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第二十七話 次代の名
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第二十七話 次代の名
退位の示唆が公になってから、王宮の会話は微妙に変わった。
誰も露骨には言わない。
だが話題の端々に「次」という言葉が混じる。
次の予算。
次の外交方針。
次の十年。
そして、次の王。
正式な議題ではない。
だが諸侯の私的な会合では、すでに語られていた。
公爵家の応接室。
数名の伯爵と侯爵が集う。
「退位は確実か」
「年内と聞く」
「継承は制度通りか」
沈黙。
誰も名を出さない。
だが結論は暗黙。
「王国は安定を求める」
それは遠回しな答え。
王宮に戻れば、日常は続く。
王太子女ルシアは政務をこなし、重臣と議論し、決裁を進める。
第一王子レオンは列席する。
形式は保たれている。
だが午後、若い文官が交わす会話が耳に入る。
「次代の式典準備はいつからだろう」
「もう始まっているらしい」
「女王か」
小声。
しかし明瞭。
レオンは歩みを止めない。
聞こえないふりをする。
自室に戻ると、机上に報告書が置かれている。
継承法再確認に関する資料。
制度は変更されていない。
順位も記されている。
第一王子の名は上位にある。
王太子女は特例の地位。
法だけを見れば、自分は外れていない。
彼は頁を閉じる。
「法は変わっていない」
それが支え。
夕刻、宰相が国王と話している。
「議会の空気は、王太子女殿下へ傾いております」
「知っておる」
「明言はしておりませんが」
「明言せずとも、流れはできる」
国王の声は穏やかだ。
強制はしない。
決めつけもしない。
ただ、見ている。
夜、王宮の回廊に掲げられた新しい肖像画。
干ばつ対策の場面。
中央に立つのは王太子女。
その後方に、第一王子。
画家は悪意を持たない。
ただ、目に見えた通りを描く。
レオンはその前で立ち止まる。
怒りはない。
だが胸の奥に重さがある。
王位は奪われていない。
廃嫡もされていない。
だが次代の名は、すでに囁かれている。
自分ではない名で。
それでも彼は思う。
「まだ決まっていない」
退位は示唆。
即位は未定。
議会は公式に何も言っていない。
教会も声明を出していない。
軍も発表していない。
だから、まだ機会はある。
そう信じる。
王宮の灯りが落ちていく。
次代の話題は、明日も続くだろう。
第一王子はまだ王宮にいる。
名は残っている。
だが未来を語る声に、彼の名は混じらなくなっていた。
退位の示唆が公になってから、王宮の会話は微妙に変わった。
誰も露骨には言わない。
だが話題の端々に「次」という言葉が混じる。
次の予算。
次の外交方針。
次の十年。
そして、次の王。
正式な議題ではない。
だが諸侯の私的な会合では、すでに語られていた。
公爵家の応接室。
数名の伯爵と侯爵が集う。
「退位は確実か」
「年内と聞く」
「継承は制度通りか」
沈黙。
誰も名を出さない。
だが結論は暗黙。
「王国は安定を求める」
それは遠回しな答え。
王宮に戻れば、日常は続く。
王太子女ルシアは政務をこなし、重臣と議論し、決裁を進める。
第一王子レオンは列席する。
形式は保たれている。
だが午後、若い文官が交わす会話が耳に入る。
「次代の式典準備はいつからだろう」
「もう始まっているらしい」
「女王か」
小声。
しかし明瞭。
レオンは歩みを止めない。
聞こえないふりをする。
自室に戻ると、机上に報告書が置かれている。
継承法再確認に関する資料。
制度は変更されていない。
順位も記されている。
第一王子の名は上位にある。
王太子女は特例の地位。
法だけを見れば、自分は外れていない。
彼は頁を閉じる。
「法は変わっていない」
それが支え。
夕刻、宰相が国王と話している。
「議会の空気は、王太子女殿下へ傾いております」
「知っておる」
「明言はしておりませんが」
「明言せずとも、流れはできる」
国王の声は穏やかだ。
強制はしない。
決めつけもしない。
ただ、見ている。
夜、王宮の回廊に掲げられた新しい肖像画。
干ばつ対策の場面。
中央に立つのは王太子女。
その後方に、第一王子。
画家は悪意を持たない。
ただ、目に見えた通りを描く。
レオンはその前で立ち止まる。
怒りはない。
だが胸の奥に重さがある。
王位は奪われていない。
廃嫡もされていない。
だが次代の名は、すでに囁かれている。
自分ではない名で。
それでも彼は思う。
「まだ決まっていない」
退位は示唆。
即位は未定。
議会は公式に何も言っていない。
教会も声明を出していない。
軍も発表していない。
だから、まだ機会はある。
そう信じる。
王宮の灯りが落ちていく。
次代の話題は、明日も続くだろう。
第一王子はまだ王宮にいる。
名は残っている。
だが未来を語る声に、彼の名は混じらなくなっていた。
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