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第19話 フランスへの旅と、変わらない約束
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第19話 フランスへの旅と、変わらない約束
あかりの内定が決まってから、半年が経っていた。
春、社会人生活が始まった。あかりは出版社の翻訳部門に配属され、フランス語の書籍を扱う部署で忙しい日々を送っていた。初めての翻訳業務、校正会議、著者とのやり取り――大学で学んだ知識が活き、毎日が刺激的だったけど、残業も多く疲れる日もあった。
悠人は大学院を修了し、翻訳会社に就職。フリーランス寄りの仕事も受けつつ、フランス文学の専門を活かした業務に携わっていた。二人はアパートで、仕事の話をしながら夕飯を食べ、互いの疲れを癒すのが日課になった。
「今日、面白い本の翻訳入ってきたよ。サンテグジュペリの伝記みたいな」
「へえ、俺も今、似たプロジェクトやってる。一緒に資料共有しよう」
そんな会話が、自然と増えた。
忙しさの中で、二人だけの特別な時間を意識的に作っていた。
そして、夏休み。
就活のときに悠人が言った約束を、果たすときが来た。
「フランス旅行、行こう。2週間、休み取れたよ」
悠人が提案し、あかりは即答で「うん! 絶対! 待ってた!」
計画はすぐに立てた。パリを中心に、リヨンやプロヴァンスも回るコース。飛行機とホテルを予約し、ガイドブックを一緒に読みながらワクワクした。
出発の日。
空港で手を繋いでチェックイン。荷物は本を何冊か詰め込んで重たかったけど、笑いながら。
飛行機の中で、窓から見える雲を眺めながら。
「夢みたい。高校のとき、『モカ』で話してたよね。いつか一緒にフランスって」
「うん。あのとき、遠距離で辛かったけど、こうやって叶うなんて、信じられなかった」
機内食を食べながら、昔話をたくさんした。
パリに到着。
初めてのヨーロッパ。空港から市内へ向かう電車で、街並みが美しくて二人とも目を輝かせた。石畳の道、古い建物、カフェのテラス。
ホテルにチェックインして、すぐに散策開始。
セーヌ川沿いを散歩し、エッフェル塔を眺め、ノートルダム大聖堂を見学。ルーブル美術館で絵画に感動し、モンマルトルの丘でスケッチする人たちを見た。
本屋巡りも欠かさず。
Shakespeare and Companyという有名な英語本屋で、古い本を物色。階段に座って本を読む人たちがいて、二人も真似して並んで読んだ。
「ここ、サンテグジュペリの本もあるよ。原書買おう」
小さな独立書店で、フランス語の珍しい版を見つけたり。
カフェでクレープを食べながら、キスを交わす。通りすがりの人が微笑んでくれる。
夜のパリはロマンチックで、ライトアップされたエッフェル塔の下を歩いた。
ホテルに戻って、寄り添う。
「パリ、綺麗だけど……悠人くんと一緒だから、もっと特別」
「俺も。あかりちゃんがいると、どこでも幸せ。大学で待ってた時間、全部報われたよ」
旅のハイライトは、サンテグジュペリの足跡巡り。
TGVでリヨンへ日帰り移動。彼の生家や博物館を訪れた。
『星の王子さま』の原稿やイラスト、飛行機の模型を見て、二人で感動。
博物館の庭で、ベンチに座って。
「キツネの言葉、ほんとに私たちみたいだね。費やした時間で、かけがえのないものになる」
悠人があかりの手を握って、
「これからも、たくさん時間重ねよう。毎日、もっと好きになるよ」
南フランスへも足を延ばし、プロヴァンスのラベンダー畑を見たり、小さな村を散策したり。アヴィニョンやニースで、海を見てワインを飲んで、星空を眺めたり。
地元の市場でチーズや果物を買って、ホテルでピクニックみたいに食べた。
旅の最後、パリに戻って。
エッフェル塔の近くのレストランで、ディナーを予約。
キャンドルが揺れるテーブルで、コース料理を食べながら。
「この旅、忘れられないね。一生の思い出」
「うん。高校の出会いから、ここまで来れた」
悠人が少し真剣な顔で、ポケットから小さな箱を取り出した。
「実は、もう一つ、約束がある」
中には、星のモチーフのダイヤのリング。
「結婚してほしい。ここパリで、プロポーズしたくて」
あかりの目から、涙が溢れた。
周りのテーブルが気づいて、静かに見守る。
「はい……喜んで。悠人くん、ずっと一緒にいたい」
悠人は立ち上がって、あかりの席に来て、リングを左手の薬指にそっと嵌めた。
ぴったりだった。
二人はテーブル越しにキス。
レストランの人たちが拍手してくれて、デザートをサービスしてくれた。
パリの夜空に、花火が上がっていた。エッフェル塔のライトアップが、特別に輝いているよう。
――高校の喫茶店で出会ってから、10年近く。
遠距離の辛さ、受験の苦しさ、大学での甘い毎日、同棲の試練、仕事の波――すべての試練を乗り越えて、ここに。
フランスの星の下で、永遠の約束。
旅から帰って、アパートで。
結婚準備を始めながら、笑い合う。
「結婚式、小さくていいよね。家族と親しい人だけで、『モカ』で二次会とか」
「うん。あの窓際の席で、みんなに昔話してもらおう」
写真を整理しながら、旅の余韻に浸る。
