2 / 8
第二話
しおりを挟む
「まだ着かないのかなぁ……寝ちゃおうかなぁ」
「おい、騒いでた女子たちが寝てるぞ」
そんな呟きが聞こえる頃には、車内の空気も少しずつ落ち着き始めていた。
つい先ほどまであれほど賑やかだった声が、いつの間にかまばらになり、話しながらもあくびをする者が増えていく。
バスは順調に進んでいた。速度は速すぎることもなく、道が空いているおかげで揺れも少ない。けれど、外の景色はいつの間にか変わっていた。
さっきまで青空が広がっていたはずなのに、いつの間にか灰色の雲が空を覆い始めている。
長旅の疲れからか、学生たちは一人、また一人と眠りについていった。
車体が揺れるたびに、寝落ちそうな学生たちがかすかに身体を傾ける。誰かの肩にもたれかかったり、窓に頭を預けたりしながら、そのまま静かに夢の世界へと落ちていく。
あれほど賑やかだったバスの中は、あっという間に静寂に包まれた。今は、エンジンの低い振動音と空調のかすかな唸りだけが、車内に響いている。
それでも、陸馬ハルキはまだ目を閉じることができずにいた。
うとうとと意識が遠のきそうになりながらも、眠りの深い場所まで落ちていくことができない。
前日、就活のスケジュールを確認しながら、この旅の準備をしていたせいだろうか。あるいは、それだけではないのだろうか。
――何かが引っかかる。
そう思った瞬間、車内が突然暗くなった。
「……トンネル……か……」
ハルキはぼんやりとつぶやく。
バスは長いトンネルに入ったようだ。窓の外には、闇と点滅するライトの光だけが交互に流れていく。白い光の筋が一定の間隔で通り過ぎるのを見ながら、ハルキは何となしに前方へと視線を向けた。
そこで――奇妙なものを見た。
運転席の男。
運転手の姿が、黒い帽子と分厚いマスクに覆われていた。
さっきまで、こんな格好をしていただろうか。
そのマスクは普通のものではなかった。何かの装置につながっているのか、一定の間隔で「シュコー……シュコー……」と機械的な呼吸音を立てている。
その様子に、ハルキはぞくりとした寒気を覚えた。
――おかしい。
直感的にそう思った。
しかし、それ以上考える間もなく、ハルキの意識は突然、闇へと沈んでいった。
「おい、騒いでた女子たちが寝てるぞ」
そんな呟きが聞こえる頃には、車内の空気も少しずつ落ち着き始めていた。
つい先ほどまであれほど賑やかだった声が、いつの間にかまばらになり、話しながらもあくびをする者が増えていく。
バスは順調に進んでいた。速度は速すぎることもなく、道が空いているおかげで揺れも少ない。けれど、外の景色はいつの間にか変わっていた。
さっきまで青空が広がっていたはずなのに、いつの間にか灰色の雲が空を覆い始めている。
長旅の疲れからか、学生たちは一人、また一人と眠りについていった。
車体が揺れるたびに、寝落ちそうな学生たちがかすかに身体を傾ける。誰かの肩にもたれかかったり、窓に頭を預けたりしながら、そのまま静かに夢の世界へと落ちていく。
あれほど賑やかだったバスの中は、あっという間に静寂に包まれた。今は、エンジンの低い振動音と空調のかすかな唸りだけが、車内に響いている。
それでも、陸馬ハルキはまだ目を閉じることができずにいた。
うとうとと意識が遠のきそうになりながらも、眠りの深い場所まで落ちていくことができない。
前日、就活のスケジュールを確認しながら、この旅の準備をしていたせいだろうか。あるいは、それだけではないのだろうか。
――何かが引っかかる。
そう思った瞬間、車内が突然暗くなった。
「……トンネル……か……」
ハルキはぼんやりとつぶやく。
バスは長いトンネルに入ったようだ。窓の外には、闇と点滅するライトの光だけが交互に流れていく。白い光の筋が一定の間隔で通り過ぎるのを見ながら、ハルキは何となしに前方へと視線を向けた。
そこで――奇妙なものを見た。
運転席の男。
運転手の姿が、黒い帽子と分厚いマスクに覆われていた。
さっきまで、こんな格好をしていただろうか。
そのマスクは普通のものではなかった。何かの装置につながっているのか、一定の間隔で「シュコー……シュコー……」と機械的な呼吸音を立てている。
その様子に、ハルキはぞくりとした寒気を覚えた。
――おかしい。
直感的にそう思った。
しかし、それ以上考える間もなく、ハルキの意識は突然、闇へと沈んでいった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる