婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました

ふわふわ

文字の大きさ
40 / 40

第40話 静かなざまぁの行き着く先

しおりを挟む
第40話 静かなざまぁの行き着く先(完結)

王都に、
特別な式典はなかった。

鐘が鳴り響くことも、
勝利を祝う行進もない。

それでも――
この国は、
確かに一区切りを迎えていた。


---

アルファルド公爵邸。

シャウラ・アルファルドは、
朝の光の中で
紅茶を口にしていた。

今日も、
特別な予定はない。

お茶会も、
来客も、
政治の話題もない。

「……本当に、
 何も起きませんわね」

侍女が、
微笑みながら答える。

「それが、
 一番でございます」

シャウラは、
静かに頷いた。

婚約を破棄され、
その瞬間から
周囲は騒がしくなった。

派閥が動き、
王子が転げ落ち、
国の形すら
変わった。

だが――
自分は何もしていない。

ただ、
騒がなかった。
縋らなかった。
取り戻そうと
しなかった。

(……それで、
 良かったのですわ)


---

王宮。

マリー・アウストラリス女王は、
執務机に
一枚の書類を置いた。

「旧王太子に関する
 記録、最終整理」

そこには、
罪も、
断罪も、
処罰もない。

ただ、
事実だけが
淡々と記されている。

「……歴史は、
 人を裁く場所では
 ありませんわね」

宰相が、
静かに答える。

「はい。
 残すだけで
 十分かと」

マリーは、
書類に署名し、
閉じた。

これで、
政治としての
物語は終わる。


---

神殿。

ジャネットは、
小さな祭壇の前で
祈りを捧げていた。

王太子妃になる夢。
国の中心に立つ未来。

それらは、
もう思い出になった。

だが――
今、目の前にいる
人々の笑顔は、
確かに現実だ。

「……聖女であることが、
 私の居場所」

そう、
ようやく言える。


---

遠い地。

アセルス・アウストラリスは、
一日の作業を終え、
空を見上げていた。

名前を呼ばれることはない。
過去を語る者もいない。

だが、
逃げ場もない。

(……王になれなかった、
 のではない)

(王であることに、
 相応しくなろうと
 しなかった)

その事実を、
ようやく
受け入れられた。

それが、
彼に残された
唯一の救いだった。


---

再び、
アルファルド公爵邸。

シャウラは、
窓辺で
空を見上げる。

同じ空の下で、
それぞれが
違う場所にいる。

だが、
それでいい。

「……ざまぁ、
 ですわね」

その言葉は、
誰かを嘲るためではない。

自分の人生を
自分で守れたことへの、
小さな確認だった。


---

婚約破棄から始まった
この物語は、
誰かが
泣き叫んで終わらない。

断罪も、
復讐も、
血の気もない。

あるのは――
選択の結果だけ。

何も奪わず、
何も求めず、
静かに席を立った者が、
最後まで
穏やかでいられた。

それが、
この物語の
ざまぁ。

そして――
シャウラ・アルファルドの
静かな勝利だった。

――完結――
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

両親に溺愛されて育った妹の顛末

葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。 オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。 「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」 「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」 「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」 妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。

知らぬはヒロインだけ

ネコフク
恋愛
「クエス様好きです!」婚約者が隣にいるのに告白する令嬢に唖然とするシスティアとクエスフィール。 告白してきた令嬢アリサは見目の良い高位貴族の子息ばかり粉をかけて回っていると有名な人物だった。 しかも「イベント」「システム」など訳が分からない事を言っているらしい。 そう、アリサは転生者。ここが乙女ゲームの世界で自分はヒロインだと思っている。 しかし彼女は知らない。他にも転生者がいることを。 ※不定期連載です。毎日投稿する時もあれば日が開く事もあります。

[完結]気付いたらザマァしてました(お姉ちゃんと遊んでた日常報告してただけなのに)

みちこ
恋愛
お姉ちゃんの婚約者と知らないお姉さんに、大好きなお姉ちゃんとの日常を報告してただけなのにザマァしてたらしいです 顔文字があるけどウザかったらすみません

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

婚約者が選んだのは私から魔力を盗んだ妹でした

今川幸乃
恋愛
バートン伯爵家のミアの婚約者、パーシーはいつも「魔法が使える人がいい」とばかり言っていた。 実はミアは幼いころに水の精霊と親しくなり、魔法も得意だった。 妹のリリーが怪我した時に母親に「リリーが可哀想だから魔法ぐらい譲ってあげなさい」と言われ、精霊を譲っていたのだった。 リリーはとっくに怪我が治っているというのにずっと仮病を使っていて一向に精霊を返すつもりはない。 それでもミアはずっと我慢していたが、ある日パーシーとリリーが仲良くしているのを見かける。 パーシーによると「怪我しているのに頑張っていてすごい」ということらしく、リリーも満更ではなさそうだった。 そのためミアはついに彼女から精霊を取り戻すことを決意する。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

処理中です...