『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ

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【第10話 崩れ始める王宮】

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【第10話 崩れ始める王宮】

王宮。

財務室の空気は重かった。

机の上には書類が山のように積まれている。

財務官たちは青ざめた顔で立ち尽くしていた。

その中央で――

カルディオン王太子が怒鳴っていた。

「まだ金がないのか!」

「申し訳ございません!」

財務官が頭を下げる。

「貴族銀行はすべて融資を拒否しております!」

「なぜだ!」

カルディオンは机を叩く。

「王家だぞ!」

財務官は震える声で言った。

「理由は明確です」

「クレスト公爵家の保証がなくなったため」

カルディオンの顔が引きつる。

その名前は、もう何度聞いただろう。

クレスト公爵家。

そして――

アリアベル。

「……あの女」

彼は歯を食いしばった。

その時。

「殿下!」

騎士が駆け込んできた。

「何だ!」

「王都商会連盟から報告です!」

「またか!」

騎士は言った。

「王家への物資供給を停止するそうです!」

「……は?」

カルディオンは呆然とする。

「食料、布、鉄材……」

「すべてです」

「理由は?」

騎士は答えた。

「クレスト公爵家との契約を優先するため」

カルディオンは頭を抱えた。

「またあの女か!」

その時。

扉が開く。

エルネスタが入ってきた。

今日も美しいドレスを着ている。

「殿下」

彼女は心配そうに言った。

「大丈夫ですか?」

カルディオンは疲れた顔で椅子に座った。

「大丈夫ではない」

「金がない」

「商人も逃げた」

エルネスタは小さく息を呑む。

「まあ……」

だがすぐに優しく微笑んだ。

「でも安心してください」

「何?」

「王家は強いです」

「きっと皆助けてくれます」

カルディオンはうなずく。

「そうだ」

「王家だぞ!」

しかし財務官が小さく言った。

「殿下」

「何だ!」

「すでに多くの貴族が」

「距離を置いております」

カルディオンは怒鳴った。

「なぜだ!」

財務官は答えた。

「クレスト公爵家の意向を見ているためです」

沈黙。

カルディオンの拳が震えた。

「……あの女」

彼は低く呟いた。

「王国を人質にしているのか」

その頃。

北方。

クレスト公爵城の庭。

私はのんびり散歩していた。

空気が冷たい。

だが心地よい。

遠くで騎士たちが訓練している。

その中にアシュレイの姿があった。

私は近づく。

「訓練ですか」

彼は剣を下ろした。

「日課だ」

私は感心する。

騎士団の動きは見事だった。

「強いですね」

「仕事だからな」

私は少し考えてから言った。

「王都の話は?」

アシュレイは短く答える。

「混乱」

「でしょうね」

私は笑った。

彼は続ける。

「貴族も商人も距離を取っている」

「予想通りです」

私は空を見上げる。

青く澄んだ北方の空。

「王国は」

私は静かに言う。

「少し痛い目を見たほうがいいのです」

アシュレイは黙って聞いていた。

「殿下は」

私は肩をすくめる。

「経済を知らない」

「その結果です」

アシュレイはぽつりと言う。

「あなたが戻れば」

「すべて解決する」

私は首を横に振る。

「戻りません」

「なぜ」

私は笑った。

「ここが楽しいからです」

彼は少し驚いた顔をした。

「楽しい?」

「ええ」

私は城を見た。

領地。

領民。

仕事。

「私は」

私はゆっくり言う。

「ここで生きていきます」

アシュレイはしばらく黙っていた。

そして小さく言う。

「王太子は」

「本当に愚かだ」

私は軽く笑った。

北方の風が吹く。

王都では今、王宮が崩れ始めている。

けれど。

ここではまだ誰も慌てていなかった。

物語は――

これからさらに大きく動き始める。
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