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第21話 動き出す次の時代
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第21話 動き出す次の時代
第一王子アセルス・アウストラリスの姿が消えてから、
王宮は奇妙なほど静かだった。
騒ぎ立てる者はいない。
問いただす者も、ほとんどいない。
それが、この王国の現実だった。
「……思ったより、
波風は立ちませんでしたね」
宰相がそう口にすると、
国王は書類から目を上げ、短く答えた。
「立てぬよう、
皆が気を遣っているだけだ」
――いや。
正確には、
もう立てる必要がないと
理解しているのだ。
王宮の空気は、
すでに次へと向かっていた。
その中心にいるのは、
第2王子――
リベルタス・アウストラリス。
「本日の会合ですが、
アルファルド派の重鎮が
出席を希望されています」
側近の報告に、
リベルタスは穏やかに頷く。
「分かりました。
では、予定を少し前倒しで」
その態度には、
焦りも、
勝ち誇りもなかった。
彼は理解している。
――これは“奪った”座ではない。
――“空いた”席に、
自分が座るだけなのだと。
一方、
アルファルド公爵邸では、
いつも通りの光景があった。
庭に面したサロン。
整えられた茶器。
静かに香る紅茶。
「今日は、
どなたがいらっしゃるのですか?」
シャウラ・アルファルドは、
何気なく侍女に尋ねる。
「午前は、
ヴェルン侯爵令嬢様。
午後は、
ローゼン伯爵夫人です」
「……案外、
忙しいものですね」
苦笑しながらも、
シャウラは特に困った様子もない。
彼女にとって、
これは“日常”だ。
政局の変化も、
王太子争いも、
遠くの出来事のように感じている。
だが――
その日常こそが、
派閥を繋ぎ止めている。
「不思議なものだな」
同席していた貴族が、
小さく呟いた。
「これほどの事態でも、
アルファルド派は
まったく揺らがない」
別の者が、
静かに頷く。
「中心が、
変わっていないからだ」
その中心が、
誰であるか。
――誰も、
口に出す必要はなかった。
夕刻。
シャウラは、
マリー・アウストラリスと
向かい合って座っていた。
「……王宮は、
随分と静かですわね」
マリーが言うと、
シャウラは首を傾げる。
「そうですか?
いつも通りに
見えますけれど」
「ええ。
“そう見える”ように
なったのです」
マリーは、
紅茶に口をつけ、
静かに続ける。
「兄が消え、
王太子候補が変わっても……
国は、
何事もなかったかのように
動いている」
「それが、
国というものですわ」
シャウラは、
あっさりと言った。
「止まらないように、
できていますもの」
その言葉に、
マリーは小さく笑った。
(やはり……)
この人は、
権力の中心に立たなくても、
流れを安定させる存在だ。
王妃よりも、
女王の友人。
その言葉が、
頭をよぎる。
この日、
王宮でも、
貴族社会でも、
一つの共通認識が
静かに広がっていた。
――第一王子の時代は、
もう終わった。
そして、
新しい時代は、
すでに始まっている。
その中心にいるのは、
王太子候補リベルタス。
だが、
その“重心”にいるのは――
政治に興味がないはずの、
シャウラ・アルファルドであることを、
まだ誰も
はっきりとは
言葉にしていなかった。
第一王子アセルス・アウストラリスの姿が消えてから、
王宮は奇妙なほど静かだった。
騒ぎ立てる者はいない。
問いただす者も、ほとんどいない。
それが、この王国の現実だった。
「……思ったより、
波風は立ちませんでしたね」
宰相がそう口にすると、
国王は書類から目を上げ、短く答えた。
「立てぬよう、
皆が気を遣っているだけだ」
――いや。
正確には、
もう立てる必要がないと
理解しているのだ。
王宮の空気は、
すでに次へと向かっていた。
その中心にいるのは、
第2王子――
リベルタス・アウストラリス。
「本日の会合ですが、
アルファルド派の重鎮が
出席を希望されています」
側近の報告に、
リベルタスは穏やかに頷く。
「分かりました。
では、予定を少し前倒しで」
その態度には、
焦りも、
勝ち誇りもなかった。
彼は理解している。
――これは“奪った”座ではない。
――“空いた”席に、
自分が座るだけなのだと。
一方、
アルファルド公爵邸では、
いつも通りの光景があった。
庭に面したサロン。
整えられた茶器。
静かに香る紅茶。
「今日は、
どなたがいらっしゃるのですか?」
シャウラ・アルファルドは、
何気なく侍女に尋ねる。
「午前は、
ヴェルン侯爵令嬢様。
午後は、
ローゼン伯爵夫人です」
「……案外、
忙しいものですね」
苦笑しながらも、
シャウラは特に困った様子もない。
彼女にとって、
これは“日常”だ。
政局の変化も、
王太子争いも、
遠くの出来事のように感じている。
だが――
その日常こそが、
派閥を繋ぎ止めている。
「不思議なものだな」
同席していた貴族が、
小さく呟いた。
「これほどの事態でも、
アルファルド派は
まったく揺らがない」
別の者が、
静かに頷く。
「中心が、
変わっていないからだ」
その中心が、
誰であるか。
――誰も、
口に出す必要はなかった。
夕刻。
シャウラは、
マリー・アウストラリスと
向かい合って座っていた。
「……王宮は、
随分と静かですわね」
マリーが言うと、
シャウラは首を傾げる。
「そうですか?
いつも通りに
見えますけれど」
「ええ。
“そう見える”ように
なったのです」
マリーは、
紅茶に口をつけ、
静かに続ける。
「兄が消え、
王太子候補が変わっても……
国は、
何事もなかったかのように
動いている」
「それが、
国というものですわ」
シャウラは、
あっさりと言った。
「止まらないように、
できていますもの」
その言葉に、
マリーは小さく笑った。
(やはり……)
この人は、
権力の中心に立たなくても、
流れを安定させる存在だ。
王妃よりも、
女王の友人。
その言葉が、
頭をよぎる。
この日、
王宮でも、
貴族社会でも、
一つの共通認識が
静かに広がっていた。
――第一王子の時代は、
もう終わった。
そして、
新しい時代は、
すでに始まっている。
その中心にいるのは、
王太子候補リベルタス。
だが、
その“重心”にいるのは――
政治に興味がないはずの、
シャウラ・アルファルドであることを、
まだ誰も
はっきりとは
言葉にしていなかった。
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