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第二十三話 決まっている会議
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第二十三話 決まっている会議
朝の政務会議は、定刻きっかりに始まる。
円卓の上には、すでに整えられた書類。
議題は三件。
一、北東部干ばつ対策の進捗確認。
二、港湾整備第二期の契約締結。
三、近隣王国との使節団派遣日程。
整っている。
驚くほどに。
宰相が口火を切る。
「干ばつ対策、穀倉開放は効果が出ております」
農務卿が続ける。
「治安も安定。暴動の兆しはございません」
わたくしは軽く頷く。
「では第二段階として、井戸掘削支援を」
財務卿が資料を差し出す。
「予算は確保済み」
軍務卿も補足する。
「輸送路も問題なし」
話は流れる。
淀みなく。
第一王子レオンは、資料に目を落としている。
その目は鋭い。
理解している。
だが彼は気づいている。
この会議は、すでに決まっている。
事前に。
調整は昨日のうちに終わっている。
今日の場は確認。
形式。
承認。
かつては違った。
この場で議論が生まれ、
この場で方向が変わった。
だが今は、方向は事前に定まる。
「第一王子、何かご意見は」
宰相が形式的に問う。
一瞬の間。
全員が視線を向ける。
だがその視線は期待ではない。
確認。
レオンは口を開く。
「井戸掘削は良い。だが監督官の人選は慎重に」
農務卿が即座に答える。
「既に候補を選定済みです」
書類が回る。
名簿が並ぶ。
彼の意見が入る余地はない。
「……そうか」
それだけ。
会議は次へ進む。
港湾整備契約。
使節団派遣。
決定。
署名。
王太子女の印。
国王の承認。
第一王子の印は不要。
会議は三十分で終わる。
効率的だ。
誰も声を荒げない。
誰も反対しない。
廊下で若い伯爵が言う。
「最近の会議は早い」
「無駄がない」
その言葉は称賛。
第一王子の名は出ない。
午後、レオンは自室で議事録を読み返す。
自分の発言は短い。
採用はゼロ。
否定もされない。
ただ、流される。
彼は机に肘をつき、天井を見る。
自分の判断が誤っているとは思っていない。
慎重であること。
調査を重ねること。
急がぬこと。
それは王の資質だと信じている。
だが王宮は、いま“動く者”を選ぶ。
評価は静かに積み上がる。
王太子女は成果を出す。
教会は支持する。
軍は従う。
民は安堵する。
会議は早く終わる。
それが証明。
レオンはまだ王子だ。
廃嫡されていない。
地位はある。
列席する席もある。
だが、決定は彼を経由しない。
夕暮れ、窓の外に沈む陽を見つめながら、彼は呟く。
「私はまだ、終わっていない」
声は小さい。
誰にも届かない。
王宮は今日も整然としている。
会議は明日もある。
そして明日も、決まっている。
朝の政務会議は、定刻きっかりに始まる。
円卓の上には、すでに整えられた書類。
議題は三件。
一、北東部干ばつ対策の進捗確認。
二、港湾整備第二期の契約締結。
三、近隣王国との使節団派遣日程。
整っている。
驚くほどに。
宰相が口火を切る。
「干ばつ対策、穀倉開放は効果が出ております」
農務卿が続ける。
「治安も安定。暴動の兆しはございません」
わたくしは軽く頷く。
「では第二段階として、井戸掘削支援を」
財務卿が資料を差し出す。
「予算は確保済み」
軍務卿も補足する。
「輸送路も問題なし」
話は流れる。
淀みなく。
第一王子レオンは、資料に目を落としている。
その目は鋭い。
理解している。
だが彼は気づいている。
この会議は、すでに決まっている。
事前に。
調整は昨日のうちに終わっている。
今日の場は確認。
形式。
承認。
かつては違った。
この場で議論が生まれ、
この場で方向が変わった。
だが今は、方向は事前に定まる。
「第一王子、何かご意見は」
宰相が形式的に問う。
一瞬の間。
全員が視線を向ける。
だがその視線は期待ではない。
確認。
レオンは口を開く。
「井戸掘削は良い。だが監督官の人選は慎重に」
農務卿が即座に答える。
「既に候補を選定済みです」
書類が回る。
名簿が並ぶ。
彼の意見が入る余地はない。
「……そうか」
それだけ。
会議は次へ進む。
港湾整備契約。
使節団派遣。
決定。
署名。
王太子女の印。
国王の承認。
第一王子の印は不要。
会議は三十分で終わる。
効率的だ。
誰も声を荒げない。
誰も反対しない。
廊下で若い伯爵が言う。
「最近の会議は早い」
「無駄がない」
その言葉は称賛。
第一王子の名は出ない。
午後、レオンは自室で議事録を読み返す。
自分の発言は短い。
採用はゼロ。
否定もされない。
ただ、流される。
彼は机に肘をつき、天井を見る。
自分の判断が誤っているとは思っていない。
慎重であること。
調査を重ねること。
急がぬこと。
それは王の資質だと信じている。
だが王宮は、いま“動く者”を選ぶ。
評価は静かに積み上がる。
王太子女は成果を出す。
教会は支持する。
軍は従う。
民は安堵する。
会議は早く終わる。
それが証明。
レオンはまだ王子だ。
廃嫡されていない。
地位はある。
列席する席もある。
だが、決定は彼を経由しない。
夕暮れ、窓の外に沈む陽を見つめながら、彼は呟く。
「私はまだ、終わっていない」
声は小さい。
誰にも届かない。
王宮は今日も整然としている。
会議は明日もある。
そして明日も、決まっている。
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