サブスク聖女と偽装婚約、始めました 〜婚約は、サブスクできないのでお断りです〜

ふわふわ

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22話 切り捨てられる側近

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22話 切り捨てられる側近

 事態が「事件」から「問題」へと格上げされるまで、時間はかからなかった。

 誘拐“未遂”――
 その二文字が、公式文書に載った瞬間から、話は一気に外交の領域へ踏み込んだ。

 王宮の会議室。
 緊急に集められた高官たちの顔は、揃って険しい。

「……ルヴァンディア王国の使節団側近が関与」

「公式命令の有無は不明」

「しかし、王都内での強制連行未遂は事実」

 報告は淡々としているが、内容は重い。

「これは――」

 誰かが言い淀み、別の者が引き継いだ。

「明確な外交問題です」

 場が静まる。

 幸いだったのは、死人が出ていないこと。
 そしてもう一つ――

「シャマル様が、奇跡を派手に使わなかった」

 その点だった。

 もし重傷者や死者が出ていれば、
 問題は“事件”では済まなかった。


---

 同じ頃。

 ルヴァンディア王国側の使節団は、まさに針の筵だった。

「……どういうことだ」

 団長の声は低く、怒りを抑えている。

「誰の判断で動いた?」

 答えられない。

 正確には、答えたくない。

「正式命令は、出ていないはずだ」

 それが、彼らを追い詰めた。

 ――つまり、暴走。

「国としては、関与を否定せざるを得ない」

 団長は、はっきりと言い切った。

「この件は、
 一部側近の独断専行として処理する」

 沈黙。

 その意味は、誰にでも分かる。

「……切り捨て、ですか」

 誰かが、かすれた声で呟いた。

「そうだ」

 迷いはなかった。

「国を守るためだ」

 使節団全体が責任を負えば、
 交渉の余地が消える。

 だが、“一部の側近”に押し付ければ――
 国としての体裁は、まだ保てる。

「帰国後、彼らは処分される」

「公にはならない」

「だが、表舞台には二度と立てない」

 それが、外交的な「切り捨て」だった。


---

 一方、王国側でも対応は迅速だった。

「正式抗議文を準備」

「被害者は聖女シャマル」

「未遂であっても、重く扱う」

 文言は慎重に、しかし逃げ道を塞ぐ形で。

 責任の所在を明確にし、
 再発防止を要求する。

「これで、相手は動かざるを得ない」

 高官の一人が、静かに言った。

「謝罪か、対立か」

「選択肢は二つだけです」


---

 その流れを、シャマルは遠巻きに聞いていただけだった。

「……ずいぶん大事になりましたね」

 感想は、それだけ。

 誰かが慌てて言う。

「“ちょっとした未遂”ではありません!」

「国家間の問題です!」

 シャマルは、少しだけ困った顔をした。

「そうですか?」

「私としては、
 未遂で終わったので、それで良かったのですが……」

 その温度差に、周囲が言葉を失う。

 だが、それがシャマルだった。

 彼女は、相手を罰したいわけでも、
 国を揺さぶりたいわけでもない。

 ただ――
 線を越えられたくなかっただけだ。


---

 その夜。

 ルヴァンディア王国へ向けて、正式な抗議と質問状が送られた。

 返答期限は明確。
 言い逃れは不可。

 そして、その文面の裏に込められた意味を、
 相手国は正確に理解した。

 ――ここで誤魔化せば、関係は終わる。

 結果。

 選ばれたのは、
 側近の切り捨てだった。

 それは、彼ら自身が招いた結末であり、
 同時に、事態を“最悪”にしないための、
 唯一の選択だった。

 こうして事件は、
 次の段階へと進む。

 正式謝罪と、
 合法な要請という名の舞台へ。
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