What All Of Us Know

ルシファー

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September

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「好きってどういう意味?」
こう聞くまでに至った経緯を話そう。8月の初デート直後から物語は始まる。

「帰るのが早すぎる」
 初デート後に言われた言葉だった。つまりそれはそういうことな訳で、後悔した。流石に初デートに若い職場の子を連れ込むのは躊躇った。だから何事もなかったように18時には寮に戻すつもりだった。飯をおごったし、もっと遅くまで遊んでもよかったかもしれない。

 このモチベーションを上げていくために彼女の容姿を褒めた。「可愛いよ」とか「目が大きいね」とか。実際にデートの時だけじゃなくても、職場で見かけるときも可愛いと感じる。でも何度褒めても、褒め方変えても自己肯定感が低いのか、「嘘ね」とか「アキさんはオリビアさん好きね!」言われる。メンヘラなのか?照れ隠しなのか?とは言いつつもボイスメッセージをラリーのように数分単位で続けた。時には「寂しい」と言われ、電話したりもした。あれだけ職場ではワイワイ楽しんで仕事しているのに寮ではなぜか気持ちが下がるようだ。寮にはシャーロットとかオリビアがいるのになんで?酒飲みすぎたのか?最近は突然、「アキさん、好き」と言われた。単純にうれしい。しかし、この意味は何だろうか?男としてなのだろうか?一職員としてなのだろうか?酔った勢いなのか真意は読めなかった。一度デートに行ったし、毎日のやりとりの頻度を考えると期待してしまうのだった。

 おれらは2回目のデートの約束をした。都会みたいに有名な観光地は少ないけど、それなりに日本を紹介したい。今回はドライブも兼ねて、滝を観に行くことにした。車の中で「Tさんはカンコク分かるよお?」と後輩Tの話をしてきたときは嫉妬からか、腹が立った。彼はミアとも仲が良く、何度か飯に行っている。ミアだけじゃない、インドネシア人みんなと仲がいい。彼が彼女らと話しているのを見るのが超絶にストレスを感じる。思い出すだけでイライラしてくるが、話を切り替えて楽しく話して滝に着いた。珍しいタイプの滝だからか、「コレ、滝じゃないね?」と言われた。インドネシアのスピリチュアルを感じさせる滝と比べると滝行できないから別物に思うのだろう。滝から車に戻るまでの道は、身体に触れるか触れないかの絶妙な距離だった。ドキドキしていたが、まだ15時半、二人きりになるにはまだ早い時間帯だった。

 地元までの帰り道においしくて有名な蕎麦屋があるから寄ってみた。平日の16時でお客はおれらしか居ない。まだ暑い時期だから二人でざる蕎麦を頼んだ。ラーメンのように丼ぶりに入っている麺類じゃないものを日本の文化として食べてもらいたかった。「どう?」「はい、おいし!」とは言うものの、天麩羅はガツガツ食べるけど、蕎麦の進みは遅かった。おれは食べるのが早いからミアが半分も食べ終わらないうちに器を空にしていた。食べ終わるまでの間に滝でのドキドキと「好き」と言われたのことを考えた。付き合うとか関係なしに気持ちは確認しておきたい。「ミア、好きってどういう意味?」おれの心拍数が上がる。何年振りに告白紛いな言葉を言ったのだろうか。そしてミアはどう答えるのだろうか?「アキさんは~日本のお兄ちゃんみたい」期待したこととは違う答えだった。あまりにもショックが大きい。今までのメッセージのやりとりとか、ボイスメッセージで好きって言ってたのは何なんだったの?今から場所を変えるムードとモチベーションは完全に消え去った。やれる道のりが遠のいた。

 おれは幸せの時間から一気に奈落へ落とし込まれたのだった。


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