サブスク聖女と偽装婚約、始めました 〜婚約は、サブスクできないのでお断りです〜

ふわふわ

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25話 合法な聖女派遣要請

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25話 合法な聖女派遣要請

 数日後。

 王宮の会議室に、再び人が集められた。
 今回は、事前に議題が明示されている。

「ルヴァンディア王国より、
 聖女派遣に関する正式要請が提出されました」

 高官の一言で、空気が引き締まった。

 机の上に置かれた文書は、前回とは違う。
 封も書式も、完全に“要請用”だ。

 ――順番は、守られている。


---

「要請の形式は適正です」

 担当官が読み上げる。

「派遣期間、目的、責任の所在」
「受け入れ側の安全確保」
「費用負担と補償」
「事故発生時の責任分界」

 どれも、抜けはない。

「……今回は、随分と慎重ですね」

 誰かが呟いた。

「前回の件があるからでしょう」

 別の声が、淡々と返す。

 国としては、これ以上の失態は許されない。


---

 シャマルは、席の端で静かに文書を見ていた。

 発言を求められているわけではない。
 決定権も、ここにはない。

 ただ――
 当事者として、内容を確認する立場だ。

(……よく整えています)

 感想は、それだけ。

 無理な言い回しはない。
 曖昧な“善意”もない。
 奇跡を期待する文言も、控えめだ。

「聖女に対する指揮権は、
 派遣元に残す、と明記されています」

 その一文で、会議室が静かに頷いた。

 ――最低限の理解は、ある。


---

「シャマル」

 名を呼ばれ、彼女は顔を上げる。

「意見はありますか」

 短く、簡潔な問い。

 シャマルは、少し考えてから答えた。

「……要請としては、正規です」

 感情を挟まない。

「内容も、
 少なくとも“無茶”ではありません」

 それ以上は、言わない。

 評価でも、同意でもない。
 事実確認だ。


---

「ただし」

 続ける。

「派遣される側の安全確保については、
 実行計画を別途提出させてください」

「文書だけでは、判断できません」

 それは、当たり前の指摘だった。

 誰も反論しない。


---

「意見として、記録します」

 高官が頷く。

「最終判断は、
 評議会と王室で行います」

 シャマルは、静かに息を吐いた。

 ここで、彼女ができることは終わりだ。


---

 会議の終わり。

 廊下に出たシャマルは、ぽつりと呟く。

「……ようやく、
 “話ができる段階”ですね」

 誘拐未遂。
 謝罪。
 そして、合法な要請。

 遠回りだったが、
 ようやく正しい入口に辿り着いた。

 あとは――
 国が決める。

 彼女は、その決定に従う準備をするだけだ。

 次に進むのは、
 条件を詰める段階。

 派遣を前提とした――
 現実的で、面倒な話が、
 ここから始まる。
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