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第二十話 告白の場
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第二十話 告白の場
説明会の日、中央広場は妙に静かだった。
人は集まっている。
だが、以前のような熱はない。
期待ではなく、確認。
信仰ではなく、結論。
その空気が、はっきりと漂っていた。
簡素な演台が設けられ、教会の幹部たちが並ぶ。
その中央に、聖女マルガリータが立っていた。
白い法衣は整えられているが、顔色は隠せない。
視線が、定まらない。
ヘレン・バートンは、人混みの端からその様子を見ていた。
目立たない位置。
だが、全体を見渡せる場所。
(逃げ場はありませんわね)
鐘が鳴り、説明会が始まる。
「本日は、お集まりいただき感謝いたします」
司教の声は、よく通る。
だが、民衆の反応は薄い。
「近頃の“奇跡”について、不安や疑念を抱かれた方も多いでしょう」
ざわり、と空気が動く。
「教会として、誠意をもって説明を――」
「その前に」
声を遮ったのは、マルガリータだった。
一瞬、幹部たちが息を呑む。
「……私から、話させてください」
沈黙。
司教は、止めるべきか迷い、
そして――止めなかった。
マルガリータは、民衆を見渡す。
いや、見渡せなかった。
視界に入る顔が、揺れる。
一瞬、誰かが――
ヘレンヘレンに見えた。
喉が鳴る。
「私は……」
声が震える。
だが、止まらなかった。
「私は、本当の聖女ではありません」
広場が、凍りつく。
「教会の指示で、装置や仕掛けを使い……
奇跡のように“見せて”いただけです」
一拍。
次の瞬間、
ざわめきが、怒涛のように広がった。
「やっぱり……」
「トリックだったのか」
「聖女様が……?」
幹部の一人が、慌てて前に出る。
「ま、待ちなさい!
それは――」
「違います!」
マルガリータは、叫ぶように言った。
「全部、私がやりました!
教会と一緒に……信じてくださった皆さんを……」
言葉が、詰まる。
膝が、震える。
「護符も……壺も……
祈りが込められているなんて……嘘です」
沈黙が落ちる。
怒号は、すぐには起きなかった。
人々は、ただ、理解しようとしていた。
――信じていたものが、最初から存在しなかったと。
司教の顔が、青ざめる。
「……この場での発言は、教会の公式見解では――」
「いいえ」
静かな声が、割り込んだ。
ヘレン・バートンだった。
人混みから一歩、前へ出る。
「公式見解かどうかは、もはや問題ではありませんわ」
視線が、彼女に集まる。
「聖女を名乗り、奇跡を売り、
恐怖と期待で金を集めた」
言葉は、淡々としている。
「それが事実かどうか。
それだけが、問われています」
誰も、否定できなかった。
マルガリータは、肩を落とす。
涙が、静かに落ちる。
「……ごめんなさい」
それは、言い訳ではなかった。
許しを乞う言葉でもない。
ただの、告白だった。
広場には、しばらく、声がなかった。
やがて――
誰かが、低く言った。
「……もう、終わりだな」
その一言で、すべてが決まった。
ヘレンは、静かに目を閉じる。
(ええ。終わりましたわ)
奇跡ではなく、
告白によって。
そしてこの瞬間、
聖女と教会は、
信じられる側から、
裁かれる側へと変わった。
説明会の日、中央広場は妙に静かだった。
人は集まっている。
だが、以前のような熱はない。
期待ではなく、確認。
信仰ではなく、結論。
その空気が、はっきりと漂っていた。
簡素な演台が設けられ、教会の幹部たちが並ぶ。
その中央に、聖女マルガリータが立っていた。
白い法衣は整えられているが、顔色は隠せない。
視線が、定まらない。
ヘレン・バートンは、人混みの端からその様子を見ていた。
目立たない位置。
だが、全体を見渡せる場所。
(逃げ場はありませんわね)
鐘が鳴り、説明会が始まる。
「本日は、お集まりいただき感謝いたします」
司教の声は、よく通る。
だが、民衆の反応は薄い。
「近頃の“奇跡”について、不安や疑念を抱かれた方も多いでしょう」
ざわり、と空気が動く。
「教会として、誠意をもって説明を――」
「その前に」
声を遮ったのは、マルガリータだった。
一瞬、幹部たちが息を呑む。
「……私から、話させてください」
沈黙。
司教は、止めるべきか迷い、
そして――止めなかった。
マルガリータは、民衆を見渡す。
いや、見渡せなかった。
視界に入る顔が、揺れる。
一瞬、誰かが――
ヘレンヘレンに見えた。
喉が鳴る。
「私は……」
声が震える。
だが、止まらなかった。
「私は、本当の聖女ではありません」
広場が、凍りつく。
「教会の指示で、装置や仕掛けを使い……
奇跡のように“見せて”いただけです」
一拍。
次の瞬間、
ざわめきが、怒涛のように広がった。
「やっぱり……」
「トリックだったのか」
「聖女様が……?」
幹部の一人が、慌てて前に出る。
「ま、待ちなさい!
それは――」
「違います!」
マルガリータは、叫ぶように言った。
「全部、私がやりました!
教会と一緒に……信じてくださった皆さんを……」
言葉が、詰まる。
膝が、震える。
「護符も……壺も……
祈りが込められているなんて……嘘です」
沈黙が落ちる。
怒号は、すぐには起きなかった。
人々は、ただ、理解しようとしていた。
――信じていたものが、最初から存在しなかったと。
司教の顔が、青ざめる。
「……この場での発言は、教会の公式見解では――」
「いいえ」
静かな声が、割り込んだ。
ヘレン・バートンだった。
人混みから一歩、前へ出る。
「公式見解かどうかは、もはや問題ではありませんわ」
視線が、彼女に集まる。
「聖女を名乗り、奇跡を売り、
恐怖と期待で金を集めた」
言葉は、淡々としている。
「それが事実かどうか。
それだけが、問われています」
誰も、否定できなかった。
マルガリータは、肩を落とす。
涙が、静かに落ちる。
「……ごめんなさい」
それは、言い訳ではなかった。
許しを乞う言葉でもない。
ただの、告白だった。
広場には、しばらく、声がなかった。
やがて――
誰かが、低く言った。
「……もう、終わりだな」
その一言で、すべてが決まった。
ヘレンは、静かに目を閉じる。
(ええ。終わりましたわ)
奇跡ではなく、
告白によって。
そしてこの瞬間、
聖女と教会は、
信じられる側から、
裁かれる側へと変わった。
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