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第二十二話 届かぬ声
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第二十二話 届かぬ声
王宮の会議室には、いつもの顔ぶれが揃っていた。
国王、王太子女ルシア、宰相、各卿、教会代表、そして第一王子レオン。
席順は変わらない。
だが、空気は微妙に違う。
本日の議題は、北東部の干ばつ対策。
農地被害が広がりつつあり、迅速な判断が求められていた。
農務卿が報告を終える。
「貯水池建設と穀倉開放を同時に進める必要がございます」
わたくしは資料をめくる。
「穀倉は即日開放。貯水池は臨時予算で着手いたします」
財務卿が即座に補足する。
「資金は港湾税収増加分から捻出可能」
軍務卿も頷く。
「治安維持は我らが担います」
議論は整っている。
その時、第一王子が口を開いた。
「穀倉開放は早すぎる」
声は落ち着いている。
「被害規模が確定するまで待つべきだ」
農務卿が慎重に答える。
「既に被害報告は出ております」
「だが全域ではない」
王子の視線がわたくしに向く。
「焦れば無駄が出る」
理屈としては理解できる。
だが今は初動が肝心だ。
「遅れれば民が飢えます」
わたくしは短く言う。
沈黙が落ちる。
国王が問う。
「第一王子、代案はあるか」
「調査団を追加派遣し、二週間後に再検討を」
二週間。
それは長い。
農務卿が小さく首を振る。
宰相がまとめに入る。
「王太子女殿下の案で進めます」
決定。
第一王子の声は記録に残る。
だが採用されない。
会議は次の議題へ移る。
彼は言葉を飲み込んだ。
午後、王宮中庭で若い騎士たちが話している。
「穀倉開放は英断だ」
「民は安心する」
第一王子の名は出ない。
侍従がそっと告げる。
「殿下、明日の式典についてですが」
「……何だ」
「王太子女殿下が代表挨拶を」
一瞬、沈黙。
「私は」
「列席のみでございます」
彼は頷く。
否定しない。
怒らない。
夕刻、穀倉開放が実施される。
王都広場には民が集まり、感謝の声が上がる。
その場に立つのは王太子女。
第一王子は、後方の席にいる。
拍手は彼に向けられない。
夜。
第一王子は書斎で独り考える。
「私は間違っていない」
慎重であることは悪ではない。
資源を守るのも王の役目。
だが今、王宮は“動く者”を選ぶ。
彼の声は消されていない。
議事録には残る。
発言も許される。
だが、届かない。
評価は静かに固まる。
王子は沈黙を強いられていない。
それでも、誰も彼を選ばない。
飼い殺しとは、拘束ではない。
声が届かぬこと。
聞かれないこと。
彼はまだ王宮にいる。
だが、その言葉は、もはや王国を動かしてはいなかった。
王宮の会議室には、いつもの顔ぶれが揃っていた。
国王、王太子女ルシア、宰相、各卿、教会代表、そして第一王子レオン。
席順は変わらない。
だが、空気は微妙に違う。
本日の議題は、北東部の干ばつ対策。
農地被害が広がりつつあり、迅速な判断が求められていた。
農務卿が報告を終える。
「貯水池建設と穀倉開放を同時に進める必要がございます」
わたくしは資料をめくる。
「穀倉は即日開放。貯水池は臨時予算で着手いたします」
財務卿が即座に補足する。
「資金は港湾税収増加分から捻出可能」
軍務卿も頷く。
「治安維持は我らが担います」
議論は整っている。
その時、第一王子が口を開いた。
「穀倉開放は早すぎる」
声は落ち着いている。
「被害規模が確定するまで待つべきだ」
農務卿が慎重に答える。
「既に被害報告は出ております」
「だが全域ではない」
王子の視線がわたくしに向く。
「焦れば無駄が出る」
理屈としては理解できる。
だが今は初動が肝心だ。
「遅れれば民が飢えます」
わたくしは短く言う。
沈黙が落ちる。
国王が問う。
「第一王子、代案はあるか」
「調査団を追加派遣し、二週間後に再検討を」
二週間。
それは長い。
農務卿が小さく首を振る。
宰相がまとめに入る。
「王太子女殿下の案で進めます」
決定。
第一王子の声は記録に残る。
だが採用されない。
会議は次の議題へ移る。
彼は言葉を飲み込んだ。
午後、王宮中庭で若い騎士たちが話している。
「穀倉開放は英断だ」
「民は安心する」
第一王子の名は出ない。
侍従がそっと告げる。
「殿下、明日の式典についてですが」
「……何だ」
「王太子女殿下が代表挨拶を」
一瞬、沈黙。
「私は」
「列席のみでございます」
彼は頷く。
否定しない。
怒らない。
夕刻、穀倉開放が実施される。
王都広場には民が集まり、感謝の声が上がる。
その場に立つのは王太子女。
第一王子は、後方の席にいる。
拍手は彼に向けられない。
夜。
第一王子は書斎で独り考える。
「私は間違っていない」
慎重であることは悪ではない。
資源を守るのも王の役目。
だが今、王宮は“動く者”を選ぶ。
彼の声は消されていない。
議事録には残る。
発言も許される。
だが、届かない。
評価は静かに固まる。
王子は沈黙を強いられていない。
それでも、誰も彼を選ばない。
飼い殺しとは、拘束ではない。
声が届かぬこと。
聞かれないこと。
彼はまだ王宮にいる。
だが、その言葉は、もはや王国を動かしてはいなかった。
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