『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ

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【第11話 広がる噂】

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【第11話 広がる噂】

王都の社交界は、これまでにないほど騒がしかった。

「聞きまして?」

「もちろんですわ」

貴族のサロンでは、令嬢たちが扇で口元を隠しながらささやき合っている。

「王太子殿下が公爵令嬢に逃げられたとか」

「逃げられたのではありませんわ」

別の貴婦人が言った。

「捨てられたのです」

周囲が静かになる。

そして誰かが小さく言う。

「……本当なの?」

男爵夫人が頷く。

「王家の資金が止まりました」

「王都の商会も取引停止」

「銀行も融資を拒否」

「すべてクレスト公爵家の影響です」

令嬢たちは目を丸くした。

「そんなに大きな力だったの?」

「ええ」

男爵夫人はため息をついた。

「それを王太子殿下は知らなかったのです」

別の令嬢が呟く。

「エルネスタ様はどうなさるの?」

「さあ……」

貴婦人は肩をすくめる。

「最近、社交界にも出てきませんわ」

実際――

その頃、王宮では。

「殿下……」

エルネスタは困った顔をしていた。

カルディオンは苛立って歩き回っている。

「また商人が契約を断ってきた!」

「理由は?」

「クレスト公爵家だ!」

彼は怒鳴った。

「皆あの女の顔色を見ている!」

エルネスタは小さく言う。

「お姉様は昔からそうでした」

「皆を操るのが上手なのです」

カルディオンは拳を握る。

「俺は間違っていない!」

「もちろんです!」

エルネスタは優しく微笑む。

「殿下は正しいです」

しかしその心の中では――

(困りましたわね)

と冷静に考えていた。

王太子妃になる予定だった。

だが最近、王宮の空気が変わっている。

貴族たちの態度も冷たい。

(このままでは……)

その時。

扉が勢いよく開いた。

騎士が飛び込んでくる。

「殿下!」

「何だ!」

「貴族会議から通達です!」

「読め!」

騎士は震える声で言った。

「王家の財政が安定するまで」

「新しい政策はすべて凍結」

カルディオンは絶句した。

「……俺の命令が」

「通らない?」

騎士は答える。

「はい」

沈黙が流れる。

王太子の権力が揺らいでいた。

その頃。

北方のクレスト公爵領。

私は広い畑を歩いていた。

黄金色の麦が風に揺れている。

「今年も豊作です」

農場長が誇らしげに言った。

「それは良かった」

私は笑う。

「新しい農法が成功しましたね」

農場長は何度も頷く。

「お嬢様のおかげです」

私は畑を見渡す。

広大な土地。

豊かな作物。

ここには可能性がある。

その時。

遠くから馬が近づいてきた。

アシュレイだった。

「探した」

「どうしました?」

彼は馬から降りる。

「王都から情報だ」

「またですか」

私は苦笑した。

アシュレイは短く言う。

「王太子の権力が揺らいでいる」

「もう?」

「貴族会議が動いた」

私は少し考える。

「早いですね」

「それだけ影響が大きい」

私は麦畑を見る。

「私は何もしていません」

「婚約を解消しただけです」

アシュレイは静かに言った。

「それが一番怖い」

私は首をかしげる。

「怖い?」

彼は頷く。

「あなたは」

「王国を動かせる」

風が吹く。

麦が波のように揺れる。

私は小さく笑った。

「そんな大げさな」

だがアシュレイは真剣だった。

「いや」

「本当だ」

遠くで鐘が鳴る。

北方の平和な音。

その一方で――

王都では。

王太子の立場が、少しずつ崩れ始めていた。
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