『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ

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【第29話 完全な終わり】

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【第29話 完全な終わり】

北方港の執務室。

部屋の空気は張り詰めていた。

兵士に囲まれたカルディオン。

その正面に立つ私。

そして隣にはアシュレイ。

カルディオンは私を見つめていた。

歪んだ笑み。

「迎えに来た」

その言葉が部屋に残る。

私はゆっくりと首を傾げた。

「迎えに?」

カルディオンは頷く。

「そうだ」

「お前は俺の婚約者だ」

「王太子妃になるはずだった」

アシュレイが冷たく言う。

「元王太子」

「その話は終わっている」

カルディオンは睨む。

「黙れ」

「弟ごときが」

アシュレイの目が細くなる。

だが私は一歩前に出た。

「カルディオン殿下」

彼の視線が私に戻る。

私は静かに言った。

「婚約は」

「あなたが破棄しました」

沈黙。

カルディオンの表情が一瞬だけ揺れる。

「……あれは」

「誤解だ」

私は首を横に振る。

「違います」

「あなたは大広間で宣言しました」

「証人もいます」

カルディオンは言葉に詰まる。

私は続けた。

「私は追い出されました」

「すべて終わりました」

カルディオンは声を荒げる。

「だから迎えに来た!」

「やり直せばいい!」

「俺は王太子だった!」

その言葉に、私は少し驚いた。

(まだ気づいていないのね)

私は静かに言った。

「殿下」

カルディオンは私を見る。

「あなたは」

「もう王太子ではありません」

沈黙。

カルディオンの顔が歪む。

「……知っている」

低い声だった。

「だからだ」

「すべて戻す」

「お前が戻れば」

「俺は――」

その時。

アシュレイが遮った。

「それは無理だ」

カルディオンが睨む。

「黙れ!」

アシュレイは淡々と言う。

「お前はもう王太子ではない」

「王家の決定だ」

カルディオンは笑った。

「王家?」

「父上か」

アシュレイは答えない。

私は静かに言った。

「殿下」

カルディオンは私を見る。

「あなたは」

「すべて失いました」

その言葉は静かだった。

だが重かった。

「王太子」

「権力」

「そして」

私は彼をまっすぐ見た。

「私」

沈黙。

カルディオンの呼吸が荒くなる。

「……違う」

彼は呟く。

「お前は」

「俺のものだ」

その瞬間。

アシュレイの声が鋭く響いた。

「兵士」

「はい」

「元王太子カルディオン」

「公爵領への不法侵入」

「誘拐未遂」

カルディオンが叫ぶ。

「待て!」

だがアシュレイは続けた。

「王都へ送還する」

兵士が動く。

カルディオンは暴れた。

「アリアベル!」

私は動かない。

「お前は俺の婚約者だ!」

「俺のものだ!」

私は静かに言った。

「違います」

兵士が彼を引きずる。

カルディオンの声が遠ざかる。

「アリアベル!」

扉が閉まる。

部屋は静かになった。

しばらく沈黙。

私は窓の外を見る。

港はいつも通り賑やかだ。

船の鐘。

商人の声。

何も変わらない。

アシュレイが言う。

「終わったな」

私は小さく頷く。

「ええ」

そして微笑んだ。

「やっと」

風が窓から入る。

港の旗が揺れる。

私は静かに呟いた。

「完全に終わりました」

長かった因縁が――

ここでようやく終わったのだった。
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