。その男は元服はしているようだが酷く若そうで私よりもずいぶん若いだろう。
「三郎、この者が毛利からの人質だ。明日からはお主や九郎の学問相手にいたすゆえ仲良く致すように。では。」と父上が言うとその男はその父上の言葉の意味を悟ったのか
「お初にお目にかかります。毛利元就が四男皆生家虎と申します。」と挨拶してくれた。
だが、毛利元就の四男なのにのあの男は苗字を皆生と名乗った。
とそこに次弟の九郎が家虎にこう質問した。
「皆生殿は九郎と対して年齢が変わらぬように感じます。齢幾つなのですか?」と言うと父上は九郎を止めようとしたが家虎は何一つとして躊躇うことが無いと言わんばかりに
「私は九郎さまとなんら変わらぬ同い年の齢9つで御座います。」と言うと同い年の余り居ない九郎は目を輝かせた。
「本当ですか!?だったら殿付けなんてしないで普通に九郎と呼んでください。」と頼んだ。
すると家虎は一瞬躊躇う素振りを見せたが直ぐに満面の笑みを見せると
「九郎さまがそう言うのならば。ですが、私にそうさせるのならば私のことも呼び捨てなさるのが礼儀ですよ。」と言うと九郎が余程家虎の事が気に入ったのか
「父上、九郎が元服したら家虎を家臣に下さい。勿論、その時には人質と言う釘を外した状態で。」と爆弾発言を投げ入れた。
父上はその爆弾発言にも冷静に
「お前が家虎を扱える者になれたらな…。」と言った。
と言うと九郎は疑問が浮かんだのか父上に
「家虎はそれ程優れた才を持っているのですか?」と尋ねると父上の口からとんでもない言葉が飛び出した。
「今の九郎では家虎に瞬殺されるぞ。…余裕で家虎に勝てるのは今は無き国久ぐらいかもな。私とやったって少なくとも互角には渡り合えるだろう。」と父上が口走ると私と九郎は背筋が凍った。
だが、九郎は直ぐに立ち直ると
「だったら九郎ももっと強くなる!そして家虎を手に入れる!こうしちゃあ居られない!家虎、鍛錬の相手して!」と言うと九郎は駆け出し家虎は困り果てて居たが父上と私、八郎に一礼すると去って行った。
だが、その時家虎の背後には誰も居なかったのが後まで気になった。
月山富田城 皆生家虎
私は鉢屋衆の並々ならぬ視線を感じながら九郎を追い掛けた。その感覚に私は毛利家での弟四郎や活発に動いて居た私を追い掛ける貞俊や兄上たちなど毛利家での思い出が胸を占めて泣きかけてしまった。だが、今は違うとその思考を捨てると速度を上げて九郎を捕まえた。
「九郎!」と言うと九郎はパッと顔を明るくして
「着いてきてくれたんだね、家虎!」と無邪気に笑う九郎を見て私の子供らしい心が呼び戻された。
もう二度と毛利家へは帰れないかも知れない。でも、もし今一度毛利家に帰れる日が来るならその日まで今の仲間を大切にし毛利家と尼子家の橋渡しに徹しよう。それが私がここに来た使命なのかも知れない。本来、結ばれるはずのないであろう両家。この両家が力強い仲間で居られるよう努めよう。それが叶わぬ夢であっても…。
「あぁ!」と私は満面の笑みを見せて九郎の方に飛び出した。
私の10歳の時の日の決意だった。
第7話は家虎君と尼子三兄弟の出会いの話になりました。尼子三兄弟は家虎君の人生に何をもたらすことになるのかお楽しみに。
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