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12話 公式という名の圧力
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12話 公式という名の圧力
王宮に、ついに“公式”の文字が躍った。
それは通達という形で、静かに、しかし確実に広がっていく。
「フォーマルハウト領の施策について、参考調査を行う」
柔らかな表現だが、意味は明白だった。
非公式な打診が退けられた結果、立場と権限を使った圧力に切り替えたのだ。
執務室で報告を受けたレオンハルトは、短く息を吐いた。
「……視察団を組め」
「殿下?」
「助言ではない。調査だ。拒否はできまい」
側近は一瞬ためらい、それから頷いた。
「承知しました。ただ……」
「何だ」
「強引に見えれば、反発を招きかねません」
レオンハルトは視線を逸らした。
分かっている。だが、もう後戻りはできなかった。
一方、フォーマルハウト領。
私は執事から、その“公式調査”の通知を受け取っていた。
「……やはり、そう来ましたか」
「受け入れられますか?」
私は窓の外に目を向ける。
穏やかな畑と、変わらぬ日常。
「受けます。ただし――条件があります」
「条件、とは?」
「調査は公開で。領民の前で行ってください」
執事の目が、わずかに見開かれた。
「隠すものがないと、示すためです」
そしてもう一つ。
私は心の中で、静かに付け加える。
(誰が、誰のために動いているのか――はっきりさせるため)
数日後、王宮からの調査団が到着した。
官僚、書記、護衛。人数は多いが、顔には疲れが滲んでいる。
「こちらが倉庫管理の現場です」
私は淡々と案内した。
帳簿は開示し、数字は説明する。だが、判断の根拠までは語らない。
「この簡素化は、どなたの指示で?」
「私です」
それ以上でも、それ以下でもない。
調査団の一人が、困惑したように尋ねる。
「……王宮の承認は?」
「必要ありませんでした」
空気が、わずかに張り詰める。
市場、工事現場、集会所。
どこでも、同じ反応だった。
「当主が決め、責任を持つ」
その単純な構造が、王宮の複雑さとあまりに対照的だった。
夜、調査団の仮宿で、彼らは密かに話し合っていた。
「……無駄が、ない」 「いや、無駄を許さない仕組みだ」 「これを、王宮で再現できるか?」
誰も即答できなかった。
その頃、私は書斎で一人、灯りを落としていた。
調査を拒まなかったのは、強さの証明ではない。
ただ――逃げないと決めただけ。
圧力は、理解されなかった証拠だ。
だが同時に、無視できなくなった証でもある。
王宮が何を持ち帰るのかは、分からない。
けれど一つだけ、確かなことがある。
私の選択は、
もう“個人的な判断”では終わらない。
その重みを、
王宮はようやく――
正面から受け止め始めていた。
王宮に、ついに“公式”の文字が躍った。
それは通達という形で、静かに、しかし確実に広がっていく。
「フォーマルハウト領の施策について、参考調査を行う」
柔らかな表現だが、意味は明白だった。
非公式な打診が退けられた結果、立場と権限を使った圧力に切り替えたのだ。
執務室で報告を受けたレオンハルトは、短く息を吐いた。
「……視察団を組め」
「殿下?」
「助言ではない。調査だ。拒否はできまい」
側近は一瞬ためらい、それから頷いた。
「承知しました。ただ……」
「何だ」
「強引に見えれば、反発を招きかねません」
レオンハルトは視線を逸らした。
分かっている。だが、もう後戻りはできなかった。
一方、フォーマルハウト領。
私は執事から、その“公式調査”の通知を受け取っていた。
「……やはり、そう来ましたか」
「受け入れられますか?」
私は窓の外に目を向ける。
穏やかな畑と、変わらぬ日常。
「受けます。ただし――条件があります」
「条件、とは?」
「調査は公開で。領民の前で行ってください」
執事の目が、わずかに見開かれた。
「隠すものがないと、示すためです」
そしてもう一つ。
私は心の中で、静かに付け加える。
(誰が、誰のために動いているのか――はっきりさせるため)
数日後、王宮からの調査団が到着した。
官僚、書記、護衛。人数は多いが、顔には疲れが滲んでいる。
「こちらが倉庫管理の現場です」
私は淡々と案内した。
帳簿は開示し、数字は説明する。だが、判断の根拠までは語らない。
「この簡素化は、どなたの指示で?」
「私です」
それ以上でも、それ以下でもない。
調査団の一人が、困惑したように尋ねる。
「……王宮の承認は?」
「必要ありませんでした」
空気が、わずかに張り詰める。
市場、工事現場、集会所。
どこでも、同じ反応だった。
「当主が決め、責任を持つ」
その単純な構造が、王宮の複雑さとあまりに対照的だった。
夜、調査団の仮宿で、彼らは密かに話し合っていた。
「……無駄が、ない」 「いや、無駄を許さない仕組みだ」 「これを、王宮で再現できるか?」
誰も即答できなかった。
その頃、私は書斎で一人、灯りを落としていた。
調査を拒まなかったのは、強さの証明ではない。
ただ――逃げないと決めただけ。
圧力は、理解されなかった証拠だ。
だが同時に、無視できなくなった証でもある。
王宮が何を持ち帰るのかは、分からない。
けれど一つだけ、確かなことがある。
私の選択は、
もう“個人的な判断”では終わらない。
その重みを、
王宮はようやく――
正面から受け止め始めていた。
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