『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ

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【第25話 動き出す影】

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【第25話 動き出す影】

王都。

元王太子カルディオンの屋敷。

夜は深く、街も静まり返っていた。

だが屋敷の一室では、まだ灯りが消えていない。

カルディオンは机の前に座っていた。

酒はもう置いていない。

その代わり、地図が広げられている。

王国北方。

クレスト公爵領。

そして――北方港。

カルディオンは低く呟いた。

「遠いな」

その時、扉が開く。

側近が入ってきた。

「殿下」

「調べさせたことは」

側近は少し迷ったが答えた。

「北方港の警備は強くありません」

カルディオンの目が光る。

「続けろ」

「港は商人の出入りが多く」

「外部の人間も入りやすい」

カルディオンはゆっくり立ち上がる。

「なるほど」

側近は慌てて言う。

「ですが殿下!」

「何だ」

「危険です」

「今の殿下が動けば」

「問題になります」

カルディオンは笑った。

だがその笑みは冷たい。

「俺はもう王太子じゃない」

「だから自由だ」

側近は青ざめる。

「殿下……」

カルディオンは窓を開けた。

夜風が部屋に入る。

遠くに王宮の灯りが見える。

「全部あいつのせいだ」

「王太子も」

「権力も」

「すべて失った」

カルディオンは拳を握る。

「アリアベル」

その名を口にした瞬間。

彼の顔は歪んだ。

「……俺のものだった」

側近は震える声で言う。

「殿下」

「おやめください」

カルディオンは振り向いた。

その目は狂気に近い。

「やめない」

「取り戻す」

沈黙。

やがてカルディオンは言った。

「準備しろ」

側近は息をのむ。

「まさか……」

「北方へ行く」

側近は絶句した。

「それは!」

「誘拐と同じです!」

カルディオンは冷たく笑う。

「違う」

「婚約者を迎えに行くだけだ」

その頃。

北方港。

朝日が海を照らしていた。

港はすでに活気に満ちている。

荷物を運ぶ人々。

船員の掛け声。

私は埠頭の上からその光景を見ていた。

アルフレッドが報告する。

「南方船が二隻到着しました」

「倉庫は?」

「まだ余裕があります」

私は頷く。

「では荷下ろしを」

アルフレッドは微笑んだ。

「お嬢様」

「何です?」

「この港は本当に成長しました」

私は少しだけ笑う。

「皆が働いた結果です」

その時。

アシュレイが歩いてきた。

「朝から忙しそうだ」

「港ですもの」

私は海を見る。

船が次々と入ってくる。

「ここは」

「王国の新しい玄関になります」

アシュレイは腕を組む。

「王都港が怒るな」

「競争です」

私は平然と言った。

「商人は賢いですから」

アシュレイは少し笑った。

「確かにな」

その時。

遠くの水平線に、小さな船影が見えた。

私はそれをちらりと見る。

ただの船。

そう思った。

だが――

その船は王都から来ていた。

そしてその中には。

歪んだ執念を抱えた男が、静かに北方へ向かっていた。
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