『公爵家を乗っ取った男爵一家は、家系図から消えました』 ―偽令嬢は王太子妃を夢見て国外追放、私は公爵として責務を果たします―

ふわふわ

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第二十八話 王妃教育ではなく、公爵会議

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第二十八話 王妃教育ではなく、公爵会議

婚約発表から数日後。

王宮では、未来の王太子妃としての予定表が用意されていた。

舞踏礼儀、外交作法、王妃教育。

整然と並ぶ講義名。

だが――

エレノアは王宮ではなく、公爵邸の大会議室にいた。

長机を囲むのは、各領地の代官と商会代表。

「南方港湾の再整備案について」

彼女は書類を広げる。

迷いはない。

王妃になるからといって、公爵を手放すわけではない。

王宮側の教育係が戸惑いの表情を浮かべる。

「本日は王妃作法の講義が……」

エレノアは穏やかに微笑む。

「日程調整をお願いいたします」

断っているのではない。

優先順位を示している。

公爵家の会議は、止めない。

王太子はその報告を受け、しばらく沈黙した。

廷臣が慎重に言う。

「王妃教育を軽んじているとの声も」

王太子は首を振る。

「違う」

短く。

「彼女は、公爵を軽んじないだけだ」

理解している。

それが彼女の強さだと。

公爵邸。

会議は白熱していた。

「港湾税を一律に下げれば交易が増えます」

「だが初期投資が必要だ」

エレノアは冷静にまとめる。

「長期的な利益を優先します」

数字に迷いはない。

叔父が残した無秩序な契約は整理済み。

今は成長の段階。

ルークが小声で言う。

「王宮側は驚いています」

「当然です」

エレノアは視線を上げる。

「私は飾りではありませんから」

その言葉は柔らかいが、強い。

北部鉱山。

風が墓標のない土を削る。

もう誰も名前を思い出さない。

番号も消えかけている。

完全な終わり。

王都では、新しい噂が流れる。

「未来の王妃が自ら会議を主導している」

「王家と並び立つ公爵家」

尊敬と畏怖が混ざる。

夜。

王太子が公爵邸を訪れる。

執務室の灯りはまだ消えていない。

「忙しいな」

彼は苦笑する。

「公爵ですので」

即答。

机には港湾再整備案。

王太子がそれを見る。

「この投資、王家にも利益がある」

「ええ」

視線が交わる。

「王家と公爵家は、共に成長するべきです」

対等。

その姿勢は変わらない。

王太子は静かに言う。

「私は、あなたを選んで正解だった」

エレノアは少しだけ微笑む。

「私は、条件を選びました」

王太子は笑う。

夜風が窓から入る。

薔薇の香り。

強ザマァは遠い過去。

今は未来の設計図。

エレノアは立ち上がる。

「王妃教育は受けます」

一拍。

「ですが、公爵会議は止めません」

王太子は頷く。

「止めるな」

それが答え。

少女だった公爵令嬢。

今は当主。

そして未来の王妃。

だが順番は変わらない。

公爵が先。

揺るがない軸。

物語は、完全に次の段階へ進んでいた。
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