毛利真伝

もうりん

文字の大きさ
8 / 19
初陣編

#8 皆生城の築城

しおりを挟む
ー福原貞俊ー
わしは若と共に尼子家へ来て暫くが経って交友もそれなりに広げていたがそれよりも若と共に皆生の地の内政に勤しんでいた。その中で思い知ったのが家臣不足。皆生6万石は破格と言えば破格だが裏を返せばわしと家虎さま二人だけでは内政の行き足りない石高だった。しかも、兵役となれば初陣だが若は1000兵を超える兵を率いる可能性も否めなかった。だが、唯一羽振りが違ったのは毛利家の民たちと違って皆生の民たちは警戒心が薄く忠誠心の高い民たちなのだ。若とも気さくに話して城の築城にも手伝ってくれると言ってくれた。若はそれに加え屯田兵制度と言うものを領内に浸透させている。戸主以外で二十歳以上の者たちは日頃は農業に勤しみ戦の時には駆け付ける制度だ。上限は50歳と定めている。それ以降は志願制らしい。皆生の民たちの性質を上手いこと利用した制度だった。若はそれを導入する代わりに戦を行って居る間は築城を止めることを宣言した。
そんな感じで若と二人三脚で政務や九郎様の特訓に若が付きあう日々明け暮れる中築城中の儂らの屋敷に二人ほどの来訪者が現れた。
若は快くそれを中に入れると若が自ら名を名乗った後自ら茶を点てるとその二人に渡し名を聞いた。
「私は吉川元春が家臣湯原春綱と申します。」
「私は小早川隆景が家臣乃美宗勝と申します。我が主の隆景さまに皆生殿を支えるよう申し伝えられここに参りました。」
「同じく元春さまより同じ命を受けて参りました。」と聞くと家虎さまの顔が思案顔になったのが分かった。
それを見た湯原殿が元春さま・隆景さま連判の文を差し出した。
家虎さまはそれを手に取り読んでしばらくの間瞑目すると
「お主らがここに来た訳は承知した。だが、お主等はどうなのだ?」と言うと意味を計り兼ねたのか乃美殿が
「皆生殿、お言葉ですがそれはどういう意味で?」と問い返されたので家虎さまが改めてと前置きして
「お主たちが自分たちの意志でここに来ているのかと言う話だ。ここは尼子領内だ。私含め毛利家が何かをすれば真っ先に命を狙われる場所だ。そこに飛び入る覚悟がお主等にあるのかそして今我らは途方も無い家臣不足故家臣として来るなら死に物狂いで働いて貰わねばならん。兄上たちの命令だからと割り切ってここに来ているのなら家臣不足と言えども帰って貰わねばならん。そうで無ければ皆生の民たちに申し訳が立たぬわ。」と家虎さまが言い放つと乃美殿は躊躇う素振りを見せるも湯原殿は躊躇おうともせず家虎さまに平伏すると
「皆生殿が我が主に負けず劣らずの逸物であるのは分かり申した。この皆生の地で死に物狂いで働くことを誓いましょう!ぜひともこの湯原春綱を家臣の一端をお加え下さいますよう。」と湯原殿は平伏為されてしまった。
家虎さまはこう言う経験が無い為驚いていたが湯原殿の瞳を見定めるように見ると力強い瞳で湯原殿を見ると
「お主がそこまで言うなら我らに異議は無い故受け入れるとしよう、春綱。」と言うと湯原殿は
「はっ!宜しゅうお願い致します、家虎さま…?」とどうやらどう呼んで良いのか迷っているようだった。
「家虎さまで良い。殿と呼ばれるような規模でも全く無いし貞俊がそう呼んでおる故統一した方が良かろう。」と言って微笑んだ。
家虎さまは本当に人の心をつかむのが上手いと思う。わしだって家虎さまで無ければ此処まで来ることは無かっただろう。
そして、家虎さまは視線を乃美殿に移すと
「乃美殿、直ぐにここを去れとは言いません。ゆっくり見て行って下さい。ただし、我らはやることが多いので居る以上は手伝ってもらうがな。ただでは食わさんぞ。」とコロコロと笑うと湯原殿がうっとりとした表情を浮かべていた。
「はっ、では見学させて頂きます。」と乃美殿の返事を聞くと湯原殿に扇子を向けると
「では、二人共木綿の服を着ているから分かると思うが明日から倹約。そして、春綱は明日から皆生の地に城を建てるべく設計を我らと一緒に務めて貰うからな。」と言うと湯原殿は
「はっ、お任せ下され!」と威勢良く平伏した。
貞俊さん目線の湯原春綱さん乃美宗勝さんと家虎君の出会いの話になります。春綱さんは家虎君の家臣となり貞俊さんに次ぐ忠臣となって行きます。宗勝さんはどうなるでしょうか。
なお、春綱さんは今現在吉川家の家臣でもありませんがこの物語の都合上吉川家家臣として扱わせて頂きます。
次回もよろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

処理中です...