『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ

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【第12話 動き出す貴族】

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【第12話 動き出す貴族】

王都。

王宮の会議室には、重苦しい空気が流れていた。

長いテーブルの周りに座るのは、王国の有力貴族たち。

侯爵、伯爵、そして財務卿。

その中央には王太子カルディオンが座っていた。

「……つまり」

彼は苛立った声で言った。

「金がないから政策が進まないと言いたいのか?」

誰もすぐには答えなかった。

やがて財務卿が慎重に言う。

「殿下」

「王家の資金は現在、極めて厳しい状況です」

カルディオンは机を叩いた。

「だから集めろと言っている!」

「増税でも何でもいい!」

その言葉に、貴族たちの顔がわずかに曇った。

伯爵の一人が静かに言う。

「増税は難しいでしょう」

「なぜだ!」

「商会がすでに取引を縮小しております」

別の侯爵も言う。

「港の物流も減っております」

「原因は明白です」

カルディオンは歯を食いしばる。

「……クレスト家か」

沈黙が答えだった。

その時。

一人の老侯爵がゆっくり口を開いた。

「殿下」

「何だ」

「今からでも遅くありません」

カルディオンは眉をひそめる。

「何の話だ」

老侯爵ははっきり言った。

「アリアベル様に謝罪なさってください」

会議室が静まり返る。

カルディオンの顔が真っ赤になった。

「ふざけるな!」

「俺があの女に頭を下げるだと!」

老侯爵は淡々としている。

「それが王国のためです」

カルディオンは立ち上がった。

「絶対に嫌だ!」

その瞬間。

会議室の空気が冷えた。

貴族たちは互いに視線を交わす。

誰も声を出さなかった。

だが、皆同じことを思っていた。

(この王太子は危ない)

その頃――

北方のクレスト公爵城。

執務室の窓から、私は外を眺めていた。

広い畑。

忙しく働く領民たち。

平和な光景だ。

「お嬢様」

アルフレッドが書類を持ってくる。

「新しい交易の提案です」

「どこから?」

「北海商会です」

私は書類を読んだ。

そしてすぐ言う。

「いいですね」

「契約しましょう」

アルフレッドが少し驚く。

「ずいぶん早い判断です」

「利益が大きいですもの」

私はペンを走らせる。

「北方港が完成すれば、もっと増えます」

アルフレッドは静かに頷いた。

その時。

扉がノックされた。

「入って」

扉が開く。

入ってきたのはアシュレイだった。

「忙しそうだな」

「いつものことです」

私は笑う。

彼は机の書類を見る。

「領地経営は順調そうだ」

「ええ」

私は頷く。

「王都より簡単です」

アシュレイは少し笑った。

「政治がないからか」

「ええ」

私は紅茶を飲む。

「それで?」

「今日は何の話です?」

アシュレイは言った。

「貴族会議だ」

私は顔を上げる。

「何か決まりました?」

彼は短く答えた。

「王太子への支持が揺らいでいる」

私は小さく息を吐く。

「でしょうね」

アシュレイは続けた。

「謝罪を勧めた貴族もいた」

「結果は?」

「拒否」

私は苦笑した。

「殿下らしいですわ」

アシュレイは私を見た。

「あなたが戻れば」

「王国は安定する」

私は首を横に振る。

「戻りません」

「なぜ」

私は窓の外を見る。

北方の空は広い。

「私は」

ゆっくり言う。

「ここで生きると決めました」

アシュレイはしばらく黙っていた。

そしてぽつりと呟く。

「王国は」

「本当に大きなものを失ったな」

私は何も答えなかった。

ただ微笑む。

遠くで鐘が鳴る。

北方の静かな午後だった。

だが王都では。

王太子の立場が、さらに大きく揺らぎ始めていた。
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