サブスク聖女と偽装婚約、始めました 〜婚約は、サブスクできないのでお断りです〜

ふわふわ

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24話 国としての謝罪

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24話 国としての謝罪

 ルヴァンディア王国からの正式文書が届いたのは、昼前だった。

 王宮経由。
 王室封印付き。
 完全に、国家間文書だ。

 シャマルは、その場に呼ばれただけだった。

「……つまり」

 文書を読み終えた後、彼女は一言だけ言った。

「これは、私宛ではありませんね」

「はい」

 答えたのは、王国側の高官だった。

「国としての謝罪です」
「対象は我が国、そして結果的にあなたを巻き込んだ事実そのもの」

 文面は、極めて慎重だった。

 一部側近の独断行動であること。
 国家として関与していないこと。
 関係者は処分対象となること。
 再発防止を約束すること。

 ――どこをどう読んでも、
 責任の所在を最小限に抑えた謝罪だ。

「謝罪としては、妥当ですね」

 シャマルは、淡々と評価した。

 怒りも、満足もない。
 ただの確認だ。

「受理するかどうかは、王国の判断です」

「もちろん」

 高官が頷く。

「あなたの意思では決めません」

 それが、正しい。


---

「そして、こちらがもう一件」

 別の文書が示された。

 先ほどの謝罪文とは、
 封の色も、書式も違う。

「謝罪とは切り離した形で、
 聖女派遣について正式に協議を申し入れたい、
 との要請です」

 シャマルは、そこで初めて小さく息を吐いた。

「……やはり、別件ですね」

「はい」

「この件についても、
 決定権はあなたにはありません」

「分かっています」

 即答だった。

「私が決める立場ではありません」

 シャマルは、自分の立ち位置を正確に理解している。

 彼女は
 ✔ 派遣される可能性のある当事者
 ✔ 意見を求められる存在

だが、

 ✖ 国家の最終判断者
 ✖ 外交決定権者

ではない。


---

「あなたには、意見を伺います」

 高官が続ける。

「だが、結論は評議会と王室が出す」

「当然です」

 シャマルは頷いた。

「私個人の感情で、
 国家間の問題を左右するべきではありません」

 その言葉に、周囲が静かになる。

 彼女は、決して権限を欲しがらない。
 だが、責任から逃げる気もない。


---

「謝罪文については、
 国として受理する方向で調整します」

「派遣要請については?」

「正式な手続きを踏ませます」

 それを聞いて、シャマルはようやく一言。

「……順番を守らせてください」

 それだけ。

 要求でも、条件提示でもない。
 姿勢の確認だった。


---

 会議が終わり、廊下に出た後。

 シャマルは、ふと立ち止まった。

「……私に決定権がなくて、本当に良かったです」

 小さな独り言。

 背負わなくていい重さ。
 越えなくていい線。

 それを理解しているからこそ、
 彼女は今も冷静でいられる。

 だが同時に――

 この話が、
 もう「個人の事件」ではなく、
 完全に国家案件になったことも、
 はっきりと理解していた。

 次に動くのは、彼女ではない。

 国だ。

 そして、
 その決定が下された時――
 シャマルは、
 従うか、意見を述べるかを選ぶだけになる。

 静かな段階は、
 ここで終わった。
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