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第38話 ぬくもりは、貸し借りではありませんわ
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第38話 ぬくもりは、貸し借りではありませんわ
朝。
極寒監獄に届いたのは、一通の丁寧すぎる書簡だった。
封蝋は王都の正式印。文面は、驚くほど柔らかい。
「……“協力要請”ですって」
キャロは、くすりと笑った。
「燃料輸送の一部を、王都側で肩代わりする代わりに、
こちらの運営ノウハウを共有してほしい、ですか」
「昨日まで遅延させていた相手とは思えません」
ヴァルトは、率直に言った。
「ええ。だからこそ、ですわ」
キャロは紅茶を一口。
「圧をかけて失敗したから、今度は“貸し”を作りに来たのです」
***
午前。
会議室に、監獄幹部が集まる。
「受け入れるべきでしょうか?」
「燃料が安定するのは、確かです」
意見は割れた。
キャロは、しばらく黙って聞いてから、静かに口を開く。
「皆さん。
“貸し借り”は、ぬくもりを冷やしますわ」
一同が、彼女を見る。
「恩を売る人は、必ず回収に来ます。
それが、寒さより厄介なのです」
***
昼。
キャロは返書を書いた。
文面は、丁寧で、礼儀正しく、しかし明確。
【協力に感謝する。
ただし、本監獄は独立採算・独立運営を原則とする。
技術情報の共有は、公開資料の範囲に限る】
「……ずいぶん、あっさりと」
ヴァルトが言う。
「ええ。
“断る理由”を与えないために」
***
午後。
王都から、すぐに返事が来た。
【条件の再検討を希望する】
「来ますわね」
キャロは、ため息をつかない。
「では、こちらの条件を出しましょう」
***
提示された条件は、三つ。
一、燃料・食糧の取引は、王都を介さず商会経由とする。
二、監獄運営への口出しは一切不可。
三、協力は“相互支援”ではなく、“通常取引”として扱う。
「……これでは、王都側に旨味がありません」
部下が言う。
「ええ」
キャロは微笑む。
「だからこそ、対等なのですわ」
***
夕刻。
王都側は、沈黙した。
返事は来ない。
だが、それが答えだった。
「……拒否、ですね」
ヴァルトが言う。
「いいえ」
キャロは首を振る。
「“考え中”です。
考える時間を与えた、というだけ」
***
夜。
暖炉の前で、キャロは毛布にくるまる。
「ヴァルト。
ぬくもりは、誰かから借りるものではありません」
「はい」
「自分たちで作って、守るものですわ」
炎が、穏やかに揺れる。
***
就寝前。
外では、また雪が降り始めていた。
だが、監獄の中は変わらない。
キャロは、静かに目を閉じる。
「……焦る必要はありませんの」
王都が折れるか、諦めるか。
どちらに転んでも――
極寒監獄は、今日も自分の足で立っている。
ぬくもりは、独立してこそ、
本当にあたたかいのだから。
朝。
極寒監獄に届いたのは、一通の丁寧すぎる書簡だった。
封蝋は王都の正式印。文面は、驚くほど柔らかい。
「……“協力要請”ですって」
キャロは、くすりと笑った。
「燃料輸送の一部を、王都側で肩代わりする代わりに、
こちらの運営ノウハウを共有してほしい、ですか」
「昨日まで遅延させていた相手とは思えません」
ヴァルトは、率直に言った。
「ええ。だからこそ、ですわ」
キャロは紅茶を一口。
「圧をかけて失敗したから、今度は“貸し”を作りに来たのです」
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「受け入れるべきでしょうか?」
「燃料が安定するのは、確かです」
意見は割れた。
キャロは、しばらく黙って聞いてから、静かに口を開く。
「皆さん。
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一同が、彼女を見る。
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それが、寒さより厄介なのです」
***
昼。
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文面は、丁寧で、礼儀正しく、しかし明確。
【協力に感謝する。
ただし、本監獄は独立採算・独立運営を原則とする。
技術情報の共有は、公開資料の範囲に限る】
「……ずいぶん、あっさりと」
ヴァルトが言う。
「ええ。
“断る理由”を与えないために」
***
午後。
王都から、すぐに返事が来た。
【条件の再検討を希望する】
「来ますわね」
キャロは、ため息をつかない。
「では、こちらの条件を出しましょう」
***
提示された条件は、三つ。
一、燃料・食糧の取引は、王都を介さず商会経由とする。
二、監獄運営への口出しは一切不可。
三、協力は“相互支援”ではなく、“通常取引”として扱う。
「……これでは、王都側に旨味がありません」
部下が言う。
「ええ」
キャロは微笑む。
「だからこそ、対等なのですわ」
***
夕刻。
王都側は、沈黙した。
返事は来ない。
だが、それが答えだった。
「……拒否、ですね」
ヴァルトが言う。
「いいえ」
キャロは首を振る。
「“考え中”です。
考える時間を与えた、というだけ」
***
夜。
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「ヴァルト。
ぬくもりは、誰かから借りるものではありません」
「はい」
「自分たちで作って、守るものですわ」
炎が、穏やかに揺れる。
***
就寝前。
外では、また雪が降り始めていた。
だが、監獄の中は変わらない。
キャロは、静かに目を閉じる。
「……焦る必要はありませんの」
王都が折れるか、諦めるか。
どちらに転んでも――
極寒監獄は、今日も自分の足で立っている。
ぬくもりは、独立してこそ、
本当にあたたかいのだから。
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