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第27話 拒否権
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第27話 拒否権
大聖堂を出た瞬間、
空気が変わった。
外は晴れている。
鐘の音も、街のざわめきも、
いつも通りのはずだった。
それなのに――
令嬢Cの背中には、
はっきりとした“圧”が乗っていた。
(……来る……)
直感だった。
だが、
これまで一度も外れたことのない、
確かな感覚。
(……王家……
動きます……)
(……しかも……
力技……)
彼女は、足を止めない。
目立たない裏道へ。
人の流れが分かれる地点を選び、
自然に、
モブガールズと合流する。
「……大丈夫?」
友人2が、小声で尋ねた。
「……顔色……
良くない……」
「大丈夫ですわ」
令嬢Cは、
にこりと微笑む。
(……嘘です……)
(……全然……
大丈夫……
じゃ……
ない……)
だが、
彼女は、
彼女たちを巻き込まない。
(……ここから……
先は……
私だけ……)
「……先に……
失礼しますわ……」
「え……?」
「……少し……
用事が……」
それだけ言って、
彼女は、
人混みの中へ溶け込んだ。
---
数分後。
「――令嬢C殿」
背後から、
硬い声。
(……早い……)
振り向くと、
そこには――
王家の紋章を付けた
近衛騎士が二名。
「……王太子殿下より
お呼びです」
それは、
形式上は“招請”。
だが、
選択肢のない、
半ば拘束だった。
「……今は……
体調が……
優れません……」
令嬢Cは、
穏やかに答える。
「……後日……
改めて……」
「――拒否は
できません」
即答だった。
「……聖女に……
相応しい……
振る舞い……
では……
ありません……」
(……出ました……)
(……“聖女”……
という……
鎖……)
彼女は、
静かに息を吐いた。
「……私は……
聖女だと……
名乗った……
覚えは……
ありません……」
騎士の眉が、
僅かに動く。
「……水晶が……
反応した……」
「……それは……
事実……
です……」
「……事実……
ですから……
殿下は……」
「……それは……」
令嬢Cは、
はっきりと言った。
「……事実では……
ありません……」
「……“現象”……
です……」
沈黙。
騎士たちは、
理解できない、
という顔をしている。
(……やはり……)
(……この世界……
“力”を……
“所有物”……
として……
扱いすぎ……)
---
「……命令です」
騎士の声が、
少しだけ強くなる。
「……殿下の……
御前へ……」
その瞬間。
令嬢Cの中で、
何かが、
はっきりと切り替わった。
(……逃げ続ける……
だけでは……
終わらない……)
(……ここで……
線を……
引かないと……)
彼女は、
一歩、
後ろへ下がった。
「……お断り……
します……」
空気が、
凍る。
「……今……
なんと……?」
「……拒否……
しました……」
声は、
震えていなかった。
「……私は……
王家に……
仕える……
契約を……
結んで……
いません……」
「……強制される……
理由が……
ありません……」
騎士たちは、
完全に固まった。
(……拒否……
された……)
(……王家の……
招請を……)
それは、
前代未聞だった。
---
「……無礼だ……」
騎士の一人が、
低く言う。
「……その……
言葉……」
令嬢Cは、
静かに首を振った。
「……無礼では……
ありません……」
「……正当な……
拒否……
です……」
「……私は……
誰の……
所有物……
でも……
ありません……」
その瞬間。
空気が、
再び、
揺れた。
風でも、
魔力でもない。
“拒否”
そのものが、
世界に、
届いた。
(……あ……)
騎士の一人が、
無意識に後ずさる。
「……近づくな……」
誰に向けた言葉か、
分からなかった。
ただ、
“踏み込んではいけない”
という本能だけが、
彼らを縛った。
---
令嬢Cは、
一礼する。
「……これ以上……
付きまとわれる……
なら……」
「……正式に……
抗議……
いたします……」
「……学園……
及び……
教会……
双方に……」
騎士たちは、
動けなかった。
命令はある。
だが、
“実行”する理由が、
消えていた。
「……今日は……
失礼……
いたします……」
彼女は、
その場を離れる。
誰も、
止めなかった。
止められなかった。
---
その頃。
王太子ダイナスティは、
報告を受けていた。
「……拒否……
された……?」
「……はい……
殿下……」
「……命令……
した……
のに……?」
騎士の沈黙が、
答えだった。
ダイナスティは、
机を叩く。
「……ふざけるな……」
「……俺は……
王太子だぞ……!」
だが。
その怒りは、
すでに、
誰にも届いていなかった。
---
一方。
令嬢Cは、
自室で、
静かに座っていた。
(……拒否……
しました……)
(……怖かった……)
(……でも……)
(……これで……
いい……)
初めて、
彼女は、
“モブ”としてではなく、
自分の意思で立った。
それは、
派手な宣言でも、
奇跡でもない。
ただの、
拒否。
だが――
それこそが、
王子にとって、
