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第二十六話 玉座の問い
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第二十六話 玉座の問い
王国が安定期に入りつつある――その評価が定着した頃。
王宮で、ひとつの議題が静かに持ち上がった。
「王太子殿下の正式な王太子妃冊立について」
それは、いずれ避けられぬ話だった。
制度は整い、財政は持ち直し、外圧は退けた。
ならば次は、象徴。
王と王妃の確定。
評議会室。
「王太子妃候補ミレーヌ様の正式冊立を進めるべきでは」
保守派の貴族が口を開く。
「王家の安定を内外に示す機会」
「民の支持も高まっております」
ざわめきが広がる。
レオニードは静かに聞いている。
以前なら、即断していただろう。
だが、いまは違う。
「……急ぐ必要はあるか」
その問いに、室内がわずかに揺れる。
「安定している今こそ」
「王妃教育機関での成長も示せます」
国王がゆっくりと息を吐いた。
「王太子」
「はい」
「王妃は飾りではない」
「承知しております」
「ならば、お前が決めよ」
重い言葉。
玉座の隣を誰にするか。
それは、制度では決められない。
一方、教育機関。
本日の講義は「王妃の最終責任」。
「冊立とは、終点ではありません」
私は静かに言う。
「それは始まりです」
教室が静まり返る。
「王妃は、王の決断に連帯責任を持つ存在」
ミレーヌは真っ直ぐに私を見る。
「覚悟は、ございますか」
私は問いかけた。
彼女は一瞬、目を閉じ、そして頷く。
「はい」
その声に迷いはない。
夜。
王宮の書斎。
「冊立の話が出ている」
レオニードが言う。
「存じております」
ミレーヌは静かに答える。
「……怖くはないか」
「怖いです」
彼女は正直に言う。
「ですが、逃げません」
沈黙。
「わたくしは、選ばれるだけの存在ではなくなりたい」
その言葉に、レオニードの目がわずかに揺れる。
「並び立ちたいのです」
それは願いではなく、宣言。
翌日。
私は王宮へ呼ばれた。
評議会室ではなく、国王の私室。
「ヴァルテール令嬢」
「陛下」
「王妃冊立について、どう見る」
直截な問い。
「制度は整っております」
「感情は」
「それは殿下と候補の問題です」
国王は目を細める。
「未練はないか」
その言葉に、私は静かに微笑んだ。
「ございません」
それは嘘ではない。
私は、均衡を選んだ。
「ならば、最後の問いだ」
「はい」
「王国は、彼女で支えられるか」
私は迷わなかった。
「支えられます」
理は見てきた。
成長も。
「ただし」
「ただし?」
「王が理を忘れなければ」
国王は深く頷いた。
数日後。
王都に布告が出る。
『王太子妃冊立の儀、来月執行』
街がざわめく。
「ついにか」
「王国は完全に安定したな」
だが、私は知っている。
冊立は終わりではない。
均衡の次の段階。
夜、会館の窓から王宮を見つめる。
灯りは強い。
並び立つ影は、正式な形を得ようとしている。
私は静かに呟く。
「これで、わたくしの役目も一区切りですわね」
だが、均衡の物語は終わらない。
玉座の問いは、常に続く。
王は理を選び続けられるか。
王妃は影から支え続けられるか。
そして私は、外側から制度を磨き続ける。
王都は、新たな章へと進もうとしていた。
王国が安定期に入りつつある――その評価が定着した頃。
王宮で、ひとつの議題が静かに持ち上がった。
「王太子殿下の正式な王太子妃冊立について」
それは、いずれ避けられぬ話だった。
制度は整い、財政は持ち直し、外圧は退けた。
ならば次は、象徴。
王と王妃の確定。
評議会室。
「王太子妃候補ミレーヌ様の正式冊立を進めるべきでは」
保守派の貴族が口を開く。
「王家の安定を内外に示す機会」
「民の支持も高まっております」
ざわめきが広がる。
レオニードは静かに聞いている。
以前なら、即断していただろう。
だが、いまは違う。
「……急ぐ必要はあるか」
その問いに、室内がわずかに揺れる。
「安定している今こそ」
「王妃教育機関での成長も示せます」
国王がゆっくりと息を吐いた。
「王太子」
「はい」
「王妃は飾りではない」
「承知しております」
「ならば、お前が決めよ」
重い言葉。
玉座の隣を誰にするか。
それは、制度では決められない。
一方、教育機関。
本日の講義は「王妃の最終責任」。
「冊立とは、終点ではありません」
私は静かに言う。
「それは始まりです」
教室が静まり返る。
「王妃は、王の決断に連帯責任を持つ存在」
ミレーヌは真っ直ぐに私を見る。
「覚悟は、ございますか」
私は問いかけた。
彼女は一瞬、目を閉じ、そして頷く。
「はい」
その声に迷いはない。
夜。
王宮の書斎。
「冊立の話が出ている」
レオニードが言う。
「存じております」
ミレーヌは静かに答える。
「……怖くはないか」
「怖いです」
彼女は正直に言う。
「ですが、逃げません」
沈黙。
「わたくしは、選ばれるだけの存在ではなくなりたい」
その言葉に、レオニードの目がわずかに揺れる。
「並び立ちたいのです」
それは願いではなく、宣言。
翌日。
私は王宮へ呼ばれた。
評議会室ではなく、国王の私室。
「ヴァルテール令嬢」
「陛下」
「王妃冊立について、どう見る」
直截な問い。
「制度は整っております」
「感情は」
「それは殿下と候補の問題です」
国王は目を細める。
「未練はないか」
その言葉に、私は静かに微笑んだ。
「ございません」
それは嘘ではない。
私は、均衡を選んだ。
「ならば、最後の問いだ」
「はい」
「王国は、彼女で支えられるか」
私は迷わなかった。
「支えられます」
理は見てきた。
成長も。
「ただし」
「ただし?」
「王が理を忘れなければ」
国王は深く頷いた。
数日後。
王都に布告が出る。
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街がざわめく。
「ついにか」
「王国は完全に安定したな」
だが、私は知っている。
冊立は終わりではない。
均衡の次の段階。
夜、会館の窓から王宮を見つめる。
灯りは強い。
並び立つ影は、正式な形を得ようとしている。
私は静かに呟く。
「これで、わたくしの役目も一区切りですわね」
だが、均衡の物語は終わらない。
玉座の問いは、常に続く。
王は理を選び続けられるか。
王妃は影から支え続けられるか。
そして私は、外側から制度を磨き続ける。
王都は、新たな章へと進もうとしていた。
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