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第二十三話 内なる火種
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第二十三話 内なる火種
外からの圧力を退けたことで、王都はひとときの安堵に包まれた。
港湾は安定し、長期契約の成立により商人たちの顔にも笑みが戻る。市場の価格も大きく揺れることはない。
王家の評価も、ゆるやかに持ち直していた。
――だが、均衡が整えば整うほど、別の感情が芽吹く。
それは嫉妬。
それは不満。
王宮内、貴族控室。
「最近、ヴァルテール公爵家の影響が強すぎる」
「王家は制度に縛られすぎではないか」
「王太子が主導しているのか、それとも……」
言葉は濁される。
だが、その矛先は明確だった。
王太子が制度を受け入れ、王太子妃候補が学び始めたことで、均衡は安定した。
だが、それは同時に、古い派閥の居場所を狭める。
軍部強硬派の一角が、ひそかに動き始めていた。
「隣国との契約は弱腰だ」
「北方に頼るのは危険」
「王太子は、以前の決断力を失った」
その言葉は、誇りを刺激する。
王宮、書斎。
「殿下、軍部より非公式な意見書が」
ガレインが差し出す。
レオニードは目を通し、表情を変えない。
「弱腰、か」
「扇動の兆しです」
「放っておけ」
そう言いながらも、胸の奥に火が灯る。
強くあれ。
それが王に求められる姿。
一方、教育機関。
本日の講義は「権力と感情」。
「外圧よりも危険なのは内圧です」
私は静かに語る。
「誇りを刺激された者は、理より感情で動きます」
ミレーヌが問いかける。
「止める方法は」
「止めるのではありません」
私は黒板に一語を書く。
『吸収』
「正面から否定すれば、火は大きくなる」
教室が静まる。
「役割を与え、責任を共有させる」
その言葉に、彼女は深く頷く。
夜。
王宮の回廊で、ミレーヌがレオニードに告げる。
「軍部強硬派の意見、取り入れては」
「取り入れる?」
「一部を」
彼は眉をひそめる。
「譲歩か」
「責任を分けるのです」
彼女は続ける。
「軍需増額の一部を、防衛研究に回す。彼らに管理を任せる」
レオニードは沈黙する。
誇りを否定せず、活かす。
理で包む。
「……評議会に出そう」
翌日。
評議会にて、防衛研究予算案が提示される。
軍部強硬派の代表が、意外そうな顔をする。
「我々に管理を?」
「成果を出せば、次年度増額も検討」
レオニードは落ち着いて言う。
反発は起きなかった。
むしろ、責任を与えられたことで、火は鎮まる。
夜。
私は報告を受ける。
「軍部派閥、沈静化傾向」
「予定通りです」
クラウスが言う。
「内圧は外圧より複雑です」
「ええ」
私は窓の外を見た。
王宮の灯りは安定している。
だが、その内側で誇りは揺れ続ける。
王太子は、感情を抑え、制度へと委ねた。
王太子妃候補は、吸収の理を示した。
均衡は、再び保たれた。
だが、私は理解している。
火種は消えたわけではない。
役割を与えられた者が成果を出せなければ、再び燻る。
王は選ばれるだけでは足りない。
選び、与え、支える。
そして、王妃もまた、影から火を調整する。
並び立つ影は、以前より近い。
だが、影が重なるほど、輪郭は曖昧になる。
私は小さく息を吐く。
「均衡は、静かな綱渡りですわね」
王都は静かだ。
だが、その静けさの奥で、次の試練が形を成しつつあった。
外からの圧力を退けたことで、王都はひとときの安堵に包まれた。
港湾は安定し、長期契約の成立により商人たちの顔にも笑みが戻る。市場の価格も大きく揺れることはない。
王家の評価も、ゆるやかに持ち直していた。
――だが、均衡が整えば整うほど、別の感情が芽吹く。
それは嫉妬。
それは不満。
王宮内、貴族控室。
「最近、ヴァルテール公爵家の影響が強すぎる」
「王家は制度に縛られすぎではないか」
「王太子が主導しているのか、それとも……」
言葉は濁される。
だが、その矛先は明確だった。
王太子が制度を受け入れ、王太子妃候補が学び始めたことで、均衡は安定した。
だが、それは同時に、古い派閥の居場所を狭める。
軍部強硬派の一角が、ひそかに動き始めていた。
「隣国との契約は弱腰だ」
「北方に頼るのは危険」
「王太子は、以前の決断力を失った」
その言葉は、誇りを刺激する。
王宮、書斎。
「殿下、軍部より非公式な意見書が」
ガレインが差し出す。
レオニードは目を通し、表情を変えない。
「弱腰、か」
「扇動の兆しです」
「放っておけ」
そう言いながらも、胸の奥に火が灯る。
強くあれ。
それが王に求められる姿。
一方、教育機関。
本日の講義は「権力と感情」。
「外圧よりも危険なのは内圧です」
私は静かに語る。
「誇りを刺激された者は、理より感情で動きます」
ミレーヌが問いかける。
「止める方法は」
「止めるのではありません」
私は黒板に一語を書く。
『吸収』
「正面から否定すれば、火は大きくなる」
教室が静まる。
「役割を与え、責任を共有させる」
その言葉に、彼女は深く頷く。
夜。
王宮の回廊で、ミレーヌがレオニードに告げる。
「軍部強硬派の意見、取り入れては」
「取り入れる?」
「一部を」
彼は眉をひそめる。
「譲歩か」
「責任を分けるのです」
彼女は続ける。
「軍需増額の一部を、防衛研究に回す。彼らに管理を任せる」
レオニードは沈黙する。
誇りを否定せず、活かす。
理で包む。
「……評議会に出そう」
翌日。
評議会にて、防衛研究予算案が提示される。
軍部強硬派の代表が、意外そうな顔をする。
「我々に管理を?」
「成果を出せば、次年度増額も検討」
レオニードは落ち着いて言う。
反発は起きなかった。
むしろ、責任を与えられたことで、火は鎮まる。
夜。
私は報告を受ける。
「軍部派閥、沈静化傾向」
「予定通りです」
クラウスが言う。
「内圧は外圧より複雑です」
「ええ」
私は窓の外を見た。
王宮の灯りは安定している。
だが、その内側で誇りは揺れ続ける。
王太子は、感情を抑え、制度へと委ねた。
王太子妃候補は、吸収の理を示した。
均衡は、再び保たれた。
だが、私は理解している。
火種は消えたわけではない。
役割を与えられた者が成果を出せなければ、再び燻る。
王は選ばれるだけでは足りない。
選び、与え、支える。
そして、王妃もまた、影から火を調整する。
並び立つ影は、以前より近い。
だが、影が重なるほど、輪郭は曖昧になる。
私は小さく息を吐く。
「均衡は、静かな綱渡りですわね」
王都は静かだ。
だが、その静けさの奥で、次の試練が形を成しつつあった。
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