『公爵家を乗っ取った男爵一家は、家系図から消えました』 ―偽令嬢は王太子妃を夢見て国外追放、私は公爵として責務を果たします―

ふわふわ

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第十三話 王太子の否認

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第十三話 王太子の否認

王宮の大理石の床は、やけに冷たく光っていた。

正式審理の日。

傍聴席には貴族たちが並び、ひそひそと囁き合っている。

“偽の公爵令嬢”

“王太子を騙した男爵一家”

噂はすでに広がっていた。

前方、被告席に立つグレゴール男爵。

その隣に、蒼白な夫人と娘。

豪奢だったはずの装いは、どこかみすぼらしく見える。

視線が痛い。

そして。

高座に現れたのは、王太子。

冷え切った表情。

従妹の目が潤む。

「殿下……」

縋るような声。

だが王太子は、彼女を見ない。

審理官が読み上げる。

「爵位僭称、公文書偽造、王家欺瞞の疑い」

一つずつ。

重い罪名。

「王太子殿下との婚約協議は、虚偽の身分に基づくものと確認された」

広間がざわめく。

従妹が立ち上がる。

「違います! 殿下は私を……!」

王太子が、初めて口を開いた。

「私は、公爵令嬢と聞いていた」

冷たい声。

「男爵令嬢とは、聞いていない」

その一言で、すべてが断ち切られる。

従妹の顔が崩れる。

「そんな……でも、私は殿下と踊って……」

「社交辞令だ」

容赦ない。

笑みもない。

グレゴールが叫ぶ。

「殿下! あなたも承認したはずだ!」

「承認は、公爵家当主確認が前提」

静かな断定。

責任を背負わない言葉。

だが、法的には正しい。

王太子は被害者側に回った。

利用価値が消えた瞬間、切り捨てられた。

審理官がエレノアへ向く。

「公爵エレノア殿、異議は?」

「ございません」

淡々と。

揺れない。

「直系当主として、婚約を否認します」

はっきりと。

広間が息を呑む。

婚約は完全に消えた。

従妹が崩れ落ちる。

「私は王太子妃になるはずだったのに……」

王太子は視線すら向けない。

審理官が続ける。

「男爵家は王家を欺き、虚偽の持参金を提示した」

「その資金は、公爵家資産」

つまり、詐欺。

グレゴールの声が震える。

「家族の問題だろう!」

「国家を巻き込んだ時点で、家族では済まない」

審理官の声は冷たい。

傍聴席から小さな嘲笑。

“成り上がり”

“身の程知らず”

叔母が立ち上がる。

「触らないで! 私は公爵夫人よ!」

近衛兵が一歩前に出る。

「あなたは男爵夫人。現在は被告」

はっきりと。

「いえ」

審理官が付け加える。

「爵位剥奪審議中」

その言葉に、夫人の膝が崩れる。

従妹が泣き叫ぶ。

「殿下! 助けて!」

王太子は淡々と告げる。

「私は被害者だ」

その瞬間。

完全に、見捨てられた。

エレノアは静かに見ている。

感情は見せない。

グレゴールの目が彼女を睨む。

「お前のせいだ!」

「いいえ」

静かな否定。

「あなたの選択の結果です」

その一言が、決定打になる。

審理官が宣告する。

「婚約無効。持参金詐欺成立の可能性大」

最終判決は次回。

だが、流れは決まった。

王太子は立ち上がる。

一度も、振り返らない。

従妹は床に崩れ落ちたまま。

傍聴席の視線が刺さる。

もはや、社交界に居場所はない。

エレノアはゆっくりと立ち上がる。

広間を出る。

背後で、泣き声が響く。

だが、足は止まらない。

王太子の否認。

それは、最後の希望の崩壊。

次は判決。

そしてその先にあるのは――

完全な転落。

救いは、ない。
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