毛利真伝

もうりん

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初陣編

#9 兄たちの決断

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日浦山城 吉川元春
俺は焦りを覚えていた。親父が乱心同然に成り下がり志道の爺が説得を試みても中々聞かぬ有り様であり家臣たちも親父と言う絶対的な存在のあの憎い姿に段々と見限る家臣たちも増えて来た。俺と又四郎も愛想は疾うの昔に尽かしているが逃げ出すわけにも行かず今ここに居た。だが、甥の幸鶴丸は絶対に毛利家の未来を守る為に逃さねばならずその時は同母弟の虎寿に頼み込もうと又四郎や太郎兄上と決めている。そして、俺等は父上を巻き込んで死を選ぶ。とそこに虎寿からの手紙で家臣が皆生六万石に対してかなりの不足であることが嘆かれて居た。虎寿、いや家虎か家虎からの文は相変わらず続いた。だが、戦況は相変わらず悪く主に俺と又四郎はあちらこちらに出陣していたが民が疲れ切っており最早勝つことは不可能に思えた。そこで家虎の所に又四郎と相談して信頼できる家臣を家虎の所に送ることになった。そして、俺の家臣からは家虎に行くことを希望し尚且つかねてより彼奴を気に入っていた湯原春綱を行かせ又四郎の方は乃美宗勝を送り込むらしい。そして、家虎からの文が返ってきたがその文は貞俊と連名で書かれていた。そして、又四郎と二人で見ると俺等の気遣いに対するお礼と二人の意志が書かれていた。そして、迷っている宗勝は暫く皆生の地で家虎の仕事を見学させる為留め置くと書かれていた。
又四郎と俺は顔を見合わすと頷いた。
「それでいいんです…。ありがとう、家虎。」
又四郎は本当に宗勝を手放す覚悟を決めていたようだった。直に大友が攻めて来る筈だ。俺等の運命は大友が攻めて来る時が来れば確実に息の根を止められる。その時、確実に生き残れる確証があるのは俺たちの誰でも無い。家虎と貞俊だけだ。彼奴等には本当に悪いことをすると思う。家虎はまだ10歳で毛利家の血筋を残すと言う大役を担うことになる。
でも…心残りは…
「家虎、最後お前に会っておきたかったよ…。」と言うと又四郎も頷いた。
「えぇ、そうですね。もしかしたら太郎兄上に家虎を会わせてやれれば少しは元気を出してくれるかも知れませんが…。」と言う又四郎を他所に俺は閃いた。
俺は慌てて家虎から貰った手紙の数々の入る戸棚を開いた。溺愛して居た虎寿の息吹きも感じさせてやらぬまま太郎兄上を弱らせるぐらいならせめて…!決死な様子で家虎からの手紙を出す俺を見た又四郎は驚いていた。
「次郎兄上、まさか家虎からの手紙を全て太郎兄上に渡すつもりですか?そしたら、もしバレた時家虎の立場が…。」と言う又四郎に俺は振り向き言った。
「だとしても、家虎を溺愛していた太郎兄上を家虎の息吹きを感じさせてやらずにあのまま弱らせたく無いんだ!」と言うと又四郎は諦めたのか首を縦に振ると
「でしたら、家虎に一筆書いときますよ。その上で私も家虎からの手紙を全部出して来ます。」と又四郎が言うと俺の返事も聞かず飛び出した。
家虎、太郎兄上と父上にそして俺たちに幸を…。
第9話は毛利家側の近況報告2と吉川さんと小早川さんによる元就さんと隆元さんの様子を描いた回になりました。毛利家のことを案じる吉川さんと小早川さんの運命と家虎君はその運命にどう向き合うのか乞うご期待を!以上第9話の展開となりました。次回は家虎君側のお話になります。
では、次回もよろしくお願いします。
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