二世代の伝説の歌姫 〜ラストナンバーは終わらない〜

ふわふわ

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第5章‑3:泉と明の作戦会議

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第5章‑3:泉と明の作戦会議

 深夜、優を自宅まで送り届けたあと。当麻明と佐々木泉は、彼女の鍵のかかった自室のドア前で立ち尽くした。廊下の電気は消え、月明かりだけが窓から差し込んでいる。

「本当に、あんな事になるなんて…」
 泉は膝まである制服のスカートを軽くつかみ、溜息を吐いた。
「優ちゃん、あれで完全に心が折れたね」

 明はスマホをオフにしてポケットにしまい込みながら、静かに答えた。
「うん…でも、あのままだと本当に学校に戻れなくなる。来週から期末テストもあるし、優が授業を休み続けたら単位どころじゃない」

 二人は少し離れた場所まで歩き、廊下の壁にもたれかかる。
「どうする? 無理やり教室に連れてくるか…それとも、段階的に慣らすか…」
 明の声には焦りが混じっていた。

「さすがに無理やりはダメだよ。トラウマを強化するだけだし」
 泉は眉をひそめ、スマホのメモアプリに何かを書き込む仕草を見せた。
「“段階的な慣らし”がいいかも。まずは、校門前まで一緒に行っていい?」
「…それでダメなら、次は隣のクラスの空き教室で勉強させるとか?」
 明が案を出しながら、隣のマンションの窓を見上げた。

 泉は続きを考え込み、指先でメモをスクロールした。
「まずは“前髪の見えない練習”だね。美容師さんに短く切ってもらって、リボンで軽くまとめる。それから区立図書館かカフェで、髪が視界に入らない状態で勉強できるってことから始めるの」
「それなら、人目を避けつつも“外に出る”練習になるな…」
 明は短く笑みを浮かべた。

 泉はわずかに頷き、作戦を整理する。

> ステップ1:ヘアカット&リボン装着
美容院へ二人で連れて行き、優の了解を得た上で前髪を軽く切る。目に入らない長さに調整。リボンやヘアピンで留めて、少しだけ素顔を出す。



> ステップ2:公共スペースでの練習
翌日は、図書館の学習室や近所の小規模カフェで三人で勉強会。周囲の目線に慣れつつも、勉強が目的なので視線を集めにくい。



> ステップ3:校門前ウォーキング
前髪の練習後、登校時間に合わせて校門前まで歩く。優が振り返らないように、明と泉が両脇を固め、安心感を与えながら進む。



> ステップ4:短時間教室体験
授業開始前の時間帯、優だけ入室して席に座るだけ。担任には「見学」という形で協力を依頼。徐々に滞在時間を延ばす。



> ステップ5:完全復帰
テスト前に通常登校を達成。前髪も自由に戻せるよう、優の心が安定。



 明はペンを取り出し、スマホの画面にステップを書き込む。
「これでどうだ? 計画的に慣らせば、優も少しずつ“学校”を安全地帯に感じられるかもしれない」

 泉は明の肩に手を置き、優しい笑顔を向けた。
「うん。少しずつ、自信を取り戻してもらおう。優ちゃんが“自分の居場所”だと思えるように」

 二人はそのまま、静かな夜の廊下で決意を固めた。
 夜空には星がきらめき、遠くで聞こえる犬の遠吠えが、まるで応援してくれているかのようだった。

 ──学校再登校への道のりは、まだ始まったばかり。
 しかし、二人の“幼馴染&親友タッグ”は、どんな困難にも立ち向かう覚悟を胸に抱いていた。
 その先に、優が再び笑顔で教壇の黒板を眺める日が来ることを、信じて——。


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