『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

ふわふわ

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第三十九話 女王初政務

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第三十九話 女王初政務

 即位から三日。

 祝辞も、挨拶も、ようやく落ち着いた。

 王宮は完全に日常へ戻っている。

 新女王ルシアは、即位式の翌日から通常政務を行っていたが、本日が「女王としての初裁可日」と定められていた。

 象徴ではなく、決定の日。

 議場には主要閣僚、軍司令官、教会代表、財務官が揃う。

 第一王子レオンも王族席にいる。

 一段下。

 定位置だ。

 議題は三つ。

 北方交易路の再編。

 軍補給体系の再設計。

 教会との共同教育政策。

 どれも重要。

 ルシアは最初の議題を読み上げる。

「北方交易について、現行の税率は維持。ただし通行証の発行手続きを簡略化します」

 財務官が頷く。

 軍司令官が補足する。

 女王は即断する。

 決裁印が押される。

 無駄がない。

 レオンは聞いている。

 内容は理解できる。

 むしろ、自分が以前提案しようとした方向性に近い。

 だが違う。

 彼は慎重に段階を踏もうとしていた。

 ルシアは最初から全体を見ていた。

 視野の差。

 軍補給の議題に移る。

「補給倉の再配置案、第二案を採用します」

 理由は明確。

 費用対効果。

 地形。

 防衛線。

 議場は静かに受け入れる。

 反論はない。

 議論はあった。

 だが結論は自然だった。

 誰も女王の判断を疑わない。

 それは恐怖ではない。

 信頼だ。

 レオンは拳を握る。

 なぜ自分の時はこうならなかったのか。

 答えは分かっている。

 彼は決断を避けていた。

 間違えないことを優先しすぎた。

 結果、動かなかった。

 最後の議題。

 教会との共同教育政策。

 地方教区に読み書き教育を広げる。

 王家主導。

 教会協力。

 ルシアは言う。

「知は、治めるためのものではなく、守るためのものです」

 教会代表が静かに頭を垂れる。

「女王陛下の御志に従います」

 その瞬間、空気が決まる。

 王政と教会が同じ方向を向く。

 これは強い。

 議会が終わる。

 重臣たちが自然に女王の周囲へ集まる。

 報告、確認、次の予定。

 レオンの周囲は静か。

 誰も寄らない。

 排除されているわけではない。

 ただ、必要とされていない。

 女王が席を立つ。

 すれ違う際、視線が合う。

「ご苦労さまでした、王子殿下」

 形式的な言葉。

 丁寧。

 温度は一定。

 レオンは答える。

「見事でした」

 本心だ。

 悔しさもある。

 だが否定できない。

 夜。

 王宮の中庭。

 騎士団の夜間訓練が行われている。

 団長は女王の即位後も変わらぬ忠誠を誓っている。

 彼は訓練の様子を遠目に見る。

 かつて自分が指示を出した場。

 今は女王の名で動いている。

 彼は思う。

 まだ自分は若い。

 経験もある。

 女王が失敗すれば。

 評価が揺らげば。

 その時は。

 王宮は静かだ。

 だが動いている。

 政策は進む。

 支持は積み上がる。

 レオンは今日も王宮にいる。

 部屋もある。

 肩書きもある。

 だが、未来の話題に彼の名は出ない。

 それでも彼は待っている。

 まだ終わっていないと信じて。
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