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第24話 支持という名の静かな決断
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第24話 支持という名の静かな決断
王宮の一室。
重厚な扉が閉じられ、
外界の喧騒は、
ここには届かない。
集まっているのは、
各派閥の重鎮たちだった。
表立った会議ではない。
だが――
結論を出すための場であることは、
誰もが理解していた。
「……率直に申し上げましょう」
口火を切ったのは、
アルファルド派の長老格の貴族だった。
「王太子を立てる流れは、
すでに現実的ではありません」
誰も驚かない。
それどころか、
頷きが静かに連なった。
「リベルタス殿下は、
能力も人柄も申し分ない」
「しかし――
“王太子”という枠組みそのものが、
今の王国にとって
足枷になりつつある」
別の貴族が続ける。
「聖女との婚姻問題が、
再燃するのは避けられない」
「それは、
王権と信仰を
再び結びつけることになる」
沈黙。
誰もが、
それを望んでいない。
「では……
女王か」
宰相が、
低く呟いた。
その言葉に、
否定はなかった。
「マリー殿下ならば、
象徴としての役割を
理解しておられる」
「権力を振り回さず、
調整を重んじる」
「何より――
彼女には、
“揺るがない後ろ盾”がある」
その視線が、
自然と一点に集まる。
――アルファルド家。
そして、
その中心にいる存在。
「……シャウラ様ですね」
誰かが、
確認するように言った。
その名が出た瞬間、
空気が一段、
落ち着いた。
「政治に口出しはしない」
「だが、
決して不安を煽らない」
「誰の敵にもならず、
誰の味方にも
なりすぎない」
「これほど、
王権を安定させる存在は
他にいない」
宰相は、
静かに結論をまとめる。
「アルファルド派は――
女王即位を支持する」
「異論は?」
誰も、
口を開かなかった。
その頃。
アルファルド公爵邸では、
シャウラが
いつも通りの時間を過ごしていた。
「……今日は、
少し静かですわね」
「皆さま、
お忙しいのでは?」
侍女は、
微妙な笑みを浮かべる。
「ええ……
とても、大切なお話し合いを」
「そう」
シャウラは、
それ以上深く考えず、
紅茶に口をつけた。
この人は、
知らない。
自分の“平穏”が、
どれほど多くの人間に
安心を与えているかを。
そしてその夜、
マリーは
一通の報告書に目を通し、
静かに息を吐いた。
「……決まったのですね」
王太子ではなく、
女王。
それを支えるのは、
権力でも、
野心でもない。
――信頼。
「シャウラ様」
彼女は、
小さく微笑んだ。
「あなたは、
本当に何もしていない」
「……だからこそ」
「この国は、
前へ進めるのですわ」
この日、
公に宣言されたわけではない。
だが、
王国の中枢では、
静かな決断が
確かに下されていた。
次に動くのは――
王家そのもの。
そして物語は、
“即位”という
不可逆の局面へと
進んでいく。
王宮の一室。
重厚な扉が閉じられ、
外界の喧騒は、
ここには届かない。
集まっているのは、
各派閥の重鎮たちだった。
表立った会議ではない。
だが――
結論を出すための場であることは、
誰もが理解していた。
「……率直に申し上げましょう」
口火を切ったのは、
アルファルド派の長老格の貴族だった。
「王太子を立てる流れは、
すでに現実的ではありません」
誰も驚かない。
それどころか、
頷きが静かに連なった。
「リベルタス殿下は、
能力も人柄も申し分ない」
「しかし――
“王太子”という枠組みそのものが、
今の王国にとって
足枷になりつつある」
別の貴族が続ける。
「聖女との婚姻問題が、
再燃するのは避けられない」
「それは、
王権と信仰を
再び結びつけることになる」
沈黙。
誰もが、
それを望んでいない。
「では……
女王か」
宰相が、
低く呟いた。
その言葉に、
否定はなかった。
「マリー殿下ならば、
象徴としての役割を
理解しておられる」
「権力を振り回さず、
調整を重んじる」
「何より――
彼女には、
“揺るがない後ろ盾”がある」
その視線が、
自然と一点に集まる。
――アルファルド家。
そして、
その中心にいる存在。
「……シャウラ様ですね」
誰かが、
確認するように言った。
その名が出た瞬間、
空気が一段、
落ち着いた。
「政治に口出しはしない」
「だが、
決して不安を煽らない」
「誰の敵にもならず、
誰の味方にも
なりすぎない」
「これほど、
王権を安定させる存在は
他にいない」
宰相は、
静かに結論をまとめる。
「アルファルド派は――
女王即位を支持する」
「異論は?」
誰も、
口を開かなかった。
その頃。
アルファルド公爵邸では、
シャウラが
いつも通りの時間を過ごしていた。
「……今日は、
少し静かですわね」
「皆さま、
お忙しいのでは?」
侍女は、
微妙な笑みを浮かべる。
「ええ……
とても、大切なお話し合いを」
「そう」
シャウラは、
それ以上深く考えず、
紅茶に口をつけた。
この人は、
知らない。
自分の“平穏”が、
どれほど多くの人間に
安心を与えているかを。
そしてその夜、
マリーは
一通の報告書に目を通し、
静かに息を吐いた。
「……決まったのですね」
王太子ではなく、
女王。
それを支えるのは、
権力でも、
野心でもない。
――信頼。
「シャウラ様」
彼女は、
小さく微笑んだ。
「あなたは、
本当に何もしていない」
「……だからこそ」
「この国は、
前へ進めるのですわ」
この日、
公に宣言されたわけではない。
だが、
王国の中枢では、
静かな決断が
確かに下されていた。
次に動くのは――
王家そのもの。
そして物語は、
“即位”という
不可逆の局面へと
進んでいく。
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