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第22話 女王という選択肢
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第22話 女王という選択肢
王宮の奥、
小さな会議室に集められたのは、
ごく限られた者たちだった。
国王。
宰相。
数名の重臣。
そして――
マリー・アウストラリス。
「……話は、
おおよそ理解しましたわ」
マリーは、
年齢に似合わぬ落ち着いた声音で言った。
「兄が消え、
リベルタスが王太子候補筆頭。
形式としては、
何の問題もありません」
その言葉に、
宰相が慎重に頷く。
「はい。
アルファルド派も
反対はしておりません」
「“反対しない”のですね」
マリーは、
視線を伏せたまま言う。
「“支持する”とは、
誰も言っていない」
空気が、
微かに張りつめる。
それは、
誰もが感じていながら、
言葉にしてこなかった事実だった。
「リベルタスは、
悪い選択ではありませんわ」
「ですが――
彼が王太子になった場合、
必ず再燃します」
「聖女と、
王権の関係が」
国王は、
静かに腕を組む。
「……聖女を、
政治の中心に据えるのは、
望んでいない」
「ええ。
わたくしも同意します」
マリーは、
きっぱりと言った。
「信仰は必要です。
ですが、
それが権力と結びついた瞬間、
国は歪みます」
「だからこそ、
兄は失敗しました」
その言葉に、
誰も反論しなかった。
マリーは、
ゆっくりと顔を上げる。
「でしたら――
一つ、
別の選択肢がありますわ」
宰相が、
息を呑む。
「……お聞かせください」
「女王です」
その一言は、
静かで、
しかし重かった。
「王太子を立てず、
わたくしが即位する」
「その上で、
聖女との婚姻という
馬鹿げた話を、
完全に封じる」
重臣の一人が、
思わず口を開く。
「ですが、
前例が――」
「前例がないから、
できない?」
マリーは、
穏やかに、
しかし鋭く問い返した。
「前例がないからこそ、
今までの歪みが
放置されてきたのでは?」
沈黙。
その沈黙の中で、
マリーは続ける。
「わたくしは、
自分が完璧だとは
思っていません」
「ですが、
少なくとも理解しています」
「王とは、
“象徴”であり、
“調整役”であるべきだと」
国王は、
長く目を閉じ、
そしてゆっくりと開いた。
「……覚悟はあるのか」
「ございます」
迷いのない答えだった。
「そして」
マリーは、
少しだけ表情を緩める。
「わたくしには、
信頼できる友人がいます」
その名を、
ここで出す必要はなかった。
だが、
誰もが思い浮かべた。
――シャウラ・アルファルド。
政治に興味がなく、
権力を求めず、
それでいて
派閥を安定させている存在。
王妃にする必要はない。
むしろ――
その自由さこそが、
価値なのだ。
「……女王という選択肢」
宰相が、
低く呟く。
それは、
この国が
初めて真正面から
向き合う未来だった。
この日、
まだ正式な決定は
なされなかった。
だが、
一つだけ確かなことがある。
王国の行く先は、
もはや王太子を中心に
回ってはいない。
静かに、
しかし確実に――
王国は、
新しい形を
選ぼうとしていた。
王宮の奥、
小さな会議室に集められたのは、
ごく限られた者たちだった。
国王。
宰相。
数名の重臣。
そして――
マリー・アウストラリス。
「……話は、
おおよそ理解しましたわ」
マリーは、
年齢に似合わぬ落ち着いた声音で言った。
「兄が消え、
リベルタスが王太子候補筆頭。
形式としては、
何の問題もありません」
その言葉に、
宰相が慎重に頷く。
「はい。
アルファルド派も
反対はしておりません」
「“反対しない”のですね」
マリーは、
視線を伏せたまま言う。
「“支持する”とは、
誰も言っていない」
空気が、
微かに張りつめる。
それは、
誰もが感じていながら、
言葉にしてこなかった事実だった。
「リベルタスは、
悪い選択ではありませんわ」
「ですが――
彼が王太子になった場合、
必ず再燃します」
「聖女と、
王権の関係が」
国王は、
静かに腕を組む。
「……聖女を、
政治の中心に据えるのは、
望んでいない」
「ええ。
わたくしも同意します」
マリーは、
きっぱりと言った。
「信仰は必要です。
ですが、
それが権力と結びついた瞬間、
国は歪みます」
「だからこそ、
兄は失敗しました」
その言葉に、
誰も反論しなかった。
マリーは、
ゆっくりと顔を上げる。
「でしたら――
一つ、
別の選択肢がありますわ」
宰相が、
息を呑む。
「……お聞かせください」
「女王です」
その一言は、
静かで、
しかし重かった。
「王太子を立てず、
わたくしが即位する」
「その上で、
聖女との婚姻という
馬鹿げた話を、
完全に封じる」
重臣の一人が、
思わず口を開く。
「ですが、
前例が――」
「前例がないから、
できない?」
マリーは、
穏やかに、
しかし鋭く問い返した。
「前例がないからこそ、
今までの歪みが
放置されてきたのでは?」
沈黙。
その沈黙の中で、
マリーは続ける。
「わたくしは、
自分が完璧だとは
思っていません」
「ですが、
少なくとも理解しています」
「王とは、
“象徴”であり、
“調整役”であるべきだと」
国王は、
長く目を閉じ、
そしてゆっくりと開いた。
「……覚悟はあるのか」
「ございます」
迷いのない答えだった。
「そして」
マリーは、
少しだけ表情を緩める。
「わたくしには、
信頼できる友人がいます」
その名を、
ここで出す必要はなかった。
だが、
誰もが思い浮かべた。
――シャウラ・アルファルド。
政治に興味がなく、
権力を求めず、
それでいて
派閥を安定させている存在。
王妃にする必要はない。
むしろ――
その自由さこそが、
価値なのだ。
「……女王という選択肢」
宰相が、
低く呟く。
それは、
この国が
初めて真正面から
向き合う未来だった。
この日、
まだ正式な決定は
なされなかった。
だが、
一つだけ確かなことがある。
王国の行く先は、
もはや王太子を中心に
回ってはいない。
静かに、
しかし確実に――
王国は、
新しい形を
選ぼうとしていた。
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