働いたら負けって、もう負けてますわ。 ―お小遣い制侯爵様は、奥様が怖い―』

「働いたら負け」――
そう言い放ったのは、名門ラトゥール侯爵家の跡取り、ギヨーム様。

貴族は手を動かさず、金は回させるもの。
足りなければ王に願い出ればよい。
徳政令があるのだから――。

そんな価値観にうんざりした公爵令嬢エルミリアは、きっぱり宣言する。

「働かない意味を、誤解なさっておりますわ」

肉体労働はしない。
けれど責任は取る。
金はばらまかず、信用を積む。

当然のように資金を当てにされても、一銭も回さない彼女。
そして価値観の違いから婚約は破棄。

その後、侯爵家に嫁いできたのは、借金を“投資”と呼ぶ商人の娘ヴィオレーヌ。
豪華な夜会も、見栄の改装も、徳政令頼みの甘えも――すべて終了。

気づけば侯爵様は、お小遣い制。

「必要なものは、この範囲でどうぞ」 「帳簿をご覧になれない?お教えいたしますわ」

信用を失いかけた家を、静かに立て直す奥様。
そしてようやく理解する元婚約者。

――働くとは、手を汚すことではない。
――責任を背負うことだ。

これは、破産も追放もない代わりに、
思想がきれいに敗北する“精神的完全ざまぁ”の物語。

静かに、確実に、誤解が解けていく。
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