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第三章 異性の扉
第十四話
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夜。
『ごめんなさいね、うちの湊音が』
「いえ……きっと湊音さん、心配してくれてのことだと思います」
來のもとに李仁から電話が来た。「うちの」という言葉が、胸の奥で小さく疼く。
以前まで身体を重ねていた相手なのに、李仁は平然と会い、こうして電話もしてくる。
やはり彼にとって自分は、“湊音の相手”ではなく、“一時の関係”だったのだと、思い知らされる。
『湊音も元高校教師じゃない。生徒くらいの年の子が将来ぼんやりしていると、ついお節介を焼きたくなるのよ。許してやってね』
「いえ。ああして言ってもらわなかったら……きっと僕は、止まったままでしたから」
そう話す來は、也夜と一緒に選んだソファーに腰を下ろしていた。
本当なら、二人で並んで座るはずだったソファー。
今はそこに、一人。
時に仲間や友人、李仁や湊音、大輝が来ることもあったが、こうして一人で過ごす時間にも、ようやく慣れてきた。
——かつては、一人が怖くて、誰かを呼ばずにいられなかったのに。
「湊音さんも、今まで僕に言いたかったんだと思います。でももう一年ですし、きっと心配してくれてたんですよね」
『何言ってるの、ずっと心配してたわよ。湊音だけじゃない。私も大輝も、みんなあなたのことを案じてる』
「……」
『まぁ、“死にはしないでしょ”とは思ってたけど』
冗談めかすような李仁の声に、來は思わず笑ってしまう。
「死ぬことはないです、確かに」
『そうよね』
「……忘れて、僕はまた一から頑張ります。みんながこうして僕の将来を心配してくれる。それも……也夜の家族から離れろと言われたのも、僕のため、ですよね」
『かもね。いつ也夜が目を覚ますかなんて、誰にもわからない。明日かもしれないし、来年、十年後、何十年後かも』
「そんなにですか」
『冗談じゃないわよ』
何十年後。
その頃、自分はいくつになっているのだろう。三十を越え、四十に近づいているかもしれない。
「……」
『もし十年後に目を覚ましたとして……あなたがただ美容師を続けているだけじゃ、也夜はきっと喜ばない。
お店を持って、後輩を育てて、もっと高みを目指しているあなたを見たら、嬉しいと思うわ』
李仁の声は、甘くて、優しくて。
かつてベッドの上で、耳元で囁かれ、何度もその声に堕ちていったことを思い出す。
受話器越しに聞こえるその響きに、來は不覚にも身体が反応してしまった。
久しぶりに——理性の奥で、熱が揺れた。
日中会った時はそんなことがなかったのに、どうしてなんだと來は鼓動が増して気づいたらズボンを脱ぎ、ショーツを脱ぎ触っていた。
『ごめんごめん、私まで説教垂れてしまうわ。じゃあ今日はゆっくり休んで』
李仁が電話を切ろうとする。
「李仁……さんっ」
『なに? 來……』
來はソファーに横たわり、自分のを触りながら電話を繋ぐ。
「まだ、電話を切らないでくださいっ……」
李仁は最初なんのことかと思ったが、來の息の荒さに何かを勘付いた。
『もう、わかったわ……』
電話口で笑う李仁の声に來はもう我慢ができなかった。
「ああっ……」
このソファーは家具屋で也夜と二人で座り、色と素材もこだわった。忙しくても休みのときに一緒に横に座ってくつろぐのならちゃんと決めて買おうと。
ソファーとベッドは特にこだわった。
なのに今では也夜以外の男と交わり、愛を重ね沈んでいく。
そして果てて息を切れ切れにし、仰向けで天井を見つめる。
「……はぁ」
ため息をついて目を瞑った。
『ごめんなさいね、うちの湊音が』
「いえ……きっと湊音さん、心配してくれてのことだと思います」
來のもとに李仁から電話が来た。「うちの」という言葉が、胸の奥で小さく疼く。
以前まで身体を重ねていた相手なのに、李仁は平然と会い、こうして電話もしてくる。
やはり彼にとって自分は、“湊音の相手”ではなく、“一時の関係”だったのだと、思い知らされる。
『湊音も元高校教師じゃない。生徒くらいの年の子が将来ぼんやりしていると、ついお節介を焼きたくなるのよ。許してやってね』
「いえ。ああして言ってもらわなかったら……きっと僕は、止まったままでしたから」
そう話す來は、也夜と一緒に選んだソファーに腰を下ろしていた。
本当なら、二人で並んで座るはずだったソファー。
今はそこに、一人。
時に仲間や友人、李仁や湊音、大輝が来ることもあったが、こうして一人で過ごす時間にも、ようやく慣れてきた。
——かつては、一人が怖くて、誰かを呼ばずにいられなかったのに。
「湊音さんも、今まで僕に言いたかったんだと思います。でももう一年ですし、きっと心配してくれてたんですよね」
『何言ってるの、ずっと心配してたわよ。湊音だけじゃない。私も大輝も、みんなあなたのことを案じてる』
「……」
『まぁ、“死にはしないでしょ”とは思ってたけど』
冗談めかすような李仁の声に、來は思わず笑ってしまう。
「死ぬことはないです、確かに」
『そうよね』
「……忘れて、僕はまた一から頑張ります。みんながこうして僕の将来を心配してくれる。それも……也夜の家族から離れろと言われたのも、僕のため、ですよね」
『かもね。いつ也夜が目を覚ますかなんて、誰にもわからない。明日かもしれないし、来年、十年後、何十年後かも』
「そんなにですか」
『冗談じゃないわよ』
何十年後。
その頃、自分はいくつになっているのだろう。三十を越え、四十に近づいているかもしれない。
「……」
『もし十年後に目を覚ましたとして……あなたがただ美容師を続けているだけじゃ、也夜はきっと喜ばない。
お店を持って、後輩を育てて、もっと高みを目指しているあなたを見たら、嬉しいと思うわ』
李仁の声は、甘くて、優しくて。
かつてベッドの上で、耳元で囁かれ、何度もその声に堕ちていったことを思い出す。
受話器越しに聞こえるその響きに、來は不覚にも身体が反応してしまった。
久しぶりに——理性の奥で、熱が揺れた。
日中会った時はそんなことがなかったのに、どうしてなんだと來は鼓動が増して気づいたらズボンを脱ぎ、ショーツを脱ぎ触っていた。
『ごめんごめん、私まで説教垂れてしまうわ。じゃあ今日はゆっくり休んで』
李仁が電話を切ろうとする。
「李仁……さんっ」
『なに? 來……』
來はソファーに横たわり、自分のを触りながら電話を繋ぐ。
「まだ、電話を切らないでくださいっ……」
李仁は最初なんのことかと思ったが、來の息の荒さに何かを勘付いた。
『もう、わかったわ……』
電話口で笑う李仁の声に來はもう我慢ができなかった。
「ああっ……」
このソファーは家具屋で也夜と二人で座り、色と素材もこだわった。忙しくても休みのときに一緒に横に座ってくつろぐのならちゃんと決めて買おうと。
ソファーとベッドは特にこだわった。
なのに今では也夜以外の男と交わり、愛を重ね沈んでいく。
そして果てて息を切れ切れにし、仰向けで天井を見つめる。
「……はぁ」
ため息をついて目を瞑った。
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