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初陣編
#10話 家虎の日常
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皆生屋敷 皆生家虎
半月掛けてついに私たちの屋敷が完成した。城はまだまだ着工はしたが完成には程遠いし天守は作る気がない。私は基本皆生城は海城にするつもりだ。私の家臣を見渡すと主に海軍を率いて戦っていた貞俊と乃美殿、そして海軍を率いることも可能な春綱。そして、私が尼子家の家臣という立場もある。尼子家には基本的に水軍が居ない。その中で私はこの町の漁師たちを用いて水軍を組織するつもりだ。幸いにもこの皆生の地は漁をするだけで無く漁をするための道具や凄いのは大砲まで作れるとの事である。だが、皆生の民たちはその事実を尼子家に黙して来たようなのでその意志を尊重することにした。
「皆の者!握り飯持ってきたぞ!ひと休憩しようでは無いか!」と私が陣頭指揮の途中にせっせと握っていた握り飯を板に乗せて運ぶと民たちから歓声が上がった。
「家虎さま!あんたは良い殿様やなぁ。」と言うこの男は傳兵衛と言って貧しい農民だ。
「家虎さまも貞俊さまも良いお方なんぜよ。働きがいのある御殿様に仕えられておいらは幸せなんぜよ。」と言う方言の強い男は達八と言ってこの町の漁師だ。
そう、私と貞俊は民たちの絶対的信頼を勝ち取り大人気だった。貞俊も人を気遣い過ぎる癖があったがその癖が返って良い方向に動き貞俊自身も楽なようだった。私は大衆に囲まれて困惑する貞俊やそれを散々に叩く民たちや春綱を頬杖を付いてうっとりと眺めていた。そんな私に傳兵衛が握り飯を投げて私が受け取ると傳兵衛が
「なんで家虎さまが握り飯を一番最初に食ってないんだよ!作った張本人だろうよ!」と声高に叫ぶと達八が続いた。
「そうぜよ!作った張本人が一番最初に食うのは皆生の流儀ぜよ!」と言われて私も流暢に言い返した。
「そんな流儀あったかよ!」と言うと他の民たちや貞俊や春綱、宗勝まで
「「あります!」」と声を揃えて言いおった。
観念した私は
「あ~もう!とっと、再開するぞ。」と言って握り飯を口でくわえながらそっぽを向いた。
そんな私を民たちや家臣たちも一体となって愉快に笑っていた。
私は毛利家に居た頃に似た幸福感があって嬉しかった。この時を持ってこの皆生の地は後に私の終生の居場所になることになる。
ただし、九郎が私に勝負を挑む為に来ていて泥仕合をしたせいで泥だらけになっている私や貞俊を見て驚いていたのはまた別の話。
皆生屋敷 尼子九郎
私は家虎に勝負して貰おうと行こうと最近出来上がったらしい皆生屋敷に行くも家虎が居なくて困っていると
「なぁ、お武家様。家虎さまを探して居られるのか?」と一人の民が話しかけて来た。
「あぁ、その通りだが家虎さまなどと名前で呼んで失礼にはならぬのか?」と問うた。
普通なら民が家虎さまなどと名前で呼んだら死を伴う問題だが家虎は許して居るとでも言うのだろうか?
と暫く固まっていると家虎は仁政を引いているのか男は自慢気に話し出した。
「家虎さまはまっこと情に篤い方でな年貢を軽くしてくれただけで無く今築城中の皆生城に動員されている民たちには家虎さま自ら握り飯を握って下さるんだ。それに見たこと無いか?家虎さまが家臣一人を伴って木綿の服一つで街の中を歩く姿を。」
驚いた。我ら尼子でもやらないような恐ろしい仁政だった。恐らくその家臣と言うのは福原殿か最近家虎の家臣になった湯原殿だろう。その男によると特に福原殿と家虎の人気が高いのだと言う。
「ありがとう。」と言うとその男は
「用事なら行ってみると良い。今頃は握り飯を食っとるのが見られるかもな。」と言うと去って行った。
ほんと、家虎は良くこの特徴的な民たちの居る皆生の地を収めて居られるな。尼子の一門である私が言うのもなんだが皆生の地は温泉地で尼子家の中で知られていたが温泉地や寺社が点在して力を持っている街でもあった為反乱も起きやすくこの街を治められる人材が存在していなかった。しかも更に分が悪いのはこの土地は元々私の母上の実家で家虎が来る直前に一族共々滅ぼされた武に並外れて強かった一族である新宮党に支配された土地だけあってその民たちは滅法強く常に武力で収められて居たのだ。しかも、新宮党の財力とも言える街だったしな。そこで父上は反乱が起これば放ればいいと言って家虎に与えた訳だが家虎は父上が感嘆するほど見事に皆生の地を治めた。その手段には父上も興味を持っていた。
まぁ、そんなことは放っておいて皆生城を築城して居る現場に向かうと家虎がどういう訳か赤面して抗議して居た。どういう状況なんだろう?と思いつつも手際良く作業を進める家虎の手段には驚かされた。民たちの気力を出させるためか城内を僧が念仏を唱えながら歩いていた。そんな目新しいやり方に見惚れて居ると家虎は私の方に気づいたのか手を振ってくれた。
第10話では家虎君と皆生の民たちがメインの皆生城築城のお話とサブで九郎君が登場です。
なお、皆生の地では大砲が作れると言うのは実際のことでは無く尼子では中国などと貿易していた記録があったので皆生の地が特別であれば良いなと思い設定した架空設定です。
半月掛けてついに私たちの屋敷が完成した。城はまだまだ着工はしたが完成には程遠いし天守は作る気がない。私は基本皆生城は海城にするつもりだ。私の家臣を見渡すと主に海軍を率いて戦っていた貞俊と乃美殿、そして海軍を率いることも可能な春綱。そして、私が尼子家の家臣という立場もある。尼子家には基本的に水軍が居ない。その中で私はこの町の漁師たちを用いて水軍を組織するつもりだ。幸いにもこの皆生の地は漁をするだけで無く漁をするための道具や凄いのは大砲まで作れるとの事である。だが、皆生の民たちはその事実を尼子家に黙して来たようなのでその意志を尊重することにした。
「皆の者!握り飯持ってきたぞ!ひと休憩しようでは無いか!」と私が陣頭指揮の途中にせっせと握っていた握り飯を板に乗せて運ぶと民たちから歓声が上がった。
「家虎さま!あんたは良い殿様やなぁ。」と言うこの男は傳兵衛と言って貧しい農民だ。
「家虎さまも貞俊さまも良いお方なんぜよ。働きがいのある御殿様に仕えられておいらは幸せなんぜよ。」と言う方言の強い男は達八と言ってこの町の漁師だ。
そう、私と貞俊は民たちの絶対的信頼を勝ち取り大人気だった。貞俊も人を気遣い過ぎる癖があったがその癖が返って良い方向に動き貞俊自身も楽なようだった。私は大衆に囲まれて困惑する貞俊やそれを散々に叩く民たちや春綱を頬杖を付いてうっとりと眺めていた。そんな私に傳兵衛が握り飯を投げて私が受け取ると傳兵衛が
「なんで家虎さまが握り飯を一番最初に食ってないんだよ!作った張本人だろうよ!」と声高に叫ぶと達八が続いた。
「そうぜよ!作った張本人が一番最初に食うのは皆生の流儀ぜよ!」と言われて私も流暢に言い返した。
「そんな流儀あったかよ!」と言うと他の民たちや貞俊や春綱、宗勝まで
「「あります!」」と声を揃えて言いおった。
観念した私は
「あ~もう!とっと、再開するぞ。」と言って握り飯を口でくわえながらそっぽを向いた。
そんな私を民たちや家臣たちも一体となって愉快に笑っていた。
私は毛利家に居た頃に似た幸福感があって嬉しかった。この時を持ってこの皆生の地は後に私の終生の居場所になることになる。
ただし、九郎が私に勝負を挑む為に来ていて泥仕合をしたせいで泥だらけになっている私や貞俊を見て驚いていたのはまた別の話。
皆生屋敷 尼子九郎
私は家虎に勝負して貰おうと行こうと最近出来上がったらしい皆生屋敷に行くも家虎が居なくて困っていると
「なぁ、お武家様。家虎さまを探して居られるのか?」と一人の民が話しかけて来た。
「あぁ、その通りだが家虎さまなどと名前で呼んで失礼にはならぬのか?」と問うた。
普通なら民が家虎さまなどと名前で呼んだら死を伴う問題だが家虎は許して居るとでも言うのだろうか?
と暫く固まっていると家虎は仁政を引いているのか男は自慢気に話し出した。
「家虎さまはまっこと情に篤い方でな年貢を軽くしてくれただけで無く今築城中の皆生城に動員されている民たちには家虎さま自ら握り飯を握って下さるんだ。それに見たこと無いか?家虎さまが家臣一人を伴って木綿の服一つで街の中を歩く姿を。」
驚いた。我ら尼子でもやらないような恐ろしい仁政だった。恐らくその家臣と言うのは福原殿か最近家虎の家臣になった湯原殿だろう。その男によると特に福原殿と家虎の人気が高いのだと言う。
「ありがとう。」と言うとその男は
「用事なら行ってみると良い。今頃は握り飯を食っとるのが見られるかもな。」と言うと去って行った。
ほんと、家虎は良くこの特徴的な民たちの居る皆生の地を収めて居られるな。尼子の一門である私が言うのもなんだが皆生の地は温泉地で尼子家の中で知られていたが温泉地や寺社が点在して力を持っている街でもあった為反乱も起きやすくこの街を治められる人材が存在していなかった。しかも更に分が悪いのはこの土地は元々私の母上の実家で家虎が来る直前に一族共々滅ぼされた武に並外れて強かった一族である新宮党に支配された土地だけあってその民たちは滅法強く常に武力で収められて居たのだ。しかも、新宮党の財力とも言える街だったしな。そこで父上は反乱が起これば放ればいいと言って家虎に与えた訳だが家虎は父上が感嘆するほど見事に皆生の地を治めた。その手段には父上も興味を持っていた。
まぁ、そんなことは放っておいて皆生城を築城して居る現場に向かうと家虎がどういう訳か赤面して抗議して居た。どういう状況なんだろう?と思いつつも手際良く作業を進める家虎の手段には驚かされた。民たちの気力を出させるためか城内を僧が念仏を唱えながら歩いていた。そんな目新しいやり方に見惚れて居ると家虎は私の方に気づいたのか手を振ってくれた。
第10話では家虎君と皆生の民たちがメインの皆生城築城のお話とサブで九郎君が登場です。
なお、皆生の地では大砲が作れると言うのは実際のことでは無く尼子では中国などと貿易していた記録があったので皆生の地が特別であれば良いなと思い設定した架空設定です。
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