二人の物語は、終わらない。
新しい章が、始まる。
毎日、もっと深く愛を重ねて。
星のように、永遠に。
あかりの内定が決まってから、半年が経っていた。
春、社会人生活が始まった。あかりは出版社の翻訳部門に配属され、フランス語の書籍を扱う部署で忙しい日々を送っていた。初めての翻訳業務、校正会議、著者とのやり取り――大学で学んだ知識が活き、毎日が刺激的だったけど、残業も多く疲れる日もあった。
悠人は大学院を修了し、翻訳会社に就職。フリーランス寄りの仕事も受けつつ、フランス文学の専門を活かした業務に携わっていた。二人はアパートで、仕事の話をしながら夕飯を食べ、互いの疲れを癒すのが日課になった。
「今日、面白い本の翻訳入ってきたよ。サンテグジュペリの伝記みたいな」
「へえ、俺も今、似たプロジェクトやってる。一緒に資料共有しよう」
そんな会話が、自然と増えた。
忙しさの中で、二人だけの特別な時間を意識的に作っていた。
そして、夏休み。
就活のときに悠人が言った約束を、果たすときが来た。
「フランス旅行、行こう。2週間、休み取れたよ」
悠人が提案し、あかりは即答で「うん! 絶対! 待ってた!」
計画はすぐに立てた。パリを中心に、リヨンやプロヴァンスも回るコース。飛行機とホテルを予約し、ガイドブックを一緒に読みながらワクワクした。
出発の日。
空港で手を繋いでチェックイン。荷物は本を何冊か詰め込んで重たかったけど、笑いながら。
飛行機の中で、窓から見える雲を眺めながら。
「夢みたい。高校のとき、『モカ』で話してたよね。いつか一緒にフランスって」
「うん。あのとき、遠距離で辛かったけど、こうやって叶うなんて、信じられなかった」
機内食を食べながら、昔話をたくさんした。
パリに到着。
初めてのヨーロッパ。空港から市内へ向かう電車で、街並みが美しくて二人とも目を輝かせた。石畳の道、古い建物、カフェのテラス。
ホテルにチェックインして、すぐに散策開始。
セーヌ川沿いを散歩し、エッフェル塔を眺め、ノートルダム大聖堂を見学。ルーブル美術館で絵画に感動し、モンマルトルの丘でスケッチする人たちを見た。
本屋巡りも欠かさず。
Shakespeare and Companyという有名な英語本屋で、古い本を物色。階段に座って本を読む人たちがいて、二人も真似して並んで読んだ。
「ここ、サンテグジュペリの本もあるよ。原書買おう」
小さな独立書店で、フランス語の珍しい版を見つけたり。
カフェでクレープを食べながら、キスを交わす。通りすがりの人が微笑んでくれる。
夜のパリはロマンチックで、ライトアップされたエッフェル塔の下を歩いた。
ホテルに戻って、寄り添う。
「パリ、綺麗だけど……悠人くんと一緒だから、もっと特別」
「俺も。あかりちゃんがいると、どこでも幸せ。大学で待ってた時間、全部報われたよ」
旅のハイライトは、サンテグジュペリの足跡巡り。
TGVでリヨンへ日帰り移動。彼の生家や博物館を訪れた。
『星の王子さま』の原稿やイラスト、飛行機の模型を見て、二人で感動。
博物館の庭で、ベンチに座って。
「キツネの言葉、ほんとに私たちみたいだね。費やした時間で、かけがえのないものになる」
悠人があかりの手を握って、
「これからも、たくさん時間重ねよう。毎日、もっと好きになるよ」
南フランスへも足を延ばし、プロヴァンスのラベンダー畑を見たり、小さな村を散策したり。アヴィニョンやニースで、海を見てワインを飲んで、星空を眺めたり。
地元の市場でチーズや果物を買って、ホテルでピクニックみたいに食べた。
旅の最後、パリに戻って。
エッフェル塔の近くのレストランで、ディナーを予約。
キャンドルが揺れるテーブルで、コース料理を食べながら。
「この旅、忘れられないね。一生の思い出」
「うん。高校の出会いから、ここまで来れた」
悠人が少し真剣な顔で、ポケットから小さな箱を取り出した。
「実は、もう一つ、約束がある」
中には、星のモチーフのダイヤのリング。
「結婚してほしい。ここパリで、プロポーズしたくて」
あかりの目から、涙が溢れた。
周りのテーブルが気づいて、静かに見守る。
「はい……喜んで。悠人くん、ずっと一緒にいたい」
悠人は立ち上がって、あかりの席に来て、リングを左手の薬指にそっと嵌めた。
ぴったりだった。
二人はテーブル越しにキス。
レストランの人たちが拍手してくれて、デザートをサービスしてくれた。
パリの夜空に、花火が上がっていた。エッフェル塔のライトアップが、特別に輝いているよう。
――高校の喫茶店で出会ってから、10年近く。
遠距離の辛さ、受験の苦しさ、大学での甘い毎日、同棲の試練、仕事の波――すべての試練を乗り越えて、ここに。
フランスの星の下で、永遠の約束。
旅から帰って、アパートで。
結婚準備を始めながら、笑い合う。
「結婚式、小さくていいよね。家族と親しい人だけで、『モカ』で二次会とか」
「うん。あの窓際の席で、みんなに昔話してもらおう」
写真を整理しながら、旅の余韻に浸る。
二人の物語は、終わらない。
新しい章が、始まる。
毎日、もっと深く愛を重ねて。
星のように、永遠に。
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