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第十九話 崩れ始めた告白
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第十九話 崩れ始めた告白
中央広場で何も起きなかった――
その事実は、思った以上に早く、深く広がった。
人々は声高に非難しなかった。
それが、より致命的だった。
「失敗した」
「偽物だ」
そんな言葉よりも、
「……ああ、そういうことだったのね」
その一言の方が、信仰を静かに殺す。
翌日から、教会の前を訪れる人の数は目に見えて減った。
護符を求める列は消え、寄付箱の音も鳴らない。
代わりに増えたのは――質問だった。
「昨日の奇跡は?」
「なぜ何も起きなかったのですか?」
「説明は、いつ?」
教会の上層部は、完全に後手に回っていた。
「失敗ではない、あれは“準備段階”だ」
「信仰が足りなかったのだ」
「疑う心が、奇跡を遠ざけた」
どれも、以前なら通用した言葉だ。
だが今は違う。
問いかける側の目は、
すでに信じる目ではなかった。
マルガリータは、自室に閉じこもっていた。
豪奢な部屋。
だが、息が詰まる。
(……見られている)
窓の外。
廊下の気配。
信者だった者たちの視線。
すべてが、自分を測っているように感じる。
夜になると、悪夢が始まった。
夢の中で、白い衣をまとった女性が立っている。
表情はない。
ただ、じっと見ている。
――ヘレンヘレン。
言葉はない。
責めもない。
それが、何より恐ろしい。
「っ……!」
飛び起きると、背中は冷や汗で濡れていた。
翌朝、鏡を見て、マルガリータは息を呑む。
使用人の顔が――
一瞬、ヘレンヘレンに見えた。
「……気のせいよ」
そう言い聞かせるが、心臓の鼓動が早い。
昼、教会の幹部会が開かれた。
「このままではまずい」
「誰かが責任を取る必要がある」
「……聖女は?」
その言葉に、全員の視線が集まる。
マルガリータは、口を開こうとして、閉じた。
(……私?)
今まで、奇跡の象徴だった。
都合のいい看板だった。
だが今は――
切り捨てるのに、ちょうどいい存在。
その夜、再び悪夢を見る。
夢の中で、民衆がいる。
壇上に立つのは自分。
そして、全員の顔が――ヘレンヘレン。
声を出そうとしても、喉が凍りつく。
「……違う……」
目を覚ましたとき、
彼女は、理解していた。
このままでは、逃げられない。
一方、ヘレン・バートンは、屋敷で紅茶を飲みながら報告を聞いていた。
「聖女マルガリータ、精神的にかなり追い詰められているようです」
「そう」
ページをめくる手は、止まらない。
(そろそろですわね)
追い詰められた者は、
沈黙するか、
――話す。
そして、話す時は、
誰かのためではなく、自分を守るためだ。
ヘレンは、カップを置いた。
「……少し、やりすぎたかしら」
そう呟きながらも、視線は穏やかだった。
やりすぎたのではない。
彼らが、やりすぎていた。
その歪みが、
今、音を立てて戻ってきているだけだ。
数日後――
教会は、公開の場での「説明会」を告知する。
その中心に立つのが、
聖女マルガリータだということを、
ヘレンは、すでに知っていた。
中央広場で何も起きなかった――
その事実は、思った以上に早く、深く広がった。
人々は声高に非難しなかった。
それが、より致命的だった。
「失敗した」
「偽物だ」
そんな言葉よりも、
「……ああ、そういうことだったのね」
その一言の方が、信仰を静かに殺す。
翌日から、教会の前を訪れる人の数は目に見えて減った。
護符を求める列は消え、寄付箱の音も鳴らない。
代わりに増えたのは――質問だった。
「昨日の奇跡は?」
「なぜ何も起きなかったのですか?」
「説明は、いつ?」
教会の上層部は、完全に後手に回っていた。
「失敗ではない、あれは“準備段階”だ」
「信仰が足りなかったのだ」
「疑う心が、奇跡を遠ざけた」
どれも、以前なら通用した言葉だ。
だが今は違う。
問いかける側の目は、
すでに信じる目ではなかった。
マルガリータは、自室に閉じこもっていた。
豪奢な部屋。
だが、息が詰まる。
(……見られている)
窓の外。
廊下の気配。
信者だった者たちの視線。
すべてが、自分を測っているように感じる。
夜になると、悪夢が始まった。
夢の中で、白い衣をまとった女性が立っている。
表情はない。
ただ、じっと見ている。
――ヘレンヘレン。
言葉はない。
責めもない。
それが、何より恐ろしい。
「っ……!」
飛び起きると、背中は冷や汗で濡れていた。
翌朝、鏡を見て、マルガリータは息を呑む。
使用人の顔が――
一瞬、ヘレンヘレンに見えた。
「……気のせいよ」
そう言い聞かせるが、心臓の鼓動が早い。
昼、教会の幹部会が開かれた。
「このままではまずい」
「誰かが責任を取る必要がある」
「……聖女は?」
その言葉に、全員の視線が集まる。
マルガリータは、口を開こうとして、閉じた。
(……私?)
今まで、奇跡の象徴だった。
都合のいい看板だった。
だが今は――
切り捨てるのに、ちょうどいい存在。
その夜、再び悪夢を見る。
夢の中で、民衆がいる。
壇上に立つのは自分。
そして、全員の顔が――ヘレンヘレン。
声を出そうとしても、喉が凍りつく。
「……違う……」
目を覚ましたとき、
彼女は、理解していた。
このままでは、逃げられない。
一方、ヘレン・バートンは、屋敷で紅茶を飲みながら報告を聞いていた。
「聖女マルガリータ、精神的にかなり追い詰められているようです」
「そう」
ページをめくる手は、止まらない。
(そろそろですわね)
追い詰められた者は、
沈黙するか、
――話す。
そして、話す時は、
誰かのためではなく、自分を守るためだ。
ヘレンは、カップを置いた。
「……少し、やりすぎたかしら」
そう呟きながらも、視線は穏やかだった。
やりすぎたのではない。
彼らが、やりすぎていた。
その歪みが、
今、音を立てて戻ってきているだけだ。
数日後――
教会は、公開の場での「説明会」を告知する。
その中心に立つのが、
聖女マルガリータだということを、
ヘレンは、すでに知っていた。
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