働いたら負けって、もう負けてますわ。 ―お小遣い制侯爵様は、奥様が怖い―』

ふわふわ

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第二十八話 見せびらかさない強さ

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第二十八話 見せびらかさない強さ

 王都の春祭りは、例年よりも少し控えめだった。

 派手な花火は減り、屋台の数も抑えられている。

 それでも人々は集まる。

 祭りとは、豪華さではなく、続くことが大切なのだと誰かが言った。

 ラトゥール侯爵家も、例年どおり寄付を行った。

 ただし額は、以前ほど目立つものではない。

「今年は控えめでございます」

 ヴィオレーヌが報告する。

「目立たぬな」

 ギヨームは言う。

「目立つ必要はございません」

 淡々と。

「継続できることのほうが、評価は高いのです」

 彼は窓の外を見る。

 祭りの準備をする町人たちの姿。

 彼らは侯爵家の寄付額など知らない。

 だが祭りが開かれれば、それでいい。

 数日後。

 祭り当日。

 侯爵家の名は、寄付者の一覧に静かに記されている。

 目立つ位置ではない。

 だが消えてもいない。

「今年は派手な演出がありませんな」

 隣の貴族が笑う。

「見せびらかす必要はない」

 ギヨームは穏やかに返す。

「続くことが大事だ」

 その言葉に、貴族は少し黙る。

 祭りの広場では、子供たちが走り回っている。

 歓声が上がる。

 夜になると、簡素な灯りが町を照らす。

 豪華ではない。

 だが温かい。

 一方。

 ルクセリア公爵家は、物流支援として祭りに協力していた。

 物資の安定供給。

 裏方の支え。

 エルミリアは表には立たない。

 だが彼女の指示で、滞りなく進む。

 祭りは成功する。

 華やかさは抑えられている。

 だが不満はない。

 翌日。

 王都の評判は静かに広がる。

「ラトゥール家、堅実だ」 「無理をしない」 「崩れない」

 派手な称賛はない。

 だが否定もない。

 それが一番の変化だった。

 夜、侯爵邸。

 ギヨームは庭を歩く。

 灯りが穏やかに揺れる。

 豪奢な演出はない。

 だが手入れは行き届いている。

「目立たぬな」

 再び呟く。

「目立たなくとも、消えてはおりません」

 ヴィオレーヌが答える。

「それで十分でございます」

 彼はゆっくりと頷く。

 かつては、見せびらかすことが強さだった。

 今は違う。

 続けること。

 崩さないこと。

 それが強さ。

 遠くで祭りの余韻が聞こえる。

 派手な花火はない。

 だが灯りは残っている。

 侯爵邸の灯りもまた、静かに、確かに灯り続けていた。
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