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第三十七話 新女王即位
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第三十七話 新女王即位
鐘が鳴る。
重く、深く、王都の空を震わせる音。
その響きは祝福のためのものだが、同時に確定の音でもあった。
大広間には貴族、教会高位聖職者、軍司令官、各都市代表が列席している。
すでに決まった未来を、儀式としてなぞるために。
第一王子レオンは定められた位置に立つ。
玉座の正面ではない。
一段下。
王族席。
彼の立場は明確だ。
排除されてはいない。
だが中心でもない。
扉が開く。
王太子女ルシアが入場する。
衣は簡素だ。
過剰な装飾はない。
王冠を受ける者の姿として、威厳だけを纏う。
その歩みは迷いがない。
会場の視線は自然と彼女に集まる。
誰も指示していない。
だが、視線は彼女を追う。
それが評価。
それが選択。
国王が立つ。
「本日をもって、我は退位する」
ざわめきは起きない。
事前に告げられていたからだ。
驚きはない。
ただ、確定が宣言された。
「王統法に基づき、正統血統にして王統第一位、ルシアを王位に就ける」
教会代表が進み出る。
「神の前においても、正統と認める」
軍司令官が膝をつく。
「忠誠を誓う」
議会代表が頭を垂れる。
「王権を承認する」
形式は重い。
だが流れは止まらない。
王冠が掲げられる。
その瞬間、レオンは息を止める。
まだだ。
まだ何か。
誰かが声を上げるかもしれない。
だが誰も動かない。
王冠はルシアの頭上に降りる。
鐘が再び鳴る。
女王誕生。
歓声はない。
熱狂もない。
あるのは、深い納得。
ルシアはゆっくりと振り返る。
視線は会場全体へ向けられる。
「本日より、王国を預かります」
声は落ち着いている。
宣言に感情はない。
義務の確認。
それだけ。
レオンの位置からは、玉座の背がわずかに見える。
かつて自分が座るはずだった場所。
今は違う。
だが彼は思う。
王位は移った。
だが人生は終わらない。
王族として残る。
機会はある。
いつか、評価が揺らぐ日が来るかもしれない。
式典は粛々と進む。
最後に王族紹介が行われる。
「第一王子レオン」
名は呼ばれる。
彼は前へ出て頭を下げる。
礼は正確。
姿勢も整っている。
だが拍手は形式的だ。
重みがない。
女王の名が再び呼ばれると、空気が変わる。
拍手は自然に広がる。
差は小さくない。
だが誰も口にしない。
それが今日の残酷さ。
式典が終わる。
女王は玉座に座る。
レオンは一段下の席へ戻る。
距離はわずか数段。
だが、もう埋まらない。
女王は最初の命を下す。
「明日の議会を通常通り開催します」
祝賀日ではない。
統治の開始。
会場は静かに頷く。
レオンはその背を見つめる。
彼女は揺れない。
怒りも復讐もない。
ただ前を向く。
その姿が、決定的だった。
王子は今日も王宮にいる。
だが王宮は、もう彼を中心に回っていない。
鐘が鳴る。
重く、深く、王都の空を震わせる音。
その響きは祝福のためのものだが、同時に確定の音でもあった。
大広間には貴族、教会高位聖職者、軍司令官、各都市代表が列席している。
すでに決まった未来を、儀式としてなぞるために。
第一王子レオンは定められた位置に立つ。
玉座の正面ではない。
一段下。
王族席。
彼の立場は明確だ。
排除されてはいない。
だが中心でもない。
扉が開く。
王太子女ルシアが入場する。
衣は簡素だ。
過剰な装飾はない。
王冠を受ける者の姿として、威厳だけを纏う。
その歩みは迷いがない。
会場の視線は自然と彼女に集まる。
誰も指示していない。
だが、視線は彼女を追う。
それが評価。
それが選択。
国王が立つ。
「本日をもって、我は退位する」
ざわめきは起きない。
事前に告げられていたからだ。
驚きはない。
ただ、確定が宣言された。
「王統法に基づき、正統血統にして王統第一位、ルシアを王位に就ける」
教会代表が進み出る。
「神の前においても、正統と認める」
軍司令官が膝をつく。
「忠誠を誓う」
議会代表が頭を垂れる。
「王権を承認する」
形式は重い。
だが流れは止まらない。
王冠が掲げられる。
その瞬間、レオンは息を止める。
まだだ。
まだ何か。
誰かが声を上げるかもしれない。
だが誰も動かない。
王冠はルシアの頭上に降りる。
鐘が再び鳴る。
女王誕生。
歓声はない。
熱狂もない。
あるのは、深い納得。
ルシアはゆっくりと振り返る。
視線は会場全体へ向けられる。
「本日より、王国を預かります」
声は落ち着いている。
宣言に感情はない。
義務の確認。
それだけ。
レオンの位置からは、玉座の背がわずかに見える。
かつて自分が座るはずだった場所。
今は違う。
だが彼は思う。
王位は移った。
だが人生は終わらない。
王族として残る。
機会はある。
いつか、評価が揺らぐ日が来るかもしれない。
式典は粛々と進む。
最後に王族紹介が行われる。
「第一王子レオン」
名は呼ばれる。
彼は前へ出て頭を下げる。
礼は正確。
姿勢も整っている。
だが拍手は形式的だ。
重みがない。
女王の名が再び呼ばれると、空気が変わる。
拍手は自然に広がる。
差は小さくない。
だが誰も口にしない。
それが今日の残酷さ。
式典が終わる。
女王は玉座に座る。
レオンは一段下の席へ戻る。
距離はわずか数段。
だが、もう埋まらない。
女王は最初の命を下す。
「明日の議会を通常通り開催します」
祝賀日ではない。
統治の開始。
会場は静かに頷く。
レオンはその背を見つめる。
彼女は揺れない。
怒りも復讐もない。
ただ前を向く。
その姿が、決定的だった。
王子は今日も王宮にいる。
だが王宮は、もう彼を中心に回っていない。
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