最も受け入れ難いものだった。
物語は、
いよいよ――
最終局面へ。
大聖堂を出た瞬間、
空気が変わった。
外は晴れている。
鐘の音も、街のざわめきも、
いつも通りのはずだった。
それなのに――
令嬢Cの背中には、
はっきりとした“圧”が乗っていた。
(……来る……)
直感だった。
だが、
これまで一度も外れたことのない、
確かな感覚。
(……王家……
動きます……)
(……しかも……
力技……)
彼女は、足を止めない。
目立たない裏道へ。
人の流れが分かれる地点を選び、
自然に、
モブガールズと合流する。
「……大丈夫?」
友人2が、小声で尋ねた。
「……顔色……
良くない……」
「大丈夫ですわ」
令嬢Cは、
にこりと微笑む。
(……嘘です……)
(……全然……
大丈夫……
じゃ……
ない……)
だが、
彼女は、
彼女たちを巻き込まない。
(……ここから……
先は……
私だけ……)
「……先に……
失礼しますわ……」
「え……?」
「……少し……
用事が……」
それだけ言って、
彼女は、
人混みの中へ溶け込んだ。
---
数分後。
「――令嬢C殿」
背後から、
硬い声。
(……早い……)
振り向くと、
そこには――
王家の紋章を付けた
近衛騎士が二名。
「……王太子殿下より
お呼びです」
それは、
形式上は“招請”。
だが、
選択肢のない、
半ば拘束だった。
「……今は……
体調が……
優れません……」
令嬢Cは、
穏やかに答える。
「……後日……
改めて……」
「――拒否は
できません」
即答だった。
「……聖女に……
相応しい……
振る舞い……
では……
ありません……」
(……出ました……)
(……“聖女”……
という……
鎖……)
彼女は、
静かに息を吐いた。
「……私は……
聖女だと……
名乗った……
覚えは……
ありません……」
騎士の眉が、
僅かに動く。
「……水晶が……
反応した……」
「……それは……
事実……
です……」
「……事実……
ですから……
殿下は……」
「……それは……」
令嬢Cは、
はっきりと言った。
「……事実では……
ありません……」
「……“現象”……
です……」
沈黙。
騎士たちは、
理解できない、
という顔をしている。
(……やはり……)
(……この世界……
“力”を……
“所有物”……
として……
扱いすぎ……)
---
「……命令です」
騎士の声が、
少しだけ強くなる。
「……殿下の……
御前へ……」
その瞬間。
令嬢Cの中で、
何かが、
はっきりと切り替わった。
(……逃げ続ける……
だけでは……
終わらない……)
(……ここで……
線を……
引かないと……)
彼女は、
一歩、
後ろへ下がった。
「……お断り……
します……」
空気が、
凍る。
「……今……
なんと……?」
「……拒否……
しました……」
声は、
震えていなかった。
「……私は……
王家に……
仕える……
契約を……
結んで……
いません……」
「……強制される……
理由が……
ありません……」
騎士たちは、
完全に固まった。
(……拒否……
された……)
(……王家の……
招請を……)
それは、
前代未聞だった。
---
「……無礼だ……」
騎士の一人が、
低く言う。
「……その……
言葉……」
令嬢Cは、
静かに首を振った。
「……無礼では……
ありません……」
「……正当な……
拒否……
です……」
「……私は……
誰の……
所有物……
でも……
ありません……」
その瞬間。
空気が、
再び、
揺れた。
風でも、
魔力でもない。
“拒否”
そのものが、
世界に、
届いた。
(……あ……)
騎士の一人が、
無意識に後ずさる。
「……近づくな……」
誰に向けた言葉か、
分からなかった。
ただ、
“踏み込んではいけない”
という本能だけが、
彼らを縛った。
---
令嬢Cは、
一礼する。
「……これ以上……
付きまとわれる……
なら……」
「……正式に……
抗議……
いたします……」
「……学園……
及び……
教会……
双方に……」
騎士たちは、
動けなかった。
命令はある。
だが、
“実行”する理由が、
消えていた。
「……今日は……
失礼……
いたします……」
彼女は、
その場を離れる。
誰も、
止めなかった。
止められなかった。
---
その頃。
王太子ダイナスティは、
報告を受けていた。
「……拒否……
された……?」
「……はい……
殿下……」
「……命令……
した……
のに……?」
騎士の沈黙が、
答えだった。
ダイナスティは、
机を叩く。
「……ふざけるな……」
「……俺は……
王太子だぞ……!」
だが。
その怒りは、
すでに、
誰にも届いていなかった。
---
一方。
令嬢Cは、
自室で、
静かに座っていた。
(……拒否……
しました……)
(……怖かった……)
(……でも……)
(……これで……
いい……)
初めて、
彼女は、
“モブ”としてではなく、
自分の意思で立った。
それは、
派手な宣言でも、
奇跡でもない。
ただの、
拒否。
だが――
それこそが、
王子にとって、
最も受け入れ難いものだった。
物語は、
いよいよ――
最終局面へ。